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「気候変動」をともに考える

1・「子どもの最善の利益」

子どもの権利条約の主たる目的は、子どもを権利主体として捉え、子どもの権利を定めることにある。しかし、子どもは、常に成長を続ける存在であり、保護の視点が欠かせない。条約は、その視点として、「子どもの最善の利益」を置いている。

国は、子どもに関係するすべての措置(不作為を含む)において、子どもの最善の利益を主として考慮しなければならず、子どもに影響を及ぼす活動や事業(公私の施設や私企業を含む)に関するすべての立法、行政、司法手続において、この原則を適用する義務を負う。

子どもの最善の利益は、子どもの実体的権利であると同時に、条約解釈のための法原則でも手続上の規則でもある。子どもの最善の利益は、子どもの諸権利の効果的な享有と、子どもの全面的発達をはかるように、比較衡量して決定される。

<参考文献>芹田健太郎・薬師寺公夫・坂元茂樹『ブリッジブック国際人権法第2版』/芹田健太郎『国際人権法』

2・基本的権利としての「水と衛生への権利」

政府は、健康、教育、暮らしを支えるのは、清潔な水と適切なトイレ、そして、正しい衛生習慣であることを確認し、国家の優先課題として、人間としての基本的権利である水への権利を確保しなければならない。国連総会では、「水と衛生への権利」が、相当な生活水準・健康への権利・生命や尊厳への権利に密接に関連するものであると同時に、独立した対応が必要とされている。すなわち、自由権と社会権の基本的権利に不可欠なものとして、「水と衛生への権利」が尊重されることを要するのである。

とりわけ、公平性の観点から、三つの問題があげられる。まず、給水サービスやトイレの設置サービスがあっても、貧困世帯が利用できる金額設定になっていない。また、物理的に給水サービスが届きづらい場所に住んでいる場合、例えば、辺境の村、都市部のスラム、紛争や自然災害によってインフラが破壊された地域などには、給水設備そのものが設置されづらい状況にある。さらに、障害がある、または民族、カーストなどが異なるなどの理由で、地域のなかで差別を受けたり、取り残されたりしている人びとがいる。世界には、予防可能な下痢性疾患で命を落とす子どもたちがたくさんいる。貧困と病気の悪循環から抜け出すために、早急に対策が求められる。

<参考文献>:ウォーターエイドジャパンのウェブサイト/東澤靖『国際人権法講義』

3・「持続可能な発展」と連帯の必要性

国際環境法の発展の上で、ストックホルム宣言が、発展途上国における環境問題の大部分が低開発に起因すること、発展途上国の発展の重要性および発展政策が環境保全と両立すべきこと、途上国の環境保全のために援助が供与されるべきこと、を指摘・強調している点は、現在でも重要である。

その後、リオ宣言では、共通に有しているが差異のある責任が規定され、そこから二つの帰結が導かれた。一つは、途上国には先進国と比べてより緩やかな環境基準を適用する「二重基準」の採用である。もう一つは、先進国が「地球環境に与えた圧力及びそれが有する技術並びに財政的資源に照らして」、先進国が途上国の持続可能な発展を援助するというものである。

途上国に発生する汚染も、先進国による汚染と同様に、地球環境を悪化させるため、「二重基準」には、持続可能な発展という観点から、限界が見える。グローバル化された国際社会において、利益を得ているのだから、先進国による途上国の持続可能な発展の支援は、援助ではなく、果たされるべき責任なのである。

さらに、われわれの大量生産・大量消費という生活様式が、持続可能な発展に適合するように、是正されなければならない。「環境と発展に関する世界委員会」が1987年に公表した報告が指摘するように、持続可能な発展において、最重要の優先権が与えられなければならないのは、貧しい人びとの不可欠の「必要(needs)」である。

<参考文献>:松井芳郎『国際法から世界を見る第3版』

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