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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2022年5月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第230話

月の砂漠のかぐや姫 第230話

 そう考えると、羽磋が言うことが王柔にも良くわかりました。でも、精霊とはそもそも・・・・・・。
「羽磋殿の言われることはわかりますが、精霊が意識を持って人に害をなすというのは・・・・・・。あ、いや、悪霊ですかっ。この青い光は全て悪霊だということですかっ」
 王柔の声が、話の途中で急に高くなりました。いつの間にか、自分がいつも怖がっている悪霊に囲まれてしまったのかと思ったのです。
「いえ、青い光が悪

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月の砂漠のかぐや姫 第229話

月の砂漠のかぐや姫 第229話

 グラグラッと羽磋の視界が揺れたかと思うと、輝夜姫の姿はフッと消えてしまいました。羽磋の目に入るのは、青い光の塊とそれにぼんやりと照らし出されている洞窟の岩壁だけになりました。羽磋の心の中に、今まで感じだことのない「怯え」や「臆病」の風が、スウッと吹きこんできました。王柔が羽磋に対して「駱駝に川の水を飲ませておきますね」と話し掛けたのは、この時だったのでした。
「始めは単に駱駝に水を飲ませるだけか

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月の砂漠のかぐや姫 第228話

月の砂漠のかぐや姫 第228話

「この青い光ですか。ここで過ごすうちに当たり前に感じるようになってましたけど、考えてみればここは地面の下の洞窟ですから、この光がなければ真っ暗闇ですよね。本当に不思議な光です」
 羽磋に言われて王柔は、改めて周りを見回しました。彼の言うとおり、自分たちの周りの様子を見て取ることができるのは、この光があるお陰でした。既に大空間の中で話し合ったように、この光は夜光虫やヒカリダケのような虫や植物によるも

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