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人生のスイッチ【ドシー恵比寿@恵比寿駅】

 最近、私生活でモヤモヤすることが増えてきた。理由はなんとなく察しがついているが、なんというか生活にメリハリがない。
 以前であれば、仕事に精を出している時にオンのスイッチが入り、サウナでオフのスイッチに切り替える、そのサイクルが心に充実感を与えていたのかもしれない。
 しかし、会社員を辞めて独立した都合上、生活スタイルが大きく変わったせいか、それまでに経験したことがなかったタイプの不安に苛まれる時がある。

「自分はどう生きたいのだろう……」

 不安定ながらも、ありがたいことに一定水準の収入を得るくらいにはお仕事をいただくことができている。ただ、それ以上の稼ぎが欲しいわけでもないし、物欲もない。人と会話をするのも得意ではないし気力を消耗するので、ごくわずかの限られた相手としかコミュニケーションを取りに行こうともしていない。今の生活に満足してしまっているのか、これ以上のリスクを抱えてまで欲を満たしたいとは思えないのだ。
 僕はなんのために生きているのだろう。モヤモヤが晴れない。

ーー刺激が足りない……のか?

 だが、このようにネガティブな感情が高まってきている時ほど、強制的に意識を外に向けることで気分が晴れる可能性があることを僕は知っている。まさに今日、11月16日(月)はそのような強硬手段が有効な気がして、僕は腹を括った。

「あそこに行ってみるしかない。数日前から候補に上がっていた、ドシー恵比寿に……」

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 ドシー恵比寿とは、全国にカプセルホテル「9h(ナインアワーズ)」を展開する株式会社ナインアワーズが手掛けている”サウナ特化型”のカプセルホテルである。恵比寿のほかに五反田にも店舗があり、実はサウナーのファンも多い「新宿区役所前カプセルホテル」も同社が運営を担っている。

 ただ、実を言うと僕にとってドシー恵比寿は賛否が分かれるイメージが強かった。まず設備に関してだが、サウナとシャワーはあるものの水風呂が無いらしい。大切なことなのでもう一度記載するが、水風呂が無いのだ。なんなら公式サイトを見る限り、温かいお風呂も無さそうである。外気浴もできるかどうか不明だ。

ーーそんなことが、果たして許されるのだろうか?

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 しかし、表面的な情報ばかりに踊らされて、「食わず嫌い」ならぬ”蒸されず嫌い”になってしまうのが一番よくない。自分の目で見て肌で感じてみるしかなかった。
 とはいえ、ドシー恵比寿がサウナの常識(そんなものがあるのかどうかは分からないが)を破った個性の強い施設であることは間違いない。サウナへの先入観があればあるほど、公式サイトを開くたびに脳内処理がパンクしそうになる。これまでの常識が通用しないサウナを相手にした時、僕の不安と緊張は高まっていた。
 ただ、それと同じくらい期待も抱いていた。きっと今の僕にはこの刺激が必要なはずだ。

 実はドシー恵比寿に行こうと考えたのは今日が初めてではなく、ちょうど1週間前から検討していた。ただ、調べれば調べるほど迷いが生じていたのである。たとえば料金体系について。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 基本的にサウナのルーティン(サウナ→水風呂→外気浴)を2〜3セット繰り返すとなると全体を通して70〜80分程度を要するところだが、公式サイトを見たところミニマムの設定が「60分=1,000円」という絶妙な時間制限。となると、混雑状況によっては時間を気にしながら2セット目を過ごすことになるかもしれない。これでは集中して蒸されることができない。
 さらに、60分以降については1時間ごとに500円の延長料金が発生するそうなので、僕に最低限必要な時間を確保するとなると「120分=1,500円」がかかることになる。だが、そもそもドシー恵比寿はこれまでの常識が通用しないためシステムを理解するまでに多少の時間を要するだろうし、2時間で満足できる自信もなかった。

 そんなことを考えながら、ふと某大手宿泊予約サイトを開いてみると、目を疑う情報が飛び込んできた。

GoTo:35%オフ&地域共通クーポン1000円で「実質1,269円!!」

GoToトラベルクーポン獲得で、ご宿泊料金の35%(1泊あたり1,221円)が割引となります。さらにご到着時1,000円分の地域共通クーポンお渡しで、実質1泊あたり1,269円でご利用いただけます!(今後内容が変更となる可能性もあります)

「……絶対に宿泊予約したほうが良いじゃないか!!」

 時間を気にすることなくサウナを満喫できて、しかも最も安く利用できるプランが用意されているではないか。しかし、恵比寿が生活圏すぎる僕はそもそもの前提が宿泊利用ではなく日帰り利用である。そこでこんなツイートをしてみた。

 すると、なんと公式さんからこのようなリプライをいただけたのである。

 こうなったら、あとは実行あるのみだった。そしてドシー恵比寿について興味を持ち始めてから1週間が経過した今日、ついに覚悟ができた僕は、ありがたく大手宿泊予約サイトから当日予約をさせていただいたのであった。

 料金を確認すると、本当に税込2,269円だった上に地域共通クーポン1,000円分が受け取れるそうで、さらに僕の場合は宿泊予約サイトのポイントも使用したため実質タダで宿泊(※実際には日帰り)できるようなものだった。破格にもほどがある。

 予約を済ませてから自宅を出ると、外はとても暖かい気候だった。つい数日前にコートを羽織っていたのが嘘のようだ。空も晴れ渡り、絶好のサウナ日和であった。

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 チェックイン開始時刻の14時頃に恵比寿駅に到着し、そのまま目的地へと直行すると、歩いて1〜2分ほどでそのビルは現れた。

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 恵比寿風味が強いオシャレなロゴ。なんなら「ドシー」というネーミングも良い。「℃」ですよ。サウナを意識していなければここまでコンセプトを貫けない。

※動画でも紹介しています
ーーサウナに水風呂は必要か?「ドシー恵比寿」で出会った新感覚の冷却体験
https://youtu.be/dFtPmLCJcPI

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 階段を上って2階のエントランスでチェックインを済ませると、アメニティバッグに入った館内着とタオルセットと歯ブラシ、そして使い捨てのスリッパとロッカーキーを渡された。

 2階には受付のほか、奥には広々とした作業スペースもあって、「ここで仕事してくれ」と言わんばかりにコンセントもWi-Fiも完備だ。サウナ後に利用させてもらったが、混雑も無くとても集中できた。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 ドシー恵比寿は、2階は共用フロアだが基本的には4〜6階の男性フロアと7〜9階の女性フロアとで分かれている。僕はエレベーターに乗って4階へと移動し、ロッカーに荷物を預けつつ館内着に着替えて、さっそく3階のサウナフロアへと向かった。
(ちなみに僕が宿泊するはずのカプセルもロッカーと同じ4階にあったが、ほとんど使用することは無かった。)

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(LINEトラベルjp:https://www.travel.co.jp/guide/photo/30353/8/3/

 3階に到着してドアを開けると、洗面台と鍵付きのロッカー、そしてジムによくあるタイプのシャワーブースが2つ併設された脱衣所があった。館内着を脱いで奥へと進む。ここからが浴場である。

 浴場の中に入ると、それぞれ壁で仕切られたシャワーブースがさらに6つあった。どうやらここで身を清めるようだ。ちなみに浴場全体はコンクリート打ちっぱなしの床で、その上を素足で移動する。

 いったんシャワーブースを通り過ぎてさらに奥に進むと、左手に噂の「ウォームピラー」が並んでいた。なお、ウォームピラーについては後述する。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 そして右手にはサウナ室があり、さらに突き当たりには内気浴用のベンチと、その脇に非常口を生かした外気浴スペースも用意されている。ちなみにサウナ室のドア付近にはサウナマットが積まれていて、そこから一人4枚まで使用して良いそうだ。全体的に洗練されたデザインで、サウナに来たというよりはアーバナイズされたフィットネスジムに汗を流しにきたような感覚になっていた。

ーーお風呂は無いけれど、意外となんとかなるかもしれない。

 ドシー恵比寿の全容について把握した僕は、さっそく先ほどのシャワーブースに戻って身を清めた。
 ドシー恵比寿にはお風呂が無いため、体を温めたい場合はここでお湯をある程度浴びるしかない。ただ、これについてはネガティブな側面しか無いと思っていたけれど、僕のように周囲のお客さんのマナーを気にしがちなソロサウナーからすると、快適に過ごすことができて意外と心地が良かった。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 さっそくサウナ室へと向かう。中に入ると、想像以上に薄暗かった。公式サイトの写真は明るく見えるが、実際にはほぼ真っ暗である。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 正面にはサウナストーブが鎮座し、セルフロウリュができるテンション爆上げ仕様。さっそく上段にサウナマットを敷いて腰をかける。
 ちなみに、サウナ室の床は火傷するほど熱かった。あとで知ったのだが、サウナマットは足元に敷く分も合わせて持ち込むことが店舗側から推奨されていた。壁に書かれた注意事項をしっかりと読まなかった僕が悪い。

 さて、12人ほど入ることができるサウナ室の中に先客は1人のみ。さすがに平日のこの時間帯は空いているようだ。温度を確認すると95℃。「ロウリュよろしいでしょうか」と声をかけて、ゆっくりと2杯をサウナストーン全体にかけた。記憶にある限りでは、生まれて初めてロウリュしたかもしれない。

 ラドルを戻すと、そこに15分用の砂時計が設置されていることがわかった。

ーーこれでロウリュの間隔を保つのか。

 ちなみにサウナ室の中に時計はなく、自分が何分蒸されているのかを確認するためには、この小さな砂時計を覗かなければならない。もしも宿泊プランではなく日帰り利用だったら、時間が気になって仕方がなかったかもしれない。

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(ドシー恵比寿公式サイト: https://do-c.jp/ebisu/ )

 アロマ水はミント系の爽やかな香りだった。湿度が急激に高まり、いっきに体感温度も上がる。恵比寿という繁華街にいることを忘れてしまうほど、暗く静かな空間でじっくりと蒸される非日常的な時間。今のように混雑さえしなければ、サウナ環境自体は非常に満足である。

 全身から汗が吹き出してきて、呼吸が荒くなってきた時に砂時計を確認すると、半分ほどの砂が落ちていた。

「そろそろ限界だ……」

 僕はサウナ室を出て、いよいよ例のウォームピラー※と対峙した。

※ウォームピラー
クールダウンには水風呂ではなく、体にまとわりつくように水流を制御した水の柱が頭上から流れるTOTOのウォームピラーを、冷水専用にコントロールしてご用意しております。水温は15℃、20℃、25℃、30℃、さらに季節によって温度変化を楽しめる常温(水道水自然温)からお好みに合わせてお選びいただき、ベンチに腰掛けてリラックスしながらクールダウンしていただけます。

"ロウリュ"と"ウォームピラー(冷水)"によるクールダウンという独自のフォーマットによる、これまでのサウナ体験とは一線を画したリフレッシュ感を体験いただけます。

(※引用:ドシー公式サイトhttps://do-c.jp/ )

 まったく新しい水風呂体験。いや、水シャワーか。しかし近寄ってみると、シャワーとも少し違うフォルムだ。

「どういう仕組みなのだろうか……」

 周りをよく観察すると、各ウォームピラーの壁には押しボタンスイッチが埋め込まれていた。
 人間は、ボタンを見つけたらついつい押したくなってしまう生き物だ。15℃のウォームピラーの前に立ち、僕も軽く押し込んでみる。

「おぉ! そういうパターンか!」

 シャワーが噴射されると思っていたウォームピラー。実際は、分かりやすく表現するなら「真下に垂れ流される水道の蛇口」である。一本の冷たい水が天井部分から静かに落ちてくるのだ。
 慌てて台の上に腰をかけてみると、冷水が脳天に直撃である。これは初めての感覚。物足りなさがあるかと思いきや、普段の水風呂と違って頭から冷水をかぶり続けることができるし、隣のウォームピラーとは壁で仕切られているので他のお客さんのマナーを特に気にする必要もない。自分自身の世界に集中することができる。

「めちゃめちゃ気持ち良い……」

 呼吸が徐々に落ち着いてきたタイミングで、水の流れが止まった。時計を確認したところ、どうやら水が流れるのは30秒間のようだ。周囲にほかのお客さんがいなかったので、僕は再びスイッチを軽く押し込んだ。
 内気浴をしながら頭頂部に冷水を浴び続ける新体験……。これはこれで、水風呂とは違った良さがある。たしか、ここには「百会」というツボもあって、そのせいかもしれないがマッサージを受けているような心地よさも感じる。全然アリだ。
 しかも、水が止まるまでの時間が決まっているから混雑解消にも繋がるのかもしれない。他のお客さんと冷水を共有するわけでもないから衛生的でもある。このシステムを考えた人、天才か。

 冷水を60秒間浴び続けてすっかりと体を落ち着かせることができた僕は、ゆっくりと立ち上がって外気浴スペースへと移動した。
 ビルに囲まれた薄暗い空間で行う、ディープでアングラな外気浴。外の景色は全く見ることができず、だからこそ体の内側、自分自身に集中することができる。建物自体は大道路沿いかつ駅近なのに騒音もほとんど聞こえてこない。もしかしたら、コスモプラザ赤羽の外気浴スペースよりも閉塞的だったかもしれない。
 ととのい椅子は3脚。ちょうど頭の位置に手すりがあるので、全身の力を抜いてもたれかかった。

 子供の頃に作った秘密基地にいる感覚。身体的な疲労感を妙な高揚感が覆っていく。そっと目を閉じると、僕の頭は思考することを諦め、意識はどこか遠くのほうへと浮遊していった。
 なんだろうか、この中毒性は……。サウナに特化しているからこそ実現できる、個性的でシンプルな設計。まさに「引き算のサウナ」だ。期待を遥かに超える満足度だった。

 それからどのくらいの時間が経ったのかは覚えていない。気付いた時には汗もすっかりと引いていて、心拍も平常時に戻っていた。ゆっくりと深く呼吸をすると、口元には自然と微笑みが浮かんでいた。

 それからさらに2セットをいただいて完璧にととのってから、2階の休憩スペースで2〜3時間ほどPC作業を行い、18時半頃に再び3階へと向かった。
 夕方になると若いお客さんも増えてきて、2〜3人組のグループも現れるようになった。サウナ室も半分ほどが埋まるようになっていたが、特に困るほどの混雑を感じることはなかった。
 ここでさらに追加で3セットをいただいて、ドシー恵比寿を出たのは20時半頃。この時間帯に「チェックアウトをお願いします」と言うのは人生で初めての体験だった。

 11月の生温く肌寒い風を感じながら家路に就く。心の中に抱えていたモヤモヤはどこかに消えてしまったようだ。また人生に迷いが生じたら、あのスイッチを押しに来よう。

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(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/channel/UCOXI5aYTX7BiSlTt3Z9Y0aQ


①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます