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自分軸での兼業(起業)のとある一日

 私は、一昨年の4月末にそれまで勤めていた仕事を退職後、「自分軸」の生き方をすすめるための一つの方策として、兼業をしている。

 一つは、ある大学で実務家教員として、産学官連携や起業支援、リカレント教育などの仕事をしている。もう一つは、みずから起業して、有機農業向けの土壌診断や地方創生のためのコンサル的な仕事をしている。前者は大学の地域貢献という点で、後者は有機農業や環境保全型の農業の推進という点で、持続可能な地域社会づくりに自分なりに何か役に立ちたいという思いで仕事している。

  勤務日としては、前者は、原則として、月・火・木・金の週4日。後者は、平日の水曜日と土曜、日曜、祝日など自分が自由になる時間帯である。今回は、この「兼業の日」の水曜日のとある一日(2024年1月17日)を振り返ってみた。

朝はゆっくりとした気持ちで

 大学へ出勤する月・火・木・金は、勤め先が遠いので朝6時に起床して7時過ぎには家を出るが、兼業の日の水曜日は、私の会社のオフィスが自宅にあるので、7時に起床する。それから、ゆっくりと朝ごはんを作り、身支度をすることができる。これはありがたい。

朝ごはんは、豚汁、フォカッチャ、オムレツ

To DoよりもHave Doneで

 9時30分、私の会社の立ち上げからずっと助言をしていただいている2人のアドバイザーの方との毎月1回の定例のオンラインミーティングを行った。私の会社の仕事は、週1回の水曜日と時間が空いたときしかできないので、大したことはできない。ただ、定例ミーティング前に過去1カ月にやったことをPowepointにまとめてみると、意外といろんなことをやっていることに気づかされる。

 兼業をするようになって、私が心掛けているのは、To Do=やらなければならないことよりも、Have Done=やったことを見える化し、自覚することである。仕事をするうえで、To Doリストを作り、やるべきことを確実にこなしていくことは重要である。ただ、To Doリストは作り出すといくらでも増えてくる。消し込みをするよりも、追加する方が増えるので、何もものごとが進んでいないという感じになる。すると、だんだんモチベーションが下がってこざるを得ない。しかし、たとえ小さなことでも、やったこを文字にしていくと、それが今の自分にとって(自分の事業にとって)どういう意味があるのか、それが過去のHave Doneとどういうつながりがあるのか、それが未来のToDotoどうつながっていくのかが見えてくる。それを、PowerPointにまとめて、アドバイザーに報告し、ディスカッションすることで、自分では気づかなかった気づきが得られる。気づきを赤字フォントで追記して記録していくことで、認識の蓄積ができる。

理論とリアルの往復循環の大事さ

 引き続き、11時~私の会社の顧客である農家さんとのオンライン・ミーティングを行った。このミーティングには、その農家さんを紹介してくれたビジネスパートナーの方も同席した。

 1年ほど前に、ビジネスパートナーの方に連れられて、この農家さんの農場を訪問させていただき、圃場を見学し、どのような思いで農業をしているかのお話を伺った。それから約1年たち、農産物の生産量が思うように達成できないとして、土壌診断のご依頼を頂いた。農産物の生産には、今問題となっている気候変動の影響も大きいであろうし、その作物がその地域の気象条件や土質に合っているかどうかという問題もあるだろう。しかし、様々な要因の中の重要なファクターの一つとして、土壌に着目し、まずはその「見える化」をしたいというご要望であった。

圃場の見学は楽しみ

 そこは、私の会社の得意分野である。土壌のサンプルを送っていただいて分析をおこない、土壌に含まれる微生物の量、微生物による有機物分解の循環活性、微生物のエサとなる有機物の量やバランスなどのデータを出した。このデータと、過去に蓄積した膨大なデータとを比較し、パターン判定をおこなうことで、この圃場の傾向や問題点を推測し、改善の処方を提案することができる。これは一つの理論である。

 オンライン・ミーティングでは、上記の理論に基づいて、この圃場の分析結果のデータの読み方について、私の方から解説させていただき、現場の農家さんの意見、その農家を時々訪問しているアドバイザーの方の意見を交えて、ディスカッションした。データに基づく理論と、現場がから見えているリアルとを融合していくと、目に見えない土壌の中で、おそらくこういうことが起こっていて、こんな方向で処方していけば、改善できるのではないかという仮説が見えてきた。それから、半年ないし1年後、この時に出した仮説に基づく処方をやってみて、何らかの改善が見られたのか、見られなかったのか、あるいは、この部分は改善されたが、ここには課題がのこった。。。等、答え合わせをしてみるのが重要である。それが、また、理論としてフィードバックされていく。理論とリアルとの往復循環の大事さを改めて感じた。

午後からは大学へ出勤(時間外労働扱い)

 水曜日なので、この日は終日、自分の会社の仕事をするはずなのだが、どうしても今日でないと都合がつかない来客があるため、午後から大学へ向かった。大学の方は時間外勤務の扱いとなる。途中、郵便局に立ち寄り、そのあと京都府のパスポートセンターに行って、期限切れ間近となって更新手続きをしていたパスポートを受け取り、京都駅で立ち食いのとり天カレーうんどんを食べて、大学のある奈良へと向かった。

京都駅の立ち食いうどんやでとり天カレーうどんを食べる

アントレプレナーシップ教育の目的は金儲けではない

 15時30分、ケニアの社会課題の解決へ向けてビジネスをしているA氏が来校して、同僚の実務家教員2名とともに打ち合わせを行った。

 A氏は、前々職のときの同僚(といっても私よりもずっと若い)で、私と同じ時期に前々職を退職して、母校の大学へ戻り、博士課程に入ってケニアのヘルスケアをテーマに研究をおこなった。そこから、ケニアとのご縁ができて、今の仕事につながっている。ケニアは急速に成長しているが、医療や保健衛生の制度や人材、資金などが圧倒的に整備されておらず、病気や妊娠などで亡くなる人も多い。そうしたなかで、比較的安価な医療機器の普及や医師、看護師、医療従事者のトレーニングなどを行う事業を展開している。

 また、そこで得た知見やノウハウを活用して、大学生や若者が途上国の課題を知り、途上国の社会課題を解決する事業を考えるワークショップなどにも取り組んでいる。そのため、来年度、私たち実務家教員が取り組もうとしているアントレプレナーシップ教育講座に協力してもらおうための相談を持ったわけである。アントレプレナーシップということ、単純に「起業家精神」と訳され、お金を儲けるための企業をいかに作るかという教育だと短絡的にとらえると大きな間違いである。私たちとしては、学生さんたちが、このワークショップを通して、途上国の課題という、普段まあり考えてこなかった課題に直接触れて、何かを発見し、考える練習をして、将来のキャリアの選択肢を増やしてほしいと考えている。

途上国の社会課題を考えてみる

自分の軸で社会課題に向き合う

 打ち合わせ終了後、A氏と本当に久しぶりにリアルで一杯飲んで、前々職退職後の約5年間、コロナ禍の時期も含めて互いにどんな歩みをしてきたかを語り合った。お互いに、テーマは違うけれど、自分の軸で社会の課題に向き合うために起業を取り組んだ点では共通している。ただ、取り組みとしては彼の方が立派だ。家に帰ったのは、もう22時過ぎだった。

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