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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2019年8月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第57話

月の砂漠のかぐや姫 第57話

 狼煙が上がっている場所に近づくにつれて、羽磋にも交易隊の姿がわかるようになってきました。
 始めはゴビの赤土の中に紛れて消えそうだった小さな塊は、近づいていくにつれて幾つかの点の集まりになり、やがて、駱駝や天幕など見知った物の姿として見て取ることが出来るようになってきました。

「ああ、よかった。なんとか合流することができそうだ」

 羽磋は、心の底からの安堵の息を吐き出しました。
 広大なゴビ

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月の砂漠のかぐや姫 第56話

月の砂漠のかぐや姫 第56話

「こっちの方へ向かってくる奴がいるっす、冒頓(ボクトツ)殿」
「ああん? ああ、あれか。隠れる様子もなく一騎で真っすぐに向かってくるということは、おそらく、小野(オノ)殿から聞いている奴だな。ほら、お前がさっき言ってただろう、狼煙を炊くなんて、わざわざ盗賊にこちらの居場所を教えるようなもんだって。あれは、そいつのために上げてるのさ」
「ほんとっすか。それなら、よっぽどのお偉いさんをお迎えするんです

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月の砂漠のかぐや姫 第55話

月の砂漠のかぐや姫 第55話

 三日ほど前、ゴビの赤土の上で、羽磋はひたすらに馬を走らせていました。替え馬もない状態でそのように馬を走らせていては、馬がつぶれてしまう恐れがあるのは、羽磋にもわかっていました。でも、気が急いて急いて仕方がなかったのでした。

「輝夜が消えてしまうなんて嫌だ。絶対に、何とかする手段を見つけるんだ」

 そう胸の中で繰り返しながら、道なきゴビの大地を進む羽磋は、自分の身体にのしかかってくる不安から逃

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月の砂漠のかぐや姫 第54話

月の砂漠のかぐや姫 第54話

 たったの五人。いくら不意を突いたとはいえ、野盗の群は数十人はいたのです。冒頓たちは、たったの五人でそれを殲滅して見せたのです。羽磋には、彼らが傷一つ負わず、そして、それを当たり前のようにして振舞っていることが、全く理解できませんでした。

「あ、あれは?」

 羽磋は、冒頓の部下たちの働きを観察している中で、野盗の生き残りが浅い川を渡って山の斜面へ逃げていくのを、視界の端に捉えました。

「ぼ、

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月の砂漠のかぐや姫 第53話

月の砂漠のかぐや姫 第53話

 苑が放ったそれは、自分たちに弓を構えた野盗という一つの危険を取り除いたものではありましたが、さらに大きな危険を呼び寄せるものでもありました。つまり、今まで奇妙な膠着状態に陥っていた場が、とうとう動き出してしまったのでした。

「やりやがったなっ」
「こいつら、絶対生かして返さねぇ」
「行け、行け、行けぇ」
「こ、ここ、こんなにゃろうぅっ」

 野盗たちは、一斉に二人に向って走り出してきました。野

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月の砂漠のかぐや姫 第52話

月の砂漠のかぐや姫 第52話

 しかし、苑と空風のために、山襞の陰に潜んでいた野盗は見つけられてしまいました。
 野盗たちが、今回の不意打ちは失敗かと落胆していたところに、思いもかけず少年たちが狭間に駆け込んできたのです。せめてもの腹いせに彼らを打ちのめしてやろうと、馬を引いていた野盗はこの二人を追いかけました。そして、斜面で待ち構えていた男達も、二人を挟み撃ちにしようと斜面を駆け下りました。
 ただ、それを予想していたのでし

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