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風になったモーリスよ、永遠に。つづき。

名プロデューサー、チャールズ・ステップニーと出会ったモーリス・ホワイト率いるEW&Fは、5枚目のアルバム「Open Our Eyes」でヒット作を生む。シングルカット「Mighty Mighty」がR&Bチャートで4位を記録したのだ。

このアルバムは彼らの大きな転換点となった。

続く6枚目「That`s The Way Of The World」から初の全米No1を「Shining Star」で獲得し、同アルバム内の「Sing a Song」は全米5位、R&Bチャートで1位。アルバムタイトル曲の「That`s The Way Of The World」は全米で12位、R&Bで5位を記録した。

結果、このアルバムはプラチナ・ディスクに輝く。僕の棚にもちょっと埃をかぶりながらも今でも燦燦と輝いている。最近はあまり、聴かなくなってしまったのだけど。

この頃になると彼らはスターバンドとして、マジソン・スクエア・ガーデンを満員にし、人気を博し、ヨーロッパ公演なども行っていた。

そのヨーロッパ公演から戻るとすぐに新しいアルバムを作るよう、コロムビアレコードから求められる。新作を作る時間がなかった彼らは全てのステージを録音することにし、その中から厳選をし、スタジオ録音の楽曲も追加した初のライブアルバム「Gratitude」を発表。

しかし、これが敏腕プロデューサー、チャールズ・ステップニーとの最後の作品になってしまう。「Gratitude」の次のアルバム「Spirits」制作中に心臓発作に見舞われ、亡き人になってしまったのだ。

モーリスは11歳上の師であるチャールズの死に「ひどく打ちのめされたよ。彼の死の陰で多くの心の傷を経験した。僕は彼から本当に多くのことを学んだからね。大きい損失だ。でも、僕はアルバムを作ることにエネルギーを向けなければならなかった。もちろん、Gratitudeは彼のためにささげたものさ」と言っている。

ちなみに、この「Gratitude」含め、それ以降、彼らの多くのアルバムデザインを手がけたのは日本人イラストレーターの長岡秀星さんなのは有名な話。残念ながら2015年に78歳で亡くなられてしまったが、今でも長岡さんが手がけたEW&Fのアルバムを手にする度に同じ日本人として誇らしげな気持ちになる。

さて、チャールズ亡き後も彼らは歩みを止めない。9枚目のアルバム「All N` All」から「Fantasy」をヒットさせる。といってもR&Bチャートで12位。彼らにしてはイマイチだった。が、日本では「宇宙のファンタジー」と題され、大ヒット。洋楽チャートで1位を獲得する。

その翌年には、後にベスト盤に収められることになるシングルカットの「September」が日本でも大ヒット。翌年に初来日を果たし、武道館や大阪、京都、名古屋、福岡で公演が繰り広げられた。

この「September」。一度は耳にしたことがあると思う。数々のCMや映画のサントラで使われたり、Jリーグの選手の応援歌の下地に使われていたり、野球選手やプロボクサーの入場曲に使われたりしている。

この後も何度となく来日公演を果たすのだが、僕はなかなかタイミングが合わず、遂にモーリスが生きている間の公演に行くことが出来なかったのは悔やまれる。

以降も複数のアルバムを出す彼らだが、個人的にはこの「September」あたりがピークなのではと思う。

アルバムは全て買っているのだが、13枚目の「Raise」から再び「Let`s Groove」で脚光を浴びた後は、特色の1つであるホーンセクションを退け、いわゆる打ち込み中心のアルバムを制作するようになり、往年のファンをがっかりさせてしまう。僕もそんな1人。

それから、すっかりEW&Fから距離を置いていたが、2016年にモーリスの訃報を聞き、改めて彼と彼らの偉業に触れてみたくなり、これを書きながら古い順にアルバムを聴いている。今聴いてもノリノリの曲がたくさんあり、心がワクワクと踊るから不思議だ。

多分、「September」は100万回くらい聴いていると思う。いや、まじめに。でも、聴く度に新鮮さを感じ、勝手に身体がリズムを刻み出すから魔力みたいなのを感じる時があるくらい。

EW&Fは今もフィリップ・ベイリーを中心に活動を続けていて、一昨年にはリトグリことLittle Glee Monsterとコラボし曲を発表したり、米国内でライブを活発に行ったりしているようだ(今はコロナで延期の模様)。

次に来日する時は是非足を運んでみたいと思う。モーリスの生み出した生真面目でいて、迫力のある、リズミカルなサウンドを生で聴くために

モーリスよ、安らかに。そして、あなたの作った素晴らしい楽曲の数々は永遠に僕たちの心の中に生き続けています。

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