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たどりつく保健室 #a3

さて、授業中の小学校から300mのショッピングセンターに逃げたお兄さん。それに対してお父さんから しかられたって、そんなご注意では can't stop him. です。

頻度って、あるでしょ。頻度。例えばワタシのおじいさんの家は、2年のうちに2回、床下浸水したことがあります。そりゃあ、はい、高頻度で洪水と言ってよかったと思います。あとはー、例えば、毎日浴びるようにお酒飲んでいる方は、家族のかたがげんなりされている頻度が高いのではないかと思います。連続する事象には、頻度があって、こまかいパンチでも何度も打てば倒れちゃう。

お兄さんのスネークアウトは頻度を増します。この手の登場人物において、対応がこなれてくるのは、ワタシの上司のかた。
「あのまた子どもが学校から逃げたみたいで 
と、ワタシ
「あら、大変。いってらっしゃい
っていう、得意先に呼ばれて出ていくレベルの温度感(当社比)。
あの、決して軽んじているわけではないのだけれども。

で、早退して。またあれか、ショッピングセンターかな、と思ったら、今度は近所の公園だったり。学校の外に出たのかと思ったら、学校のコイの泳ぐ池の前にいたり、保健室に行ったり。

2年生になっても、どんどこどんどこ、ずんどこずんどこ逃げるのですが、なんとか今度はしてほしくない。2年生にもなると、頻度も高いので、親は先生と相談して、ひとつの約束を作ってみます。完全イレギュラーなルールなので、ほかの子はもやもやしてたろうな、と思いますが。お兄さんが何かをイヤになったら先生に手を挙げて、「ちょっとイヤになりました」って言って教室を出るようにしましょう、とした。させてもらった。出ていく理由やきっかけがわからないから、もう、出る前提ですね。出る前提。手を挙げて、宣言してからエスケープ。ひとつ上のサボタージュ。お願いします、なにとぞ。ダメそうになったら手を挙げて、そうだ、保健室に行こう。学校の外に出て、交通事故にあってもいけないので。

デンジャーゾーン
宣言サボタージュも、もしかしたら最初はよかったのかもしれないけれども、きっと全員が好意的ではないよね。だって、「ねぇセンセー、なんであいつだけ手を挙げたら授業うけなくていいわけ」と思う同級生もいるよね。小学2年生とはいえ。クラスみんなは、みんなが協力的な お友達じゃないわけで。

お兄さんは、2年生にして、波風を立てないように生活しなきゃいけない。自分のココロと戦わなければならない。心当たりのない”あたりまえ”や”普通”を探してふるまわなければならない。ひとつせっかく見つけた、逃げるという解決策も、大人にまるめこまれて、手を挙げなければならなくなっちゃった。

たしか、ちょうど2月ごろだったと思うのですが、ひさしぶりに学校から電話がかかり、例のごとくお兄さんの脱走の通知。上司に流れるように伝達。Call and 早退。 こなれた体の動きとはうらはらに、そろそろ本当に何とかしてほしい、何とかしなくてはいけない。

彼は今回、せっかく話し合った”挙手してから逃げる”ということを、故意なのか こばみ 逃げ出した。逃げ出したお兄さんを探すときは、それでも前例にならってここかなあそこかなと考えるのだけど。今回は、先生のカンも、お父さんのカンも冴えなかった。学校の外なのか、ショッピングセンターなのか公園なのか。学校の中なら体育館なのか、保健室なのか、音楽室とか。いなくて。おかしいな。

まさかと思って先生が、視線を上のほうへ、ふわっと向けたら、屋上のへりのところに 足を投げ出して、ベンチにすわるように プラプラしている上履きを履いた足が見えたそうです。

あと、ベンチから降りる動作をするだけで、大惨事を起こすことができる位置です。

先生は、屋上に駆けあがり、そして彼を刺激をしてはいけないということで、まるで何か、こう、トンボかなんかでもつかまえるみたいに、視界の外からそっと近寄って、がばっと確保してくれた、とのことでした。

そんな、先生からの、人づての共有でも血の気が引いてしまう話を伺った。これはもう、これは、いや、これはもうダメだ。誰かがダメとか、そういうンじゃなくて、やりかたを変えなくてはいけない。子どもの気持ちにまかせたのが良くなかったのだろうか。子どもの気分で挙手して、子どもきっかけで保健室へ行ってもらう形では今回ダメだった。ダメだと思った。手が震えてた。

だからワタシはその日、お兄さんが屋上で足プラプラしてた日のうちに、先生と相談した。もう、朝、登校して教室に行くんじゃなくて、朝から保健室に直行で登校させてもらうようにしよう。保健室登校の始まりです。

「じゃあ先生、すみません。お手数ですが。
 イレギュラーな対応ですが、ちょっとしばらく
 この形で進めさせてください。
「そうですね。息子さんの様子も、保健室登校で
 落ち着いていくといいんですけどね。
 じゃあ、今日はこのへんで、お父さん。
 ・・・何か ほかに、困ったこととかないですか。
と、先生。

「あ、先生あの。申し上げにくいんですけども。
 来年、、彼より やんちゃな弟が入学します。

ワタシがそういうと、先生という大人の表情が、保護者の人にばれないように、こっそりと隠れて引きつってこわばっていた。

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