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白黒の世界 携帯小説4

第四話 迷惑

(全12話)

登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):新入社員
鈴川 将太(すずかわ しょうた):スタッフ
古澤 公貴(ふるさわ こうき):他店店長
石井 夏子(いしい なつこ):女上司

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京「なぁ、本当に大丈夫なんだよな?相談を受けた古澤がおまえに電話するっていってたから連絡くるかもな」

古澤は俺の後輩にあたる店長だ

そのメッセージを読んでる瞬間だった

古澤からラインが届いた。


「森さん仕事の相談があるんで電話くれませんか?」


すぐさま折り返し電話をかけた。


「おぉ、古澤元気かどうした?」


「どうしたも、こうしたもないっすよ、なにしてんすかあんた」


「はっ?」


「おたくの新人嫌がってますよ?何してんすか先輩、自分の店の管理もできないんですか?」


「なんでおまえにそんなこといわれなきゃいけないんだ?」


「あの子から言ってきたんですよ、今日髪を切りに来てくれてその時に私会社辞めたいですって、むしろ今いるんで変わりましょうか?」


「紅音ちゃんといるのか?いるんなら変わってくれ」


「あの、店長私お店辞めたいです。。。」


「なんでだよ?」


「いや、わたしそういうつもりじゃないんで、店長とはやっていけないと思いました。仕事は仕事でみてほしいというか。」


確かに好きになってしまった自分が悪いのは明白だった。


「わかった。じゃあ俺がいなくなればいいんだな。退社時期をはやめてもらうから待ってろ、古澤に変われ」


「森さん、こんなこと言いたかないですけど、店の子に手出したらダメですよわかってます?」


「あぁわかってるよ、でもな好きになってしまった気持ちはおまえにはわからないよな」


「何開き直ってんすか?本社に言いますね。とりあえず森さんには悪いっすけど」


そのとき、俺は何が起こっているのかわからなくなっていたのかもしれない。本社に言われることは別に構わない。ただただやるせない気持ちをぶつけたかった。


「あーだ、こーだうっせーんだよ!人を好きになって何が悪いんだ、テメェには関係ねぇだろ、自分の不始末ぐらい自分でケツふくよ!黙ってろボケ!今から本社に電話すっからよ」


「あっいや、森さん冷静になってくだ、、、」


俺は古澤が喋ってるのをさえぎるかのように
電話を切った。


気性の荒い自分が出てきていた。

そして気がつけば、

すかさず女上司石井さんへ電話をした。


「あっもしもし石井さん?俺ですけど今大丈夫ですか?」


「どうしたの?こんな時間に」


「すいません。夜分遅くに俺の噂誰かから聞いてますか?」


「俺の噂?なんの話?」


「そしたら、いずれわかると思うんですが俺の口から言わせてください。今年の新人の鳥海のことが好きになりました。」


「はぁぁ?」


「そういう反応になりますよね。それを理由に迷惑だということで鳥海が辞めたいと古澤に相談したそうです。」


「それで?」


「鳥海が辞めたい理由は俺なので、それならば俺はどっちみち独立の為に早く辞める身です。だから退社時期を早めてくれませんか?」


「ちょっと待ってちょっと待って森店長。話の展開が早すぎて私にはよくわからないわ」


「とにかく俺は明日辞めるんで!お世話になりました!」


「ちょっとまっ」


喋りかけていたが、一方的に切っていた。

今の俺は何も信じられず

何も考えられない子供だった。


人の気持ちに正しいとか間違っているとかあるのだろうか?


取り乱した自分はカッコ悪いのかもしれない

でもこれがありのままの姿だ。

だったらカッコ悪くてもいいのかもしれない

誰になんと言われようと

紅音ちゃんを好きになった自分は大切にしたい

1番気を使っていた自分が

1番彼女を狂わせていたなんて。


紅音ちゃんが悪いわけではない。


古澤も石井さんも、、、
会社が悪いわけでもない

悪いのは俺自身だ。


それに気づいていたからこそ、
言葉で自分をかばうしかできなかった。

明日俺は退社する
そう心に決めた。。。


一睡もできず次の日は出勤をした。
紅音ちゃんが気まずくなり
こないのかもしれないと思っていたのだが、
普通に出社をした


そして終始無言の時が流れた


鈴川「あのふたりなんかおかしくないか?」


そして、朝礼を始めて自分の挨拶をした。


「皆に今日は謝らなければいけないことがある。今日で俺は退社する。指名の人を終えたら荷物をまとめて帰る。申し訳ないがあとはよろしく頼む。以上。」


皆んな目が点になっていた。

鈴川「何言ってんすか?なんでなんすか?」

すると店の電話が鳴った

女上司からだった。

石井「あっおはよう、少し冷静になった?昨日のことは社長に報告しました。とりあえず森店長冷静になりましょう。第三者の私を交えて話をしたいので、今日の5時に鳥海さんと三人でミーティングしましょう!いいですね?」


「はい、わかりました」


「じゃ、鳥海さんに変わって。」


鳥海「はい、お電話変わりました鳥海です」


「今日の5時に話を聞くから、その時に色々聞かせてね」


「はい、わかりました」


5時までの間、俺たちは仕事の話以外は何もしなかった。目を合わせることもなければ、笑いあうこともなかった。


5時になりまずは自分が先に女上司に呼び出された

近くのファミレスに場所を決め事情聴取を受けた。


「森店長どういうことなの?」


「どういうことなの?ってこういうことです。全責任は僕にあるので早期退職をお願いします。彼女は悪くないですし、不祥事を起こした責任は僕にあります。彼女は今のまま働かせてあげてください。僕がいなくなれば済む話なので」


「会社としては、円満退社を望んでるし7末まではしっかり働いてほしいと思ってるの、鳥海さんとはどんな関係なの?」


「上司と部下であることはもちろんですが、毎日食事に行き、休みも合わせて出かける予定を立てたりした仲でした。ただ彼氏とかではありません。」


「そうだったのね。どちらにしても会社は社内恋愛を禁止してるのは知ってるわよね?」


「知ってますが、だからなんなんでしょう?僕はただただ鳥海紅音さんを好きになりました。だからまっすぐに退社をする前に話さなきゃと伝えたまでです。人を好きになることはそんなにいけないことでしょうか?」


「いや、そんなことないけど相手が迷惑だってことをしてはいけないんじゃないかな?その辺しっかり聞いてみましょうか?」


俺の頭の中は意味がわからなかった。


好きになったら迷惑???
じゃあ相思相愛にならなければ、

ストーカーのようなものなのか?

立場が違うからだと言われたらそれまでだ
とてつもなくやるせない気持ちになった。


「じゃ、鳥海さん呼んで聞いてみましょうか?ちょっと呼んでくれない?」


彼女の携帯に電話をかけた。


「石井さんが呼んでる。駅前のファミレスで待ってるから気をつけてきて」


5分後彼女が到着した。


石井「話はだいたい森店長から聞きました。鳥海さんが言う迷惑というのはどういうことなの?」


「私は店長のことは好きですが、恋愛感情としてではなく上司として美容師として好きでした。その壁を超えて、まさか店長が私を好きになってくれてるとは思っていなくて、古澤店長に相談したときについ辞めたいと言ってしまいました。本当は辞めたくありません。ただ好意をもたれることは迷惑だと伝えました。」


「なるほど、森店長諦められるかしら?」


「重々承知しております。だから僕は早期退職を希望しております。そこはわかっていただけないでしょうか?」


「会社としてはあと数ヶ月うまく2人にやってもらいたいというのが、お願いになるんですが?どうなんでしょう?鳥海さん」


「先程伝えた通り、私は古澤店長には辞めたいと言いましたが、そうは思ってないです。池袋店の先輩たちも好きですし、きっと私はあそこじゃなきゃやっていけないと思ってます。だから、店長に気持ち切り替えてほしいなと思ってます。」


「ということみたいなんだけど、森店長どうかな?」


「僕はきっと退社するまで鳥海さんを好きかもしれません。忘れる努力はします。それでいいですか?」


石井「じゃあこうしましょう。お互い仕事以外でのラインは禁止。夜も一緒に帰ったりご飯を食べに行くのも禁止。もちろん休日に遊びに行くのもないとは思いますが、だめです。それなら大丈夫じゃないですか?」


森/鳥海「わかりました」


なんだかんだ俺はRize池袋店で7月末まで働くことになった。


その帰り道だった。


「紅音ちゃん俺が悪かった。」


「いえ、店長私が悪いんです。まさかこんな大事になるなんて思ってなかったんで、それに今日店長の様子がいつもと違って嫌でした。」


「そりゃそうだよ。気まずいわ」


「ですよね?ほんますいません」


「でも忘れる努力するわ!ただ、残りの時間ちゃんと見てほしい!って気持ちはある。だから、もし何かが変わるならしっかり向き合ってくれないかな。」


「わかりました、私こそ迷惑かけてすみませんでした。」


「まぁいいってことよ。それはいいとして、腹減ってねーか?」


「さっき禁止って言われたばっかじゃないですか!あかん。。。でも、お腹空きましたぁ。。。」


「じゃあ行こう!ルールなんか2人で決めようぜ、もう紅音ちゃんの気持ちはわかったからさ!」


「はい!」


俺たちは純粋な上司と部下に戻った。

自分の気持ちを抑えるのが辛かったけど

それでも。まだ一緒にいれる

そう思った。


退社まであと1ヶ月。

俺たちのルールは上司と部下から

同じ生活をするものとして変わっていった。

俗に言う

友達以上恋人未満

友達ではないのはわかっている

でも大切な人同士になれていたとは思う。


彼女にとって俺がいなくなる現実が

迫っている何かが変わればいい

そう密かな期待を抱いていた


続く

次回予告
残された期間はあと1ヶ月。ふたりの生活はどう変わり、どんな結末へ向かっているのか。夢を諦めるのか愛に溺れるのか。失って初めて気づく気持ちの変化。

次回 喪失

https://note.mu/blancetnoir/n/n9746bfc3f368

見逃し配信中

1話 【希望】

https://note.mu/blancetnoir/n/ncda230a65bf7

2話【焦心】

https://note.mu/blancetnoir/n/n076055351c34

3話【告白】

https://note.mu/blancetnoir/n/ncbabae58457c


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