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愛情を規定する「善意志」

道徳規範は、あらゆる人間の人格にそなわる尊厳を目的自体として扱い、単なる手段として扱うことを禁じる。人間は尊厳において平等である。自分を他者との関係で単なる手段となすことは、道徳規範に反し、自分はどのような場合でも、自分自身との関係においても、自己の人格を、他者の人格とともに、目的自体であると主張し、抵抗することは、道徳的自己保存の権利である。

道徳規範は、その関心を人間の行為における内面に向ける。「善意志」というのは、道徳規範に対する尊敬の念によって規定された意志であり、人間の内面におけるダイヤモンドである。他者を愛するということと、「善意志」によって行動することは異なる。全く愛していない他者に対しても、道徳規範への尊敬の念から、目的自体として尊重することは、「善意志」の特質である。

「善意志」は性格まで高められた、道徳規範に対する尊敬の念であり、現実にそこにいたるには、さまざまな内面における欲求と格闘し、克己(こっき)の精神を培わねばらならいだろう。サン=テグジュペリによれば、人間における最高の贅沢は、人間関係に恵まれることである。そのような幸福には、「善意志」に加え、「愛」を知らねばならないだろう。

正しい「愛」へと導くのは、道徳規範であり、「善意志」である。

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