つながる読書:『この夏の星を見る』
つながる読書、今回の本は辻村深月さんの『この夏の星を見る』。
前回紹介した『刺さる小説の技術』に、辻村さんの作品(スロウハイツの神様)が紹介されていたことからのつながりです。
前回はこちら↓
****************************
ものすごくきれいな、満天の星空を眺める夢を見た。
大きな星から小さな星までよく見える、嘘みたいにきれいな星空。
わぁ、すごい、と感激しているところで目が覚めた。
こんな夢を見たのは、確実に『この夏の星を見る』を読んだ影響だ。
本を読んでいる間、ずっと星や宇宙に思いを馳せていたから。
『この夏の星を見る』の舞台は、茨城、長崎、そして東京。それぞれの場所にある中学・高校に通う学生たちが、「スターキャッチコンテスト」をきっかけにつながり合う。
コロナ禍で、部活すら思うようにできない学生たちが、オンライン会議を駆使して、一緒に星を見る。
まさに「今」が切り取られた物語だ。
作中には、高校生たちが制限だらけの毎日への思いを吐露したり、そんな日々に何とか折り合いをつけようとするセリフがいくつも出てくる。
確かに、コロナが無かったら遠く離れた学生同士がつながることはなかったかもしれない。
けれど、コロナだからできなかったことも当然ある。
部活を制限されたり、修学旅行が中止になったり、友達と普通に会って話すことすらままならなかったり。
この作品の登場人物たちのように悔しい思いをした学生たちも、現実にはたくさんいたと思う。
奪われる一方のまま、黙っててなんかやらない。
こんな状況でも楽しんでやる。
そんな、彼ら彼女らなりの反撃の形が、この「スターキャッチコンテスト」なのかもしれないな、と思った。
作中で、宇宙飛行士の花井うみかが講演会で語った言葉は、そのまま著者から現実のコロナ禍の学生たちへのエールだと感じる。
制限され続けた日々の中でも、好きなことを極めていってほしい。学生に限らず、全ての人を励ましてくれそうな言葉だ。
コロナ前の生活が戻りつつある、今だからこそ読みたい一冊。
夏が終わる前にぜひ。
作中で、ISS(国際宇宙ステーション)を見るエピソードが出てくる。調べてみたら、たまたま夜7時ごろに見れそうだったので、久しぶりに夜空を眺めてみた。
時間になると、スーッと動く光の粒が夜空に現れた。すごい、ほんとうに見れた。肉眼でも見れるなんて知らなかった。
光の粒は一定の速さで動き続けて、いつしか空の向こうへと消えていった。
この記事が参加している募集
もし、記事を気に入ってくださったら、サポートいただけると嬉しいです。いただいたサポートは、本を買ったり、書くことを学んだりするために活用させていただきます。