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我が家にとうとう電気がつきました

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この度全盲夫婦の暮らす我が家に新しい家族が加わりましたので、合理的配慮として電気をつけることにいたしました。 同時に我が子との成長の記録もつけることにいたしました。 ごゆるりとお…
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#全盲夫婦

我々家族のベビーカーの使い方

我々家族のベビーカーの使い方

 我が家にベビーカーがやってきたのは、ひなちゃんが生れてから3ヶ月以上が経った頃だった。
そもそもベビーカーは必要なのか。それがまず我々が考えたことだった。
当たり前のことだが、ベビーカーは後ろから押すものである。普段白杖で前を確認しながら歩いている我々が、白杖の代わりにベビーカーを前に持って歩いたとしたら。考えるまでもない。
それではなぜ今回ベビーカーを検討したのか。
 普段我々が外出する際は、

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ひなちゃんからのクリスマスプレゼント

 ひなちゃんが生まれてからの3ヶ月は本当にあっという間だった。年の暮れに、今年も早かったなと思うのは毎度のことだが、9月からはそれまでの倍以上の早さで過ぎて行った気がする。
 この3ヶ月の間に、ひなちゃんはいろんなことができるようになった。生れた当初は首も座っておらず、手足をバタバタさせて泣く「生き物」という感じだったが、ようやく人間らしくなってきた。
首が座ったり目でものを追えるようになったりと

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もしひなちゃんが・・・

 ある日の夕食時の我々夫婦の会話。
僕 「もしひなちゃんに、(我々が視覚障害の両親であるということで)こんな家庭にどうして私を生んだんだって言われたらなんて答える?」
妻 「私たちが見えないっていうことで、いじめにあったりした時にってことだよね」
僕 「うん。
例えばそこでごめんって謝るのは違うと思うねんな。謝った瞬間に、ひなちゃん自身の存在を僕らが否定してしまうことになるから」
妻 「そうだね。

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どうする!沐浴

 沐浴!それは1日1回訪れる戦いの瞬間だ。
ぐにゅぐにゅと手足を動かし抵抗するひなちゃんの服を脱がせ、ベビーバスできれいに洗い、体を拭き、スキンケアをし、再度服を着せるミッションには丁寧さと手際の良さが求められる。
一たび鼻や口にシャワーのお湯が散ろうものなら、ひなちゃんは烈火のごとく怒りだし喚き散らす。体を洗うことに手間取れば冷えるようで、警報のようにまた叫び始める。
加えて浴室という環境が追い

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【コラム】 実用的かはさておき

【コラム】 実用的かはさておき

 点字版の母子手帳があるのをご存じだろうか。我々視覚障碍者でも読めるように、母子手帳の内容を点字化した冊子だ。かく言う私も役所で教えてもらうまでその存在を知らなかった。
 妻の出産からさかのぼること約9ヶ月前、役所に母子手帳をもらいに行くと、やたら分厚い冊子があることに気付いた。広辞苑ともいえそうな大きさのこの冊子こそが、点字版の母子手帳だ。夫婦ともに全盲の視覚障害であることを職員さんに伝えたとこ

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我が子に対して我々が最初にできること / はるか (後編)

(前編の記事はこちら)
 私たちの子供には、網膜芽細胞腫という目の病気を持って生まれる可能性があった。
遺伝しているかどうかは、生まれてからの遺伝子検査でわかる。ひなちゃんの遺伝子検査の結果が出たのは生れて1ヶ月後のことだった。
結果ひなちゃんには病気が遺伝しなかった。私は夫から報告を受けた瞬間、ただ安心した。少なくとも今後この子は検査や治療から生じる苦痛を経験しなくてよいという思いからの安堵だっ

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我が子に対して我々が最初にできること / ぐっち (後編)

 以前の記事にて、僕の視覚障害の病気が我が子に遺伝する可能性について書いた。
読者の方々の中には気にかけてくださっている方もおられるかと思うので、まず結果からお伝えしたい。
今回ひなちゃんには視覚障害の病気は遺伝しなかった。
この記事では、病気が遺伝しなくて良かったという単純な感想を伝えたいわけではない。
ひなちゃんの人生にとって、最初の大きな分岐点となった物語をぜひ最後まで読んでいただきたい。

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