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白黒の世界 携帯小説6

第六話 運命

(全12話)

登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):新入社員

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あれからたくさんのやりとりをした

だけど彼女がRizeに出勤することはなかった。


その間
俺が彼女に伝えた言葉


俺は俺の道を行く
夢は待ってたって、
つかめないから俺は行くよ


自分から変えようとしなければ
叶えられないんだ


夢は逃げない
逃げているのはいつも自分自身なんだ


だから俺は覚悟を決めてRizeを退社した
だからここには残れない

ごめんな


支えを見失った彼女は

愛からも夢からも
逃げている


助けを求めている


だからこそ

自分は彼女の成長の為に
しっかりと向き合う

そう決めた



「森さんがおらなあかんみたいです」



その言葉はすごく嬉しかった


「私、森さんが働いていいって言ってくれるなら独立手伝ってもいいですか?」


願ってもない言葉だった


その数日後
紅音ちゃんもRizeを退職した。


俺の夢は俺だけの夢ではなくなった


嬉しかった反面
改めて覚悟を決めることにもなる

恋人同士ではない

それでも龍牙にとって

紅音の人生を預かる関係になる。


俺は気合いを入れて初出店にのぞんだ。


叶えたい夢は、自分だけの夢じゃない


2人が幸せになるための夢だ


俺は不動産に、銀行に
たくさんの取引会社を渡り歩いた。


「森さんは私の命の恩人だと思ってます、ここまで大切にしてもらえて、ちゃんと恩返ししなきゃダメやと思ってます。何から何までありがとうございます」


でも付き合えていない事実がそこにはあった


彼女は会社を退職したあとは
俺の出店する近くに引っ越しをした


紅音ちゃんのお父様とも話をして
今までもこれからも
全責任は自分が取るので安心して頂けますか?


と家族でお付き合いできる仲になった。


そして引っ越しが終わり

これから頑張って行こうな!と


新しい彼女の新居で初めて手を繋いだ。


それは握手という名の

ごく普通のスキンシップだ

それでも俺にとっては嬉しかったんだ。


「森さんもう手、はなして大丈夫ですよ」


初めて繋いだ手は暖かく
心を満たしてくれた


【俺はどんな形であれ、彼女を大切にする】

そう決めた

➖➖➖➖➖
日記に書かれていたのはここまでだった。

最後の1Pは彼女と繋がれた時間で

終わっていた
➖➖➖➖➖

とある日

彼らは些細なことで喧嘩をした

他愛もない

理由にするほどのことでもない喧嘩



「もうひとりにさせてくれませんか?ちゃんと考えます」


「わかった。じゃあな。」


それが最後の言葉になることを
2人は知らなかった


すでに時刻は夜中2時を超えていた


帰宅途中


バイクの明かりが照らすその先から
さらに明るい光が龍牙を包みこんだ。


ファーン!!


大きなクラクションと共にバイクが宙を舞った

対向車のトラックはガードレールにぶつかり、

龍牙は血だらけのまま

道で倒れていた


夜中2時の道路では
誰かが通ることもなかった

トラック運転手の居眠り運転だった。



振り絞った力で、


あ、、、か、、、ね、、、ちゃん幸せに、、、と


携帯にダイイングメッセージをいれていた




救急車が龍牙を連れ出したのは
事故から2時間後だった。


運命とは皮肉なものだ。


夢はこんな形で崩れ
愛を感じることもなく


龍牙は誰に看取られることもなく


息を引き取った。。。


数時間後、、、

龍牙の家族から、鳥海紅音に連絡がいった。


「紅音さんですか?冷静に聞いてくださいね。龍牙が、今日の明朝、帰らぬ人となりました。龍牙の携帯に、あかねちゃん幸せに、、、と書かれていたので、携帯のやりとりからみて、鳥海さんかなと思って、、、」


いろいろと話していたが
何も頭に入らず、真っ白な世界を
紅音は体験した。



なんで、
最後あんなに冷たくしてしまったんだろう。


なんで、、
喧嘩なんてしちゃったんだろう


なんで、、、
会いたくても、もう会えないの?


家族「、、、もしよかったら最後に会いに来てくれないかしら?顔見てあげてほしい」


紅音「わかりました。今行きます!」


病院につくと龍牙はにこっと
笑ってるように見えた


いつも私の前では無理をしてでも
笑っていてくれたからだ


私はもう笑えない。


あのとき、繋いだ手の暖かさは
もう彼にはなかった。

「この本なんだけど、龍牙がずっと肌身離さず持ってたみたいなの、これはあなたが持っているべきだわ」


そこには紅音との出会いから

手を繋いだ日までの日記がびっしり書かれていた。


「あの子真面目だから、こういうとこは几帳面なのよね、読ませてもらったわ本当にあなたのことが好きだったようね」


「すいません、わたし、答えることができなくて。。。」


「いいのよ、きっとあの子もあなたが笑ってる顔が好きだったはずだから、これから笑顔で頑張ることがあの子が望む幸せだと思うの」


お互い辛いはずなのに
無理に顔を作りながら

紅音達は会話をしていた


龍牙はもういない


わたしはわたしの道を行く
森さんが私を愛してくれた気持ちを胸に
幸せになるんだ。


残された日記を読みながら


涙が止まらなかった


これまでのことや、これからのこと
一字一句すべてに


私を思いやる気持ちが書いてある


大切な人はもういない。。。


続く


次回予告
龍牙の想いは叶うことがなかった。紅音は本当の愛とは何かを考え始める。そして夢に向かって一歩ずつ歩き始める。龍牙は心の中で生きている

次回 黄泉

https://note.mu/blancetnoir/n/na761cf9a5c05

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1話 【希望】

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2話【焦心】

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