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輪廻の夜|詩


服を脱いで
抱きしめ合って
何もしないのが一番いい
でも、それで終わったためしがない

それなら、と
服を着たまま寄り添ってみるけれど
やっぱりそれでは終わらない


その一瞬ごとに淡く満たされているはずなのに
あなたの属する同胞はらからたちは
なんだかずいぶん
不自由そう


なにもかも壊れてしまえと
呪うそばから
沸き立ってくる愛おしさ

あなたの愛し方はそんな風に切なくて


矛盾のない愛なんて
どこにもないと知りながら
駄々をこねるみたいに
無意識の手のひらで
私の中に
それを見つけようとするのね


きっと私たち
間違えてこの世に生まれてきたのでしょう?

だから
あなたは私を探していたし
私はあなたを探し当てた


なぜあなたが男で
私が女として生まれたのかは
わからない

けれど もし逆だったなら

新しい命を産み出すための
天地を引き裂くようなあの苦しみを
あなたに味わわせたのは
私だった


それならば
いまはただ
こうして目を閉じて
あなたの愛を受け入れましょう


深い痛みを隠して
あなたはいつも

闇の底で月を見つけたみたいに
私を抱くのね






 テーマがテーマなので、せめて純度を高めようと苦心してはみたものの・・・。
 皆々様がコメントに困るような詩を載せているのは、おおよそ3つの理由からです。

 ひとつめは、(おそらくこの数ヶ月前ごろから)世の中をひそかに騒がせていたらしい、ガブリエル・ブレア『射○責任』という本のことを知ったから。
 NHK📻でじっくり取り上げていたくらいだから、話題にしてもかまわないのでしょう(◔‿◔)

 アメリカからやってきた本。装丁も強烈。日本でもSNS で話題になったり炎上したりしているそうで、noteで検索してみたら、いくつか記事が出てきました。中には舌を巻くほどの(元の本すら超えた?)深い論考も。さすがnote。さすがnoter。本は読んでいませんが、すっかり読んだ気になりました(^^ゞ

 日本での本の売られ方自体に、炎上商法的な気配があるらしいので、たぶん読まないと思います...。フェミニズムというよりは、私としては性犯罪の再犯を防ぐ教育目的の本という位置づけならば、ちょっと興味はありますが。


 ふたつめは、先日noteにも載せた、ブライアン・サイクス『アダムの運命の息子たち』をなんとなくずっと引きずっているから。生物としての女性の受難にまつわる無常観。(もちろん、男性も生きるのは大変だと思います)


 みっつめは①と②があって、どちらもnoterさん。順序は「あいうえお順」です。

 みっつめ①──noter菊地正夫さんの記事(↓一番下↓)の中で、ピカソの『朝鮮虐殺』を見かけたから、です。ロボットと銃口と女性たち──が意味するもの。

 なおそちらの記事の本題は「原爆の図 丸木美術館」について。常日頃エッセイ教室に通って腕を磨いておられる菊地さん。その彼が、じっくり向き合って書き上げられた渾身のエッセイですので、よろしければぜひ。その熱量に応えるべく、私もコメント欄にお邪魔して、長々と浅慮を書いてしまいましたが...。


 みっつめ②は、noter守屋聡史さんの読書感想文(↓一番下↓)。ヘミングウェイ『武器よさらば』の原書(原書ですよ👏)を読んでの論考です。戦争による死と出産を対比しリンクした着眼点に感銘を受けました。守屋さんは、物事を深く受け取り、心を震わせることのできる純粋な方で、お書きになる文章も、まっすぐで澄み切った筆致。読んでいると、考えさせられながらも落ち着きます。いつも感謝です。



 ギリシャ・ローマ神話において、戦争の神マルスと、美と愛(と生殖)の女神ヴィーナスがいみじくもカップルであるように、(生と死につながるものである)戦争と性愛はどこかでつながっているように思えます。民俗学の本を読んでいると、それらは《エネルギーの奔流》の表れで、人間のコントロールを超えかけてしまうところにあるみたい。
 絶え間のない戦争の報道を聞きながら、男女の間にもある、人間の業のようなものを噛みしめずにはいられない、輪廻の夜なのでした。


 冒頭の詩は、私個人のセクシャリティの話ではむろんありません(そんなこと恥ずかしくて書けませんって)。
 古代ギリシャの劇作家・アリストファネスが、男女はもともと一体で...と述べていたような事柄を受けて、その続きを別テーマで物語詩にしてみた...といったものです。


 真摯に愛し合ってもなお埋まらない、男女の溝。どこまでも相容れない存在を伴侶として定めた自然の掟は限りなく不可解だけど、だからこそ世界はこんなにも多様なのかもしれません。



 さて、さて。締めくくりに──。
 母が小さな赤ちゃんを腕に抱いているとき、その子の父であり彼女の愛する人、を同時に抱き締めているのだと思いつつ、クリスマスの近いこの時期によく聞いている曲を、ご紹介させてください。

 聖母マリアが嬰児みどりごイエスを抱いて歌う歌なので、この記事には似つかわしくないかもしれません。ですが、歌詞を味わいながら聴いていると、あらゆる母の歌う歌のように聞こえてくるのです。
 1年前にラジオ経由で出会ったとき、こんなに悲しく美しい歌を聞いたことがあったかしら…と思いました。

 そもそも、クリスマスの日にちというのは(十字架や復活の日とは違い)明確に記録されていたわけではないそうです。後世になってから、冬至の少し後に設定されました。夜(世)の最も深くて暗い季節に、希望が生まれた、ということを象徴的に表しているのだそうです。──それは、現代の世界にも通じる"最も暗い夜"だったのかもしれません。

 歌詞はたとえばこちら。英語のみですが(著作権の関係でここには載せられません)↓↓

https://genius.com/Carola-heaven-in-my-arms-lyrics


 昨年はウクライナを思いながら聞きました。
 今年はさらに、ガザをも思いながら…。



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