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ラピュタとセカイ系とバニラ高収入。 「天気の子」映画感想

「天気の子」ってあるじゃないですか。
2019年に公開された、アニメーション映画。
観たので感想と、ぼくが考えたクライマックスの案を書きます。あらためて「天空の城ラピュタ」の強さを認識しました。

概要

ネタバレ注意
「天気の子」
「天空の城ラピュタ」
2019年製作/114分/G/日本
配給:東宝
あらすじ
離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。(映画.comより)

論旨としては下記サイトで指摘されている内容と同じです。

指摘されているように共通点がかなりあって

少年と少女が出会う
少女は天空の力に通じており、同時に束縛がある
雲の上に未知の世界がある
青いペンダント
武装した公的権力に追いかけられる
アウトロー的な立場の人間がメンターとなる
手をつないで空を飛ぶ

これらのうち、最も強い印象としては、「手をつないで空を飛ぶ」部分だと思います。

宮崎駿監督のある発明

ラピュタで、軍に追われたシータとパズーが、線路から落ちたとき飛行石が光り、ふたりで手をつなぎながらそのまま渓谷の底に落ちていくというシーンがあるんだけど、このシーンはスゴイ。

「重力(普段の世界の力学)すら及ばない、二人だけの世界ができた。」ということを、絵的に表現している。
超現実的で、ロマンチックで、ファンタジックで、かつ、画面がちゃんと動いているのに、キャラクタ同士がしっかり会話できる状況でもある。
たとえば電車の席でふたりきり、という状況も近いですがここまでロマンチックじゃない。
凄すぎる。
宮崎駿監督の屈指の発明です。
先例をぼくは知りません。あるなら知りたい。

宮崎監督自身も「千と千尋の神隠し」で再登場させているし、

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細田守監督の「未来のミライ」でも引用されている。

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天気の子にも登場します。

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「手をつないで空を飛ぶ」シーンはある種の劇薬のようです。
大発明。ノーベル作劇賞受賞です。

セカイ系へのアンサー

「少女が人智を超えた力とつながっているが、それを放棄する」という部分は「天気の子」も「ラピュタ」も同じですが、結末は違う。
ラピュタでは「人智を超えた力」は永久に葬られますが、「天気の子」では普段の生活にかなり大きな影響を及ぼし続ける。
「天気の子」が、新海誠監督のセカイ系へのアンサーとされるのはこの部分だと思います。

(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界の危機」「この世の終わり」などといった抽象的な大問題に直結する作品群のこと 

ではなく、「世界は勝手に回っていく」という結末です。

そもそも新海誠監督の作品テーマって、セカイ系がどうのこうのより、
「きみとぼくの間には超えることができない距離があるけど、それでもぼくはきみに会いにいく」
ってゆうことじゃないかな。
「ほしのこえ」も「雲のむこう、約束の場所」も「秒速5センチメートル」も「言の葉の庭」も「君の名は」もそうゆう話としてぼくは観ました。

いまいちスッキリしない物語構造

で、ぼくの感想ですが、「いまいちスッキリしない」という感じです。
現代的と言えば現代的なんだけど。
「天気の子」はピンチを打開するのが「拾った銃」なんですよ。
まぁ、ラピュタでも「もらった銃」でピンチを打開するシーンが有るのはあるんだけど。
このマクガフィン的な「拾った銃」の扱いが唐突で納得できなかった。
チンピラに絡まれる部分は、陽菜の天気の力が無意識に発動して打開するとかが良かったんじゃないですかね?
例えば落雷とか水の塊が落ちるとか。ジョジョのウェザーリポート的な。

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ただ、銃を持ってたから警察があれだけ真剣に追っかけてくれたわけで、難しいところですよね。

要は、明確な敵が不在なんですよ。
ムスカ大佐に該当する人物がいないので、物語をドライブさせるためには、目に見える形で敵を作らなくちゃいけない。
なので警察や、圭介とか、「大人」が敵になる。
敵として「天気の力を悪い目的で使う人物」を出すかと言うとそれも違う気がする。難しいですね。
貧困や大人などの抽象的な存在が敵になるというのも現代的ということなのか。

バニラカーを飛ばせ!

クライマックスで廃ビルに向かう時、
冒頭に出てきた「バーニラバニラ高収入」の宣伝カーをかっ飛ばして助けに行く
というのはどうですかね?
貧困や警察が敵であるこの現代において、好きな人に会いに行くために、
ちょっと怪しげな高収入求人の車を盗んで帆高少年は走るのです。
これはカッコいい!
「ラピュタ」でパズーがフラップターでシータを助けに行くシーンと、
肩を並べるくらいカッコいい救出シーンですよ!
いろんな意味でボーイミーツガール。

しーゆー


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