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社会の「構造的暴力」の是正と「連帯」の必要性

田畑茂二郎によれば、今日においても、平和を守るためには、それぞれの国内において人権を尊重する体制が作られる必要があることは変わりはない。しかし、発展途上国、特に戦後植民地から独立した国において、顕著な社会の不公正や人びとの貧富の差、抑圧などを生む社会構造そのもののもつ歪みが、武力と異なる一種の暴力として人間を傷つけており、この社会的暴力を是正しないかぎり、人権の問題は解決されない。このような国々にとっては、人権問題は半永久化された貧困状態と切り離して考えられないのであって、人権という場合、なによりも強く求められるのは、人間が人間として生きる上での基本的ニーズに応え、また、それを可能とするような社会環境である。

ユネスコの「人権と平和」部会の部会長をしていたK・ヴァサクによれば、いまや「国際社会は、連帯の権利(droits de solidarite)である第三世代の人権に向ってすすむことが必要になっている」とされる。そうした権利に属するものとして、彼は、「発展の権利」、「健康で生態学的に調和のとれた環境についての権利」、「平和の権利」、「人類の共同遺産に関する所有権」をあげ、「社会のすべてのパートナー、つまり、個人、国家、その他の公私の団体や組織の努力の結集によってはじめて実現しうる」と述べた。

しかし、問題の視座は、社会の構造的暴力になければならず、人間が人間として生きる上での基本的ニーズに応えられる社会環境を、「社会のすべてのパートナー、つまり、個人、国家、その他の公私の団体や組織の努力の結集によって」実現すること、そのために、国際的な広いパースペクティブを持つことが求められているとはいえるだろう。また、これまでの人権は、今日の段階においても、また、ヨーロッパ的世界以外の地域においても、当然尊重されるべき性質の権利であることには、疑いの余地はなく、「世代」の観念によって、それらが軽視されることはあってはならない。

<参考文献>田畑茂二郎『国際化時代の人権問題』

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