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「人間の安全保障」について
国家の安全保障というのは、一種の領土内における安全である。従来の方法で、たとえばミサイルをつくるといった計画では、国家の安全は守り切れない。社会の安定という要素を重視する必要があるのである。しかも、それは国内のことばかりでは、まったく不十分である。各地において、とりわけ紛争地域において、社会的な公正が非常に重要である。なぜなら、社会構造の不公正が、政治問題化し、紛争が起こる場合が多々あるからである
もっとみる社会の「構造的暴力」の是正と「連帯」の必要性
田畑茂二郎によれば、今日においても、平和を守るためには、それぞれの国内において人権を尊重する体制が作られる必要があることは変わりはない。しかし、発展途上国、特に戦後植民地から独立した国において、顕著な社会の不公正や人びとの貧富の差、抑圧などを生む社会構造そのもののもつ歪みが、武力と異なる一種の暴力として人間を傷つけており、この社会的暴力を是正しないかぎり、人権の問題は解決されない。このような国々に
もっとみる死刑廃止を共に考える
死刑の犯罪抑止力の対象は、主として殺人を前提としているが、その殺人も具体的事例になると、どういう状況下で殺人を犯したかは複雑であり、単に人を殺せば死刑になるからと殺人を思い留められるような単純なものではない。また、死刑による強烈な影響を受けるのは、死刑囚の身内だけではない。被害者の家族・遺族も、必ずしも死刑を望んでいるとは限らず、心理的な影響を負いうる。さらに、死刑の法的手続に関わる人――検察官、
もっとみる国際人道法の履行確保
国際人道法の履行確保を考えてみます。伝統的戦争法では、履行確保の主な手段は、相互主義でした。相互主義とは、国が国際法上の義務を引き受けるのは、相手国も同じ義務を引き受けるだろうという期待に基づいており、相手国が義務を履行しない場合、こちらも履行しない、ということになります。
伝統的戦争法では、保護法益が個別国家の利益であったのに対し、国際人道法では、国際社会の一般的利益(個人の人権と人道的な待遇
人権の中核としての人種差別の禁止
基本的人権という観念は、一八世紀の啓蒙期自然法思想から導かれたものであって、国内における君主や貴族と一般庶民とが階級的に厳然と差別される中で、君主の絶対支配に抵抗し、平等な人間としての権利が主張された。田畑茂二郎によれば、平等の主張といっても、それは同質的な白人社会内での平等の主張であり、白人と他の人種との間の平等とか、人種間の差別の撤廃とかいった問題は、視野の外におかれた。
戦後、状況は大きく