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白黒の世界 携帯小説5

第五話 喪失

(全12話)

登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):新入社員
鈴川 将太(すずかわ しょうた):スタッフ

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あの日から俺たちの関係は
不思議な方向へ向かった

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「店長飲み過ぎちゃいました。迎えにきてほしいです」


「しょうがねぇなぁ」

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「店長ここ遊びに行きたいです!」


「面白そうだな今度行こうぜ」

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「店長ここのタピオカ美味しいんですよ?」

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「店長あの映画見に行きましょう!」

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俺たちは俺たちなりのルールを決めた上で
彼氏と彼女ではなく


お互いが楽しく生きていけるような関係を、
築いていた気がしていた。


最後の最後までずっと一緒にいて
そして美容技術も教え続けた


とある練習帰りの話だ。


「私花火、大好きなんです。美容師になると、なかなか平日にやってる花火大会ないんですよ。どこかいいとこないですか?」


「前も紅音ちゃん言ってたから俺調べたんだよね、そしたら熱海で7月末にやってるとこあったんだよ、おれがRize退社する最後だし、一緒に行こうか?車でさ。でも、この時間からの花火だと帰りめっちゃ大変だからさ。。。泊まりとか言ったら嫌がる?あっほらなんもしないからさ」


下心はこれっぽっちもなかった。
ただただ一緒にいれる
幸せを噛みしめていた


「んーん。店長のこと信じます。最後だし行きましょう楽しみや〜」


とびっきりの笑顔で承諾を得た


「7月30.31は熱海花火大会だ!Rize最後の集大成だ!お別れの最後だな」


「本当に辞めちゃうんですね。私頑張ります。いつか、店舗展開した時は私を雇ってくださいね」


「当たり前だろ?スタイリストになるの待ってる。それまでRizeで頑張れな!いつか俺の髪の毛切ってな!」


「次の店長とうまくやっていけるかが不安です。。。」


「気にすることないさ、他人は関係ないから自分が何をやりたいか、自分が何をしていくかなだけだから!成長してな」


「今までありがとうございました。それとあの時はひどいことしてすいませんでした。」


「せやな、あれはあかん面倒な不祥事になってしもうたやんけ」


「店長の関西弁は嘘っぱちです!なんかちがうんですよね」


「そうか?」


こうやって笑い合えるのもあと少しだった。


Rize最終日


鈴川「店長おつかれさまでしたぁ!お世話になりました!涙は出ません!笑」


「なんやねん最後くらい感動で泣いたりせぇよ」


鈴川「店長紅音ちゃんの関西弁うつってますねー2人の関係どうなったんですかー?って聞いちゃダメですか?笑」


「最初から最後まで上司と部下だよ。何にも変わらないさ」


鈴川「あっ、紅音ちゃんきたからこの話はやめときますね」


「おう、今日1日よろしくな」


鈴川には迷惑をかけた


美容師としての店長はできたのかもしれない。でも、管理の面では最低の店長だったと思う。好きになってはいけない人を好きになった。それでもついてきてくれた仲間に感謝してる。


「店長鈴川さんと何を話してたんですかー?それはそうと明日何時出発しますか?」


「今までありがとなって話だよ!明日は早く行こう!できたら熱海でうまいもの食べようよ!」


「いいですね!私朝弱いんで起きれるかなぁ」


「ついたら電話するから携帯横に置いとけよ」


「はーい」


いったいこの関係はなんなんだろう?という
自問自答を繰り返していた。


そこに答えなどなかったのだけど

今が良ければそれでいいという
若者の流れをそのまま感じていた


ただ一つ一つが、思い出になっていく。


手から離れていく


喪失感に似ている感覚


彼女もきっと同じように
感じてくれているのだろうか?


寂しいと。。。


熱海旅行当日


「おーい、起きろ〜」

携帯を鳴らし始めて1分が経つ。
2回目をかけた瞬間に切られた

これはあるあるでなかろうか。


すぐさま、連絡がきた

「すいません今から準備します」

彼女らしいといえば彼女らしい目覚めだ


車の中では出会いからあの事件のこと
そしてこれからのいろんな話をした。


「好きになるつもりはなかったんだよなぁ。やっぱ恋は落ちるもんなんだなぁ」


「なんですか?それ」


「いや、俺の好きな有名人がさ恋はするもんやない落ちるもんや!って言ってたから本当だなぁと思って」


「きっと、森さんにはいい人現れますよ」


「ん?今なんて呼んだ?」


「森さん?」


「だってもう店長じゃないじゃないですかー」


「そうだけど森のくまさんみたいやな」


「森さん太ってきてるしくまさんでちょうどいいんじゃないですかー?笑」


「おまえいつも一言多い 笑」


女性の私よりいい人いますよ!
○○さんだったらいい人見つかりますよ!

は気がないことを意味しているのだが
気にしていては負けだ


「俺はさやっぱ紅音ちゃんがいいなと思ってるよ。気持ちは変わらなかった、ずっと」


「この話はやめましょうー楽しくいきたいです」


「そうだな」


もう、焦ることもないし、なるようにしかならないと思った。


お昼に海鮮丼、夜は宿で豪華な食事をとった。


「さぁいよいよ花火だな!楽しみだ」


「海で見れるらしいですよ!」


「大きめのレジャーシート買ったからさ、それ敷いてビールでも買って寝ながら見ようや」


「最高ですね!」


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久しぶりに見た花火だった


打ち上がっては

弾けて

綺麗な光を放つ


きっと人間も同じだ


ゆらゆら動きながら

真っ直ぐ上に向かって進む
迷いながら苦しみながら

そしてある一定のところで爆発する
また新たな世界を探すために
散らばるのかもしれない
それぞれが輝きながら


「綺麗だったな」

「はい」

「明後日から本当に頑張れよ」

「森さんいなくて頑張れるか不安です」

「何言ってんだよ 笑 あの時俺を困らせて早く退社させようとしたくせに 笑」

「あのときは。よくわかってませんでした」


「まぁでも俺はどこに行ってもおまえの味方だから、どんなにまわりが敵になってもちゃんと向き合ってやるから、なんかあったら言ってこいよ、俺も頑張るからさ」


「森さんの独立楽しみにしてます!また一緒にいつかお仕事できたらいいですね、宿に戻りましょ」


「そうだな、今日のことはなんか嫌なことあった時とか思い出そうな」


恋が終わろうとしているのか、
始まろうとしているのか、

ただただ幸せな時間であることは
確かだった。

宿に戻ると疲れていたのか
彼女はすぐに寝てしまった。

掛け布団を肩までかけて、
少し離れた同じベッドのはじとはじで寝た

熱海旅行の次の日


俺は残った荷物をまとめる為
サプライズもかねてRizeに様子を伺いに行った


鈴川「あれ!店長、鳥海さんが出勤してないんです!何か知りませんか?」


「えっ?(昨日まで一緒にいたのに)」


「わかった、ちょっと連絡してみるよ」


どうした?今日出勤してないみたいだけど、、、とメッセージを送った


すると


「森さん。私森さんおらなあかんみたいです。何もやる気が起きなくて一緒に仕事がしたいです。森さん。。。」

失って初めて気づくことがある

大切なことほど

ガラスのように壊れやすくもろいもの

そして割れた破片で

傷ついてしまう

続く


次回予告
紅音の心は変わったのか?想いが伝わったのか?龍牙の出店準備が始まる中、揺れる恋心。
夢を叶えた先に待っている運命は変えられない

次回 運命

https://note.mu/blancetnoir/n/n36495a9bd69a

見逃し配信中

1話 【希望】

https://note.mu/blancetnoir/n/ncda230a65bf7

2話【焦心】

https://note.mu/blancetnoir/n/n076055351c34

3話【告白】

https://note.mu/blancetnoir/n/ncbabae58457c

4話【迷惑】

https://note.mu/blancetnoir/n/nf19e9ec47333


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