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トラウマを語るひと

※性的トラウマのある方は、お読みにならない方がいいと思います。
それでも…と思える方のみよろしくお願いします。

夏になると、蘇ってくる光景があるんです…
悪夢、という言葉では片づけられないですね。
ですから、夏は嫌いです。
夏の空も、白い入道雲もダメですね。

わたしが5歳か6歳の頃だったと思います。
祖母の家に遊びに行くため、ひとりで電車に乗っていました。
夏でしたから、白い半袖のワンピースを着ていました。
ドアの近くに立ち、外に広がる海を見ていたんです。
いい天気で、空はとても青くて、入道雲がむくむくとわいていました。

ふと気がつくと、若いお兄さんがわたしの側に立っていました。
辺りをキョロキョロ見回していて、何となく落ち着かない様子です。
しばらくすると、そのお兄さんがわたしの腕を掴んできました。
びっくりしましたよ。何が起きたか、全く理解できなかったんですから。
子ども心に何か嫌な予感がして、車両にいる他の大人に目を向けました。
すると、なぜか大人たちが下を向いたりそっぽを向いたりし始めたのです。
何か、関わり合いになることを避けているように感じられました。
怖かったです。助けて下さい、という言葉は喉の奥に張りついて口にできませんでした。
そしてお兄さんは、わたしを車両の連結部分に連れて行ったのです。

ドアを閉めたことを確認すると、お兄さんはおもむろに履いていたパンツのファスナーを下ろし始めました。
少し緩めのパンツでしたが、ファスナーの辺りが不自然に盛り上がっていることはわたしにもはっきりとわかりました。
そして何かを取り出しました。
わたしの手にそれを握らせると、わたしの手に自分の手を重ねて動かし始めたのです。見た目も感触も気持ち悪くて、吐きそうでした。
どれくらい擦らされていたのでしょう。
お兄さんの息が荒くなります。喉ぼとけがゴクン、と動くのが見えました。
お兄さんは手を離すと、わたしの頭を押さえてそれを咥えさせました。
頭を押さえられてしまい、わたしには抗うすべがありませんでした。
お兄さんが腰を動かし始めました。
生ぬるい得体のしれないものが唇に触れています。
片手でわたしの平たい胸をまさぐりながら、お兄さんは小さく呻きました。
舌の上に、変な味のするぬるい液体が注ぎ込まれました。
吐き出そうとするのですが、頭は押さえつけられたままです。
気持ち悪い。涙が噴き出してきました。誰か助けて。
その時、「飲みこめ」という声が降ってきました。
お兄さんは真っ赤な鬼のような顔をして、わたしの鼻を手でふさぎました。
息ができない。苦しい。怖い。
わたしは口の中の液体を飲みこんでしまいました。
胃の方へ、生臭さが下りてゆくのがわかります。
お兄さんは咥えさせていたものを引き抜きました。
それをしまい込んでファスナーを上げると、わたしの唇に自分の唇を合わせてきました。ぬるぬるとしたなめくじのような感触がします。
舌をこじ入れ、わたしの口の中を舐め回しました。
気持ち悪い。吐きそうになり、また涙が溢れてきました。
そしてわたしの下着に手を入れ、指でいろいろなところを触りました。
気持ち悪さと痛みと異物感に、わたしはえずきました。
どれくらいの時間が経ったのか、わかりません。
お兄さんはそれらを終えると、また鬼のような顔をして言いました。

「誰かに言ったら殺すぞ」

そうして、連結部分にわたしを残して立ち去りました。

わたしは、その場にうずくまって胃液を吐き続けました。
涙と鼻水がとめどなく溢れてきます。
とにかく身体じゅうが気持ち悪かった。
何が起きたのか全く分からず、ただ何か汚いものに包まれた感じだけが鮮明に残っていました。
そうしているうちに下りないといけない駅が近づいてきました。
重いドアを開け、車両に戻りました。ハンカチで顔をごしごしと拭きました。
そんなわたしに、さっきはそっぽを向いていた大人が声をかけてきました。
「どうしたの?大丈夫?」
「…はい」
わたしには、なぜ今声をかけてくるのか分かりませんでした。
そして何よりも、あの顔が、声が、頭の中を占領していたので何も言えませんでした。

「誰かに言ったら、殺すぞ」

ふと、車窓から外を見ました。
いい天気で、空はとても青くて、入道雲がむくむくとわいていました。

そうですね。毎年夏になると気持ちがふさぎ込みます。
年頃になって、その行為の意味を知った時の衝撃は大きかったですね。
それ以来若い男性が怖くなりました。父とお風呂に入るのも嫌でした。
異性との交際ですか?
「普通」に見せかけるために、誰かとつき合わなければいけないという強迫観念は常にありました。
でもやはり、恐怖心が上回ってしまうんです。
LINEのやり取りや食事に行くことは平気なのですが、その先へはどうしても進めません。当然うまくいくわけないですよね。
結婚するつもりはありません。できないですよ。
「穢れ」を抱えたまま生きていくしかないんです。
ここまで聞いて下さって、ありがとうございました。










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