フォローしませんか?
シェア
くにん
2021年11月28日 16:40
この地下に広がる大空間の上部は砂岩ですっかりと覆われていますから、月や星の動きで時間の経過を知ることはできません。もちろん、太陽の光が差し込んできて朝になったことがわかるということもありません。 羽磋は王柔と見張りを交代する適当な時間がわからなかったので、できるだけ長い時間見張りを続けることにしましたが、とうとう疲れと眠気が限界に達したので、王柔の身体を揺り動かすことにしました。「王柔殿、起
2021年11月21日 22:02
それは、交易路から落下した時のことでした。あの時に王柔は理亜を守ろうとして、空中で彼女の身体を抱きかかえていました。でも、理亜の身体に王柔が触れることはできないのではなかったでしょうか。川に向かって落ちていくという非常事態の中で王柔も羽磋も必死でしたから、抱きかかえているように思い込んでいただけで、実は王柔と理亜の身体は触れあってはおらず、影が重なっているような状態だったのでしょうか。 いえ、
2021年11月14日 16:26
とは言え、この地下に広がる大空間は普通の洞窟とは全く違っていました。普通の洞窟であれば入り口から歩いて奥まで入っていくことができ、外に出たくなれば来た道を戻って行けば良いのですが、彼らがここに辿り着いたのは川を流された結果でした。しかも、その流される途中では滝のようなところを落下もしているのです。とても来た道を戻って外に出ることなどできません。では、反対に先に進めばどうかといっても、この大空間か
2021年11月11日 22:50
「オアシスの水を汲むときには、そこに居る精霊に感謝の唄を捧げてから汲むようにしているけど、汲んだ水には精霊の力が働いているんだろうか。まったく考えてみたこともなかったな」 羽磋は遊牧の際に女性や子供たちが水汲みをする姿を、思い浮かべていました。そして、そこで歌われる水汲みの唄も思い出しました。羽磋も子供の頃は水汲みに参加していましたから、この唄はよく歌ったことがありました。でも、羽磋の頭の中に流
2021年11月7日 23:14
「ああ、羽磋殿、疲れましたねぇ。理亜も疲れただろう、座って休もう」 元の場所に戻って来て安心したのか、王柔は大きな声を出すと、どさっと崩れるように座り込みました。理亜は王柔のように疲れた様子は表に出していませんでしたが、彼の横に座りました。「確かにすごく疲れました。いったいどれだけ歩いたんでしょう」 羽磋も、自分の身体がずいぶんと重く感じられるようになっていました。彼も王柔と理亜の横に腰を下