「なりわい暮らし」〜人と社会をつなぐもの〜(後編)
前回は、
私たちが「なりわい暮らし」を提案するきっかけになった、
テラスハウスの「鵠ノ杜舎」を例にご紹介しました。
「鵠ノ杜舎」のコンセプトでもある「ゆっくりと日常を耕す暮らし」が、
今までの働き方や、暮らし方を見つめ直すきっかけとなり、
暮らす人自身が、この場所で「なりわい」を営んでいくという物語が生まれました。
後編は、実際に「なりわい暮らし」をコンセプトに設計した
住まいをご紹介していきたいと思います。
1.地域とつながる「なりわい暮らし」
まずは「鵠ノ杜舎」をヒントに設計された、
”地域とのつながり”を感じながら「なりわい暮らし」ができる住宅、
「TSUBANA」と「hocco」という店舗型住宅について。
「TSUBANA」のコンセプトは、
やってみたい!をまちにひらく「なりわい暮らし」の家
茅ヶ崎という海と里山に恵まれ、独特の文化を持つこの場所で、
まちを愛する人たちと、文化を共有しながら暮らせる住まいです。
間取りは、1階が趣味を仕事にできる店舗やアトリエ、
2階が住居になっています。
「hocco」はvol.35でもご紹介したように、
住宅街の中にある「バスの折返場」を活用した店舗兼用賃貸住宅。
商業地域ではない、
住宅街という場所に暮らしながら店舗を営むスタイルは、
どこか懐かしい昔の生活商店街をイメージした場所として存在しています。
2.生き方としての「なりわい暮らし」
次に、「なりわい暮らし」をテーマにした住宅としてご紹介するのは、
福島県双葉町にある集合住宅『えきにし住宅』
この住宅は、
「なりわい暮らし」という言葉を、
「TUBANA」や「hocco」とは少し違って、
「なりわい」≒「生き方」という視点で捉えています。
vol.36
境界線をぼかすまちづくりで、人とまちの個性を緩やかに引き出す(後編)
でもご紹介したこの『えきにし住宅』
境界線をぼかすための縁側や共有スペースは、
暮らす人々の交流を活性化する役割を持っていましたが、
それはつまり、お互いのなりわいが見える暮らしのためでもあります。
なぜなら『えきにし住宅』は、
故郷に帰還する方の住宅であると同時に、
新しくこの街で暮らす方の住まいでもあるからです。
知らない人同士が歩みを揃えて、
復興という一つの目標に向かって進むためには、
お互いの趣味や暮らし方を身近に感じて暮らすことが、
他のまち以上に、必要な要素だと感じました。
3.なぜ「なりわい暮らし」が必要なのか
ここまで、いろんなかたちの「なりわい暮らし」をご紹介しましたが、
そもそも「なぜ、なりわい暮らしの提案をするのか」
その理由を、一つの社会課題を例に説明したいと思います。
令和2年の国勢調査によると、
一般世帯の単独世帯は、全体の38.1%を占め、
4割近くの人が一人暮らしをしている状況です。
そして、高齢化の日本にあっては、
今後この割合は大きくなると考えられています。
これまでご紹介した「なりわい暮らし」は、
「暮らす人」と「まち」とのつながりを生み出したり、
復興という目標に向かって共に歩む機会を生み出したりと、
小さな社会と個人をつなぐ役割を担ってきました。
つまり「なりわい暮らし」は、
孤立する世帯と地域の間にある
心理的な境界線をぼかす役割も果たしていると考えています。
私たちブルースタジオは、
「なりわい暮らし」という社会と個人をつなぐ暮らし方が、
単独世帯だけでなく、高齢化地域や子育て世代の見守りなど、
まだまだ、いろんな社会課題にアプローチできる
一つの暮らし方の提案として、
これからも心の境界線を探りながら、
「なりわい暮らし」の提案をしていきたいと思います。
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