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“境界線をぼかす”まちづくりで、人とまちの個性を緩やかに引き出す を、編む

vol.36 〜ブルスタ語録シリーズ 第1回(後編)〜

前回に引き続き、今回もブルスタ語録の、
「“境界線をぼかす”まちづくりで、
人とまちの個性を緩やかに引き出す」
を、
実際の建築的デザインと役割を例に解説てみたいと思います!

「ブルスタ語録」とは?
リノベーションや建築デザイン、まちづくり、人の暮らしづくりについて、ブルースタジオが独自の表現や言葉を使って伝えてきたものを、より細かく、噛み砕きながら、これまで手がけた作品と共にご紹介していくシリーズです。

前編(vol.35)はこちら


1. 土間×縁側×軒下×なりわいで「境界線をぼかす」

今回は、東日本大震災から11年が経ち、
2022年に一部の地域で避難指示解除となった、
福島県双葉町にある集合住宅『えきにし住宅』
「境界線をぼかす」仕組みについてご紹介します。

震災で約7000人の町民全員が、
避難を余儀なくされた双葉町。
このまちで再び暮らす人、新しく移り住んでくる人、
その人たちにとって必要な住環境とは?

そして、新たに、
この場所で住民となる人々が、
お互いを理解して、新しいコミュニティを作り、
まちを盛り上げていける住まいとは?

そんな双葉町の未来をどのように支えていくのか、
ここ「えきにし住宅」でも、
「境界線をぼかす」という発想が、
住む人々の交流を生み出すきっかけ作りになっています。

「えきにし住宅」には、
hoccovol.35でご紹介したプロジェクト)と同じく、
玄関にガラス戸で仕切られた「土間」がありますが、
他にも近所の方たちと触れ合える場所が、
住居や敷地の至るところに設けてあります。

戸建タイプの間取り

まずは「縁側」
一般的に縁側は、
日当たりの良い居間や客間側に1箇所ある場合が多いですが、
えきにし住宅の住居には、
玄関側とその反対側の2箇所に設けてあります。

玄関の入り口が正面で向かい合わないよう、少し入り口をずらして向かい合う住居

また、各建物の入り口が、
路地を挟んで向かい合って並んでいることも、
より交流しやすい効果を生み出しています。

更に、境界線をぼかす工夫は共有スペースにも及んでいます。
「軒下パティオ」「集会所」といった、
誰もが利用できる場所が敷地内に複数箇所あり、
住居を介した交流に比べて、
より多くの人が集まれる場所として役割を果たしています。

軒下パティオ
集会所

例えば、
「土間」道具の手入れや日用品のDIY、
「縁側」でコーヒー片手にお隣さんとおしゃべり、
「軒下パティオ」や「集会所」でお祭りの準備や井戸端会議、
などなど。

思い思いの趣味を楽しめる土間

この「土間」「縁側」「軒下パティオ」で、
暮らす人びとの”生活の営み”としての「なりわい」が、
至るところに垣間見えることで、
自然とお互いの趣味や生き方をシェアしながら、
生活できるようになっています。

現在、この「えきにし住宅」は、
入居から1年半が経ち、
次々に新しい活動が生まれています。

集会所に週1度集まり、
井戸端会議のように話しながら、
困りごとを共有し、新しい活動が始まったり、

「ちいさな一歩プロジェクト」という活動では、
双葉町に賑わいを取り戻すために、
「ふたばダルマルシェ」や「ふたば飲み」などの企画運営しています。

また、役場や産業交流センターなど街を支える施設も、
続々と建設されています。

帰ってきた方、新しく移り住んだ方たちに、
育まれていくこのまちを、
私たちブルースタジオも、見守っていきたいと思います。


境界線をぼかすポイント
 ・なりわいが垣間見える「土間」
 ・住居の両サイドに存在する「縁側」
 ・より多くの人と交流できる「軒先空間」「集会所」


★ えきにし住宅や双葉町の詳細はこちらでもご紹介しています!


2. 境界線をぼかすと「人間性の回復」につながる?

さて、2回に渡ってご紹介した、
ブルスタ語録「境界線をぼかす」ですが、
この言葉の思い、上手く伝わったでしょうか。

建物やまちに存在する「境界線」を、
時代の変化に合わせてぼかしながら、
暮らしやすさを見つけていくことで、
これまで途絶えていた人と人との関係性が、
復活したり、新しく始まったりする場所に変化していきました。

場所に新しい価値を生み出していくという、
このリノベーションの発想は、
住まう人にとっての人間性の回復にも繋がっていくと、
わたしたちブルースタジオは考えています。

 僕は自らの仕事を、スーパーパワーや画期的な発明をクライアントに提供することだとは思っていない。クライアント自らの人間性を源に「人・場所・時間」に関する潜在能力を最大化させることだと思っている。
 リノベーションの発想とは、建物や空間の再生ではなく、そもそも人間性の回復を意味しているのだ。(p48)

『なぜ僕らは今、リノベーションを考えるのか』(学芸出版社)

記事を書きながら、
私自身が暮らす家やまちの境界線にも、
目を向けるようになりました。
普段、当たり前と感じている境界線を見つめ直すことも、
暮らしやすいまちづくりの小さな一歩かもしれません。


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