窪田勝義/Katsuyoshi Kubota

専門:国際法・法哲学。東北大学法学会賞・東北大学総長賞。Leave no one be…

窪田勝義/Katsuyoshi Kubota

専門:国際法・法哲学。東北大学法学会賞・東北大学総長賞。Leave no one behind!

マガジン

  • ぼくの世界観的態度

    法的拘束力の基礎づけという関心が、人格の尊厳の平等とともに、主な観点を構成しています。

  • 法的トピック・「欠乏」

    「欠乏からの自由」を考えます。

  • 法的トピック・「紛争」

    「紛争からの自由」を考えます。

  • 「グローバル・ブルー・論点」

    日本国憲法と平和、人道支援における安全の確保、国際社会の「保護する責任」、紛争の平和的解決、を考察します。

  • 上杉鷹山公物語ーー「スピリット・オブ・なせばなる」

    米沢藩主・上杉鷹山公を題材にしたストーリーの創作にチャレンジします。

最近の記事

  • 固定された記事

「カント法哲学の研究ノート」

1. カントにおける「自律」と「善意志」 カントによれば、道徳的価値は、義務を義務として尊重し、それに基づいて為される行為にのみ、見いだされる。そして、善い意志は、ただ意志することによって善いという。それは義務に基づいて行為することを意志する意志である。その際、われわれが義務として従うべき法則が、カントの「道徳法則」である。 わたしは、カントの「普遍的法則」を、基本的に定言命法の「目的自体(人間性)の方式」で理解しており、「汝の人格のうちにもあらゆる他人の人格

    • "THE FIRE IN THE RAIN"

      "THE FIRE IN THE RAIN" 心の中のイノセントワールドが 励ましてくれる。 鏡の中のぼくは、影を帯びてるね。 でも、心の闇には、 天の川が、広がっている。 あの笑顔も、 忘れられないほうき星。 世界の片隅に、君のなみだ。 ごめんよ。 WE ARE THE FIRE IN THE RAIN.

      • 社会の「構造的暴力」の是正と「連帯」の必要性

        田畑茂二郎によれば、今日においても、平和を守るためには、それぞれの国内において人権を尊重する体制が作られる必要があることは変わりはない。しかし、発展途上国、特に戦後植民地から独立した国において、顕著な社会の不公正や人びとの貧富の差、抑圧などを生む社会構造そのもののもつ歪みが、武力と異なる一種の暴力として人間を傷つけており、この社会的暴力を是正しないかぎり、人権の問題は解決されない。このような国々にとっては、人権問題は半永久化された貧困状態と切り離して考えられないのであって、人

        • 愛情を規定する「善意志」

          道徳規範は、あらゆる人間の人格にそなわる尊厳を目的自体として扱い、単なる手段として扱うことを禁じる。人間は尊厳において平等である。自分を他者との関係で単なる手段となすことは、道徳規範に反し、自分はどのような場合でも、自分自身との関係においても、自己の人格を、他者の人格とともに、目的自体であると主張し、抵抗することは、道徳的自己保存の権利である。 道徳規範は、その関心を人間の行為における内面に向ける。「善意志」というのは、道徳規範に対する尊敬の念によって規定された意志であり、

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        「カント法哲学の研究ノート」

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        • ぼくの世界観的態度
          10本
        • 法的トピック・「紛争」
          8本
        • 法的トピック・「欠乏」
          6本
        • 「グローバル・ブルー・論点」
          5本
        • 上杉鷹山公物語ーー「スピリット・オブ・なせばなる」
          4本

        記事

          共生と基本的人権の尊重

          1・国際法上の「自決権」について 人権規約は、A規約、B規約のいずれにおいても、第一条一項において、自決権について規定し、「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」としている。 第二次世界大戦後、非植民地化の過程で実定法となっていく自決権は、植民地人民を中心とする、外国支配下におかれた従属人民の独立達成の権利であり、「外的自決権」を意味した。独立国の一部を構成

          共生と基本的人権の尊重

          「気候変動」をともに考える

          1・「子どもの最善の利益」 子どもの権利条約の主たる目的は、子どもを権利主体として捉え、子どもの権利を定めることにある。しかし、子どもは、常に成長を続ける存在であり、保護の視点が欠かせない。条約は、その視点として、「子どもの最善の利益」を置いている。 国は、子どもに関係するすべての措置(不作為を含む)において、子どもの最善の利益を主として考慮しなければならず、子どもに影響を及ぼす活動や事業(公私の施設や私企業を含む)に関するすべての立法、行政、司法手続において、この原則を

          「気候変動」をともに考える

          人権の中核としての人種差別の禁止

          基本的人権という観念は、一八世紀の啓蒙期自然法思想から導かれたものであって、国内における君主や貴族と一般庶民とが階級的に厳然と差別される中で、君主の絶対支配に抵抗し、平等な人間としての権利が主張された。田畑茂二郎によれば、平等の主張といっても、それは同質的な白人社会内での平等の主張であり、白人と他の人種との間の平等とか、人種間の差別の撤廃とかいった問題は、視野の外におかれた。 戦後、状況は大きく変わり、人々の平等という場合、対象領域は国内から世界的な規模に大きく広げられ、人

          人権の中核としての人種差別の禁止

          国際法上の「自決権」について

          人権規約は、A規約、B規約のいずれにおいても、第一条一項において、自決権について規定し、「すべての人民は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」としている。 第二次世界大戦後、非植民地化の過程で実定法となっていく自決権は、植民地人民を中心とする、外国支配下におかれた従属人民の独立達成の権利であり、「外的自決権」を意味した。独立国の一部を構成する少数者などに自決権を認めることは

          国際法上の「自決権」について

          「世界法の理念」

          「世界法の理念」 世界社会は、地球上の人間の理念における連帯を基礎とする。この理念は、各人を目的追求主体として承認すると同時に、人間を目的自体としても承認する。それゆえ、各人は、人間を目的自体として承認して行動し、人間を単なる手段としてのみ扱うことを禁止する。 立法者は、あらゆる人間を目的自体として尊重することを原則とし、法定立の基本にこの原則をすえ、さらに公益的な観点から、政策的な配慮を組み入れ、基本原則に則ると同時に、最善の効果が期待できる法律の公布を目指すべきと考え

          短編・「ウォーター・エイド」

          砂漠の真ん中に、飛行機が不時着した。友人の助手とともに、飛行士は、活路を探していた。 助手:「もう駄目だ。のどが渇いて死にそうだ。体が重いんだ。」 飛行士:「水なら少し残ってる。君のだ。ほら。」 助手:「メルシー。」 飛行士:「ぼくらがここで諦めたら、ぼくらの帰りを待ってる人たちが悲しむ。」 飛行士:「ぼくらが彼女たちを救うんだ。だから、ぼくらは、救援隊だ!」 助手:「はあ、はあ、はは、そうともいえるね。もう拠点(飛行機)は捨てよう。」 助手:「歩けるだけ、歩い

          短編・「ウォーター・エイド」

          カントとの対話・「世界平和を目指して」

          カントは、「完全に法適合的な市民的体制」の実現を、国家法・国際法・世界市民法に共通の「公法の要請」としてとらえなおし、無法状態から配分的正義が保障される法的=市民的状態に移行し、公的法則による外的強制に従うよう統合することによって、暴力から安全な法的=市民的体制を確立するという課題・目的として定式化する。 「公法の要請」について、カントは、権利紛争の暴力的解決に代わる共通の法に基づく訴訟手続による解決への転換ということを、決定的基準としている。これに関して、現行国際法では、

          カントとの対話・「世界平和を目指して」

          「後期ラートブルフの闘う相対主義」

          後期ラートブルフの相対主義観と民主主義観を、尾高朝雄・碧海純一『ラートブルフの法哲学』を参照して、紹介したい。 ***** 「多様な目的観と単一の実定法の併存」 ラートブルフの相対主義は、すべての他人もまた、同じくその信念に従って政治的態度を取っていることを認め、互いにその立場を尊重するという、人間の平等の理念に基づいている。このような相対主義的態度は、「寛容」の倫理を求めるものである。 相対主義は、一方では対立する多様の目的観におけるその正しさの真実性を絶対に主張す

          「後期ラートブルフの闘う相対主義」

          カント法哲学・再論――外的自由の確立へ

          「外的自由と普遍的な法原則」 カントによれば、法論は外的自由の義務に関わる。この「外的自由」は、徳論における内的自由の可能性の外的な諸条件であり、この外的自由を権利として主張することは、道徳の自己保存である。 カントによれば、法論については、「汝の選択意志の自由な行使が、誰の自由とも普遍的法則に従って両立できるように外的に行為せよ」という「普遍的な法原則」が妥当する。 わたしは、カントの「普遍的法則」を、基本的に定言命法の「目的自体(人間性)の法式」で理解しており、「汝

          カント法哲学・再論――外的自由の確立へ

          共同立法者としての市民と「万人の統合意志」

          「共同立法者としての市民と万人の統合意志」 カントによれば、「根源的契約」は、「結合すること自体が(一人一人すべての人がもつべき)目的であるような結合」であり、「人々の間に市民的体制を創設する契約」である。 「法の純粋な諸原理に従ってどうあるべきかを示す理念における国家」が「純粋共和制」であり、根源的契約の内容的要請の一つとして、公共体の構成員が市民すなわち共同立法者として自主独立していることが挙げられている。 これに関連して、カントは、実定法律は、人民すべての自由とそ

          共同立法者としての市民と「万人の統合意志」

          カントにおける「公法の要請」

          カントによれば、自然状態においては、潜在的な暴力に対する保障がなく、このような意味で「無法」状態にとどまることは「最高度の不正」である。 「すべての他の人々との避けられない共存の関係において、自然状態から脱出して法的状態へ、つまり配分の正義の状態へ移行すべきである」という義務は、「公法の要請」であるとされる。 配分の正義は、「何が、どのような法廷での判決が、個別の事例において所与の法則に照らして合法か」を判定するとされ、田中成明によれば、法廷における正義の有無が、法的特質

          カントにおける「公法の要請」

          短編・「BLUE SKY PROJECT+」

          /「マンスリー・サポーター」 オペレーター:「マンスリー・サポーターのご登録が完了しました。ありがとうございます。」 ソラ:「ありがとうございます。」 /「BLUE SKY PROJECT」 日本の海外協力部門に、世界中に食料支援を実施する人道支援機関、BLUE SKY PROJECT(BSP)が発足した。 アリョーシャ:「ぼくたちBSPの活動を大きく分けると、学校給食支援と緊急支援、それから発展途上国支援の三つに、重点を置くことが決まったよ。」 アリョーシャ:「

          短編・「BLUE SKY PROJECT+」