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5つのピアス

会う人に度々言われること。
それは、「えー!?意外だけどピアスの穴めっちゃ沢山開いてるんですね。」である。

合計5つ、ピアスホールがある。
(タイトルの背景の写真ではピアスホールはよく見えないが、私の後ろ姿だ。今のプロフィール写真にもしている。)

何度もnoteでは触れているし、自分で言うのも大変おかしな話なのだが、どちらかというと私は周りから非常に真面目な性格として捉えられることが多く、
ピアスが5つも開いてる人のイメージではないようなのだ。

「ピアスが5つも開いてる人のイメージではないようなのだ。」と書いたが、実は私は自分自身でそのギャップにある種のこだわりを持っているようにも思える。

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学生時代、うまく周りと馴染めなかったという経験が重く私にのしかかっている。
それからというもの、周りの人が自分をどう思っているのか、どう自分が評価されているのかすごく気になって仕方なかった。

真面目であること
きちんとしていること
やるべきことを素早くこなすこと
社会や世間が求める学生や職業のイメージにピタリとハマるように振る舞い、そのような格好をすること
求められる像からブレず、きちんと型にはまっていること

そんなことばかりが私を縛り付けていた。

社会や世間だけでない。
一番身近な存在である親にも、良い子であることで自分の存在価値を認めてもらおうとしていた。

私は親の教育方針から私立の中学を受験した。
つまりは小学生の頃から、いわゆる受験を目指すための大手の塾に通い、毎日毎日平日も土日も遅くまで勉強し、学校では内申書の為に理不尽な小学校の先生の行動に対しても、「まっすぐ従います!」というような視線と態度で接し、授業もあり得ないほどに真面目に聞いていた。
本当はつまらない授業だったし、すごく毎日眠くて仕方なかったし、学校の授業なんて時間の無駄で意味ない、くらいに思っていたのだけれど。
全ては内申書のため、受験のため。
そして親の期待に応えられる子どもで在る為。

だから受験が終わり、希望する学校に合格してから、小学校では先生に対して静かに牙を剥いた。
今まで何を注意されてもそれが間違っている内容であろうが素直に従い、ニコニコと、YESしか言わなかった。
しかし、今回ばかりは毎度毎度明らかにおかしなことを言ってくる先生に向かい、精一杯睨みつけて、言われたことに対して返事もせず無視したのだった。

先生はさぞかし驚いたであろうと思う。
何があったのか?と。

それと同じように、高校生活ももうすぐ終わり、入る大学も決まった頃、同じような衝動に駆られた。
今度は先生に対してではない。自分に対して、である。
自分という存在を消しさり、抑え込んできたことに対する反動である。

もう大学も決まったし、あからさまに悪い素行をしない限りは大学入学が帳消しになったりはしないだろう。

そう思った私は、なんだか殻を被りたくなった。

学校では規則として、化粧をすることやピアスやイヤリングなどの装飾品をつけることは禁じられていた。
私は勿論きちんと守っていた。

イヤリングではダメ。
ピアスの穴を開けたい。

ピアスの方がイヤリングよりもかわいいアクセサリーが沢山売られていたというのもある。
でもきっと理由はそれだけではなかった。

真面目に、静かに、目立たず抑えてきた自分を開放したくなったのだ。
私は本当はそれだけの人間じゃない。
皆は、平面的に私を真面目で目立たない印象の薄い子だと思ってるかもしれないけど、違うんだ。

それで喫煙などの行為に走った子も知っている。
ただ私の場合はそうしたくはなかっただけだ。

最初は左の耳にだけ2つ。
両方の耳に1つずつだなんて、オシャレやファッションのことを最優先にしていたらそうしてたかもしれないが、
私は違う。
そういう意味で開けてるんじゃない。
少し尖った考えだった。

そのうち右に1つ。
続いて、さらに左と右に1つずつ。
計5つで終わった。

さらに耳の軟骨の方にまでよじ登って開けようとは思わなかった。
いわゆるパンクなファッションの人がされてるようなピアスの数にするつもりはなかった。

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それから、開けたピアスの穴5つが全て違う色や形のアクセサリーで飾られていたか、というと、そうではなかった。
せいぜい実際に飾る為に使ったのは3つくらいだった。
残りの2つは、放っておくと穴が閉じてしまうのでそうならないようにファーストピアス(普通につけるピアスよりは太くて穴を固定させる意味合いで開けた直後からしばらく装着するピアスのこと。)を付けていた。
社会に出てからは、相手に対してその職業の人が5つもピアスをつけていたら不快か不信感しか抱かないだろうと思い、仕事の時は外したりしていた。

良いのだ。
ここにピアスの穴がある、5つも、と思うだけで。
私は違う、真面目なだけなんかじゃない。
目立たなくひっそりと生きているだけの人間じゃない。

だから、「意外ですね」って言われること、そのギャップを却って生きる為の何らかの拠り所にしているように思う。

たかがピアスの穴。
でも私にとっては大事なもの。


ただいつかピアスの穴の数を振りかざして自分を奮い立たせなくてもいい、自己肯定感というものを自然に持てるようになったらと思う。
もっと大きくて揺るぎないもの。

その時にはきっともうピアスの穴には何も飾らず、いつのまにか閉じてしまっていることだろう。

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