見出し画像

人や組織の成長のカギを握る「人事データ」との向き合い方

こんにちは。WorkTech研究所の友部です。

人事領域のより広いテーマを研究開発対象として扱うため、この度「ビズリーチ WorkTech 研究所」と名称変更いたしました。人事領域におけるデータ活用を中心に、様々な話題についてこちらのnoteで触れていこうと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

装い新たにした今回、改めてこれからの人事データとの向き合い方について書こうと思います。これまでのnoteでも書いてきましたが、人や組織の成長に欠かせないのが人事データです。ここでいう「人事データ」とは、人事が扱うデータだけでなく、働く人を取り巻くすべてのデータを含んでいます。人事や経営の方はもちろん、働く人自身もデータにどう向き合うかについて考えていただけると幸いです。

人事データとの向き合い方のポイント

人事データとの向き合い方として重要なポイントは、大きく3つあります。

  • 「人事データ」だけでなく、人の感覚も大事

  • 「人事データ」は人事が業務で使うデータだけではない

  • 「人事データ」を集めるには、働く人の自分ごとにすることが重要

「人事データ」という言葉から、いろんな先入観が生まれがちです。例えば、人事データが完璧に揃えば人や組織のことを理解できると思ってしまったり、人事業務で扱うデータのみに固執してしまうといったこともあります。また、人事データをなかなか集められないなどの悩みもあるかと思います。

こういった先入観や悩みを解消するために、どのように人事データに向き合うのか、それぞれのポイントに沿って解説していきます。

「人事データ」だけでなく、人の感覚も大事

まず最初のポイントは、「人事データ」だけでなく、人の感覚も大事にすることです。特に、人や組織の成長の場面においては、人の感覚と人事データをうまく組み合わせて意思決定をするべきだと考えています。

データだけで人や組織の意思決定をすることは危険

人事データを活用する場面では、どうしてもデータによって判断を委ねがちです。しかし、現時点ではデータだけで人事の意思決定をすることは非常に危険だと考えています。

そもそも、人や組織というものには不確定要素や不明点が非常に多いです。特に感情や価値観など、データ化以前に言語化することすら難しいものもあります。現在人事データとして扱える数値データや文字データなどは、人や組織を表すもののごく一部に過ぎず、すべてを表現できているわけではありません。

例えば、コンディションサーベイを導入することで従業員のコンディションデータを収集・蓄積することはできますが、それだけで従業員の状態を完璧に把握できるわけではありません。

人の経験や勘だけでも問題はある

従業員のコンディションを把握する、という観点では人事やマネージャーが直接従業員の様子を見たり、面談することで把握するケースがまだまだ多いです。人や組織の成長の場面では、まだまだ人の経験や勘に頼らざるを得ない状況が続いています。

人間の情報収集能力は優れており、(現時点では)機械では集められない情報を自然と収集します。主に視覚や聴覚を中心に情報収集しますが、時にはもっと感覚的なもので人の状態を把握できることもあります。この蓄積された情報は言語化できず再現性がないこともありますが、その情報に基づき直感で確かな意思決定ができることもあります。

これが、人事やマネージャーの「経験」や「勘」と呼ばれるものだと思っています。

とはいえ、人間の経験や勘でも意思決定を間違うことは多々あります。近年では働く人の価値観が多様化し、働き方に急激な変化が起こっています。このような状況下では、これまで積み上げてきた経験が変化に対応できず、柔軟な意思決定ができないという問題も起こり得ます。

人間の意思決定を、データでサポートしていく

現状の最適解としては、人や組織の成長の場面において、人の感覚と人事データをうまく組み合わせて意思決定をするべきだと考えています。

例えば、従業員のコンディション把握の場合では、より確かなコンディションを把握するために、面談などで補足情報を集め、サーベイデータと組み合わせることことが有効です。

将来的には、これまで経験や勘と呼ばれていた言語化できないものも、人事データの普及によって再現性が高まっていく可能性があります。将来的には意思決定の場面において、データの比重がもっと高まるかもしれません。

「人事データ」は人事が業務で使うデータだけではない

次のポイントは、「人事データ」は人事業務で使うデータだけに限らず、もっと広く存在するということです。

これまでの人事データ活用の背景には、コーポレート領域のDX推進がありました。この文脈では、業務の効率化がデータ活用の主な目的とされてきました。特に、採用業務や労務業務において、HR Techツールが広く活用されています。そのため、「人事データ」といえば、人事が業務で使うデータを思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、人や組織の成長の文脈においては、これらのデータだけでは不十分です。そこで注目されるのがWorkTechです。

WorkTechはワークプレイスやオフィスファシリティについて話されることもありますが、ここでは「働く人の活躍を支えるテクノロジー」と定義します。WorkTechでは、働く人のパフォーマンスを上げると同時に、人や組織の持続的な成長も目的としています。基本の考え方として、「働く人のフィジカル・メンタル・ソーシャルの幸せを基に、パフォーマンスを高めていく」ことが重要となります。

この定義では、関わるのは働く人の周りにあるすべてのものとなります。働くオフィスの環境であったり、業務で扱う機材やPCのツールであったり、働く人が所属する組織や人間関係といったものがテクノロジーの対象となります。

例えば、メールやチャットツールなどのコミュニケーションツールから従業員同士の関係性を可視化したり、オフィス設備にセンサーを搭載してデータを取得することも可能です。

これらに加えて、従来のHR Techで扱う人事業務のツールからもデータを収集できます。こうして得られたデータを、どのように人や組織の成長に活かすかが重要になります。

人事データをスムーズに集めるための心構え

最後のポイントは、「人事データ」を集めるには働く人にとって自分ごとであると感じてもらうことが重要だということです。

これまで人事データというと、人事や経営が従業員を管理する目的で用いられることが多かったです。もちろん、組織の業務を円滑にしたり、従業員のパフォーマンスを向上させたりするためであり、何らかの不利益を与えるためではありません。

パフォーマンスを向上させることは、中長期的には従業員自身にとっても重要な目的です。しかし間接的なメリットはあるものの、従業員から見ると直接的なメリットを感じられない場面も多々あります。場合によっては、中長期的なメリットにも気づかないことがあります。

人事データの蓄積には、従業員の協力が不可欠です。少なくとも、働く人に持続的な成長をもたらすものでなければならず、それがわかる形で従業員に伝える必要があります。働く人がこれを理解してくれれば、データは自然と集まります。

そのためには、データ自体が間接的にも直接的にも働く人にとって有効なものであること、とわかってもらうことが重要です。これが、「働く人にとって自分ごとである」という状態です。さらに、働く人自身がデータを活用できる環境を作ることができれば、より良いでしょう。これにより、従業員にとってデータを集める意味が生まれ、データ収集がスムーズに進みます。

このために、今後は以下の2点が重要になると思います。

働く人自身のデータや情報を、自分自身で見れる環境を作る

最初に重要なのは、働く人が自分のデータや情報を自分で見ることができる環境を整えることです。例えば、従業員サーベイを実施しても、その結果がフィードバックされないというケースがあります。組織の課題をそのまま露呈することが難しい場合もありますが、適切な形でフィードバックを受け取ることは重要です。また、自分がどのような回答をしたかを見ることができる環境が理想的です。

働く人の人事データリテラシーを上げる

次に重要なのは、働く人が自身の働き方に関するデータを持ち、それを振り返る機会を持つことです。これを働く人の人事データリテラシーと呼びます。働く人がデータを俯瞰的な視点で理解し、人事がそれを活用することで、データ収集がより相互に有益なものになるでしょう。

働く人がキャリアについて考える、という場面でもデータは有効に使えます。キャリアにおいては様々な選択肢があり、働く人はその中で意思決定を迫られます。経験や勘だけでなく、これまでの働き方やデータを振り返りながら選択する環境を整えることが重要です。自分がどのような給料で働いてきたかを可視化して管理している人は少ないと考えます。多くの場合、転職のタイミングでしか職務経歴書を更新しない人もいます。しかし、こうしたデータを正確に蓄積しておくことで、将来キャリアの選択肢に迫られた際に、より確かな意思決定が可能になると考えられます。このように、人事データと向き合うことは、働く人にとって重要なポイントとなるのです。

人事データ、と書くとそれを管理する人事や経営の方々が使うもの、と見えてしましますが、働く人自身も自分の働き方のデータを意識することで、自分の働き方をアップデートできるかもしれません。

今回は人事データとの向き合い方について書かせていただきました。人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方など、ビズリーチWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、お声がけいただければと思います。

この記事が参加している募集

#人事の仕事

4,022件