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2020年3月の記事一覧
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ⑨(第58話から第59話)
「なるほど。留学の方でしたか。私は小野殿の交易隊の一員で、護衛を務める隊を率いている冒頓(ボクトツ)と呼ばれるものです。しかし、その証ですが・・・・・・、それを確かめさせていただいても、よろしいでしょうか」
「いえ、証は小野殿に検分していただきたい」
留学の徒は、幹部候補生として皆から敬意を払われる存在です。しかし、それゆえに、露見すれば命を持って償わなければならない重罪であることを知りつつも、
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ⑧(第55話から第57話)
「これが、匈奴か・・・・・・」
なんという戦いだったのでしょうか。苑と冒頓との息の合った連携。少年である苑の見せた見事な弓の腕前。そして、相手に一切の抵抗を許さない、冬山の雪崩のような冒頓たちの突入。
羽磋は、初めて見た彼らの苛烈な戦いに密かに身震いをすると共に、数日前に自分が小野の交易隊と合流した時のことを、思い出しました。
大伴と別れた後で羽磋は、後ろ髪を引く輝夜姫への思いを振り切るか
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ⑦(第52話から第54話)
隘路の曲がり角をしばらく行くと、道幅が少し広くなっているところにでました。そこで、苑と羽磋は馬の速度を落とし、振り向いて後ろの様子を確認しました。
「おめえら、よくも俺たちをコケにしてくれたなっ! んん? おぉ、よく見ると、二人ともまだ餓鬼じゃねぇか。こりゃぁ、俺たちが礼儀ってやつを、よく教えてやらないとなぁっ!」
二人の後ろからは、岩壁から飛び出した野盗や、丘陵から川を渡ってきた馬に乗った野
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ⑥(第48話から第51話)
(第二幕)
いくつもの高山が、まるで天を支えるかのように連なってそびえる祁連山脈。その北側にはゴビの荒れ地とバダインジャラン砂漠が大きく広がっているのですが、祁連山脈近くには、雪解け水の恩恵を受けた緑地やオアシスが、ゴビの荒れ地の中に点在していました。
天上にかかる太陽に焼かれながらも、点在する緑地を縫うようにして進む、一団の交易隊がありました。太陽の目から見ると、赤茶けたゴビの荒れ地の上に落
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ⑤(第46話から第47話)
「父上、肸頓族へ行くのはわかりました。竹が消えてしまうなんて、絶対に嫌です。阿部殿にお会いして、俺も月の巫女を月に還すためのお手伝いがしたいと思います」
もちろん、竹姫のことを大切に思う羽磋が、月の巫女である竹姫が消えてしまうことを、黙って受け入れるはずがありません。父の話を聞く中で羽磋は、どれだけ困難があるとしても、竹姫を助ける手段を必ず探し出すことを、腹の底で決意していました。
でも、自分の
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ④(第42話から第45話)
思い出話に続いて、大伴は自分が砂漠で見た異様な光景を説明しました。砂嵐で埋め尽くされてしまわぬように、何者かが壁を立てて羽と竹姫を守っていたような、自然にはありえない形をした半丘状の砂丘。それは明らかに、竹姫が月の巫女の力を使ったことを、大伴に示していたのでした。
では、なぜそのことを、大伴は竹姫に話さなかったのでしょうか。
今の月の民の単于、つまり王は、あの御門でした。彼も大伴や阿部と同じ
「月の砂漠のかぐや姫」これまでのあらすじ③(第33話から第41話)
竹姫の下を走り去った羽は、どこからか帰ってきたばかりの大伴と出会いました。大伴は「ちょうどよかった。お前に話があるのだ」と、羽を見回りへ連れ出します。羽にとっても、大伴に問いただしたいことがあったのでした。竹姫は「二人が高熱を出して倒れていた」という説明は大伴から聞いたと言うのですが、彼の説明の中にはハブブなどは出てこなかったとも言うのです。でも、砂漠から二人を助け出してくれたのが大伴なのであれ
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