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得たモノがなくなると執着が生まれる。すがり、醜くなるくらいなら貧相で可哀想と狭い世界に笑われても最初から持ちたくはない。

欲しいものを紹介しない
テレビショッピングが垂れ流される深夜。

良いことしか伝えない司会者

最近のドラマでは見かけなくなった
大げさなリアクションの女優

現役の時よりふっくらした元アイドルが
ここぞとばかりに買うなら今しかないと煽る。

不安を煽るのはいつの時代も簡単。
物はいいようだなと音量をさげようとしてふと、やめた。

やわらかく否定しても
きちんと私と約束をしても
簡単に忘れてしまうような相手だ。

そしてそれを咎められない弱さは
決して優しさではなく、ただの諦めでしかない。
関係の天秤はずっとアンバランスなのは
気づいていた。

ささやかな抵抗くらい
別に可愛いものだろう。

私の部屋で異質なタバコがまだ匂う。
狭いベッドに2人で居ても世界には独りしか
いないような錯覚に陥る。

【きみは私が眠れないことを知らない】

1人の孤独より2人の孤独のほうが
なかなか耐え難い。

隣の人間が役立たずな人形のように思えてきた。
なんとなく耳をあてて心音を確認する。

“…ちゃんと生きてる”

関係があるとはいえ他人の隣で
安心しきって眠り、穏やかなリズムを刻むこの人に呆れてしまう。

眠っている間に私に刺されるとか
殺されるとか考えないのだろうか。
睡眠中の命を私が握っていると言っても過言ではない。

…そう考えて少し嬉しくなる自分が気持ち悪い。
頭の中で馬乗りになって包丁を突き立てる想像まで出来るぞ。やらないけれど。

私自身、他人がいるとどうしても眠れない。
長い付き合いの友人さえも駄目だったから
安心しきって爆睡出来る人が尚更恨めしい。

繊細とか性格ではない、今までの経験が
原因なのはもうわかっている。
私にとって眠る場所、家が安心できる場所ではなかったからだ。

帰宅したバケモノに唐突に叩き起こされる。
日によって暴力のやり方も時間も全く違うので
いつも寝たフリをしてびくびくしていた。

起こされた後は深夜に何時間も
正座を強要されひたすら怒号や説教。
途中で眠ったら顔以外を殴られ蹴られる。

バケモノの気がすむまで理不尽な時間が続く。
睡眠剥奪が拷問とされるのはよく理解できる、
あれはきついんだ。

おかげで不眠症は小学生の頃からあった。
就寝中でも親に殺されそうになるのだから
他人と一緒になんか眠れる訳がない。

自分より大きく、力がある相手を殺るなら
眠ってる時が狙い目。
学生の頃、殺される前に殺そうと酒の力で爆睡している親に包丁を向けた。本気だった。

失敗したけどやってもやらなくても
結果は変わらなかっただろう。

1人暮らをしてから初めて誰にも
邪魔されずに眠れた時はひどく感動したが
不安なことや心身がぶれるとすぐ眠れなくなるのは現在も改善できないまま。

他人の前で無防備に眠れることが普通のことに
なっている隣の人間は安心安全な家庭で
過ごしてきた側の人間で私とは違う。

虐待、暴力、暴言は終わっても終わりがない。
その後の人生で纏わりついてくる。
所々の記憶がとんでいても映像が頭の中で
再生されることは多々あり

生きながらじわじわと続く地獄。

でもそんな環境だったことはいちいち他人に
話す気にはならない。
話したところで過去はどうにもならないし。


冬の朝は暗い。
でも、朝はもうきている。
目が覚めたらもう、いらないと伝えよう。
役立たずな人形なんていてもいなくても同じ。

人肌を恋しくなるより、私は
安全な夜に安心して眠りたい。

それだけのこと。