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『ChatGPT』の登場でビジネスはどう変わるのか

こんにちは、bizlogueの本間浩輔です。先日、打ち合わせなどでシンガポールに行っておりまして、そこでいろいろな人とディスカッションをしたのですが、ChatGPTがすごい衝撃だ、と話題になっていました。それまで『Web3』だと言っていた人たちが、もうそのことを話さなくなっていたくらいです。

僕はIT企業で20年以上勤めていましたので、この手のテクノロジーが出てくるたびに、すごくポジティブに「これから時代が変わるぞ!」という人と、「いやいやいや、本質は変わらないよ」という人に分かれるのを見てきました。でも、やっぱり、僕はどちらかと言えば「変わるぞ」と――と言っても、あまり大騒ぎするのではなく、「ChatGPTとビジネス」の可能性と変化について、今回は考えてみたいと思います。

朝起きたらAIが的確に仕事の指示をする未来?

これは将来的にChatGPTに限ったことではないのかもしれませんが、とてもスマートな人が話してくれるようにAIが指示や作文をしてくれたり、また、質問に答えてくれる。しかも、チャットで打ち込むだけなんですよね。例えば、「1on1のメリットとデメリットは何ですか?」と打ち込むと、実にきれいに答えが返ってきます。僕が言うよりもまともです。僕がいらなくなってくるくらいに……。もちろん、そこから直したり整えたりなどする必要はありますが、本当にそこに人がいるようにしてチャットで質問に答えてくれる、ということですよね。

業態にもよりますが、未来のSFチックな話をさせていただきますと、朝に仕事を始めるとチャットが指示をしてくれる。「おはようございます。今日はこれとこれをやってね」と。それで「どうやればいいんですか?」と質問すると、上司よりも適切な指示が返ってくる。そして、1日の仕事が終わる、もしくはそのタスクが終わると、「あなたの評価は『B』。お金に換算すると○○円です」と、そんな時代になってくるのではないかと僕は考えてしまいました。

今、僕が想像したような未来の世界観を、読者の皆さんはどのように思いますか?

あらためて見直したい“ヒューマンな部分”

もしそのような世界になれば、フェアだなと思う一方で、ちょっと嫌だなとも僕は思いました。常にAIに監視されて、いちいちチェックされている。それは、自分の働きに対して正しく評価してくれるのは素晴らしいことではありますが、ちょっと心がすさむなぁと、そんな思いを抱きました。

そういった世界観においては、確かに上長や管理職は必要ないかもしれません。でも、誰かと話をするとか、質問をチャットに投げれば適切に答えが返ってくるわけではありますが、そうではなくて質問を投げた時の気持ちを本当に共感してほしい、理解してほしい、もうアドバイスはいいから今日はちゃんと自分の話を聴いてほしい――そんな“ヒューマンな部分”って、やはり人間には必要だと思うんですよね。

その関係性が上長と部下なのか、あるいは斜めの関係なのか、もしかすると上長がいて、チャットがいて、働く人がいるという関係性かもしれない。そのような関係性において、チャットのようなAIを使って確率よく、効率よく仕事をする所もあれば、ちょっと違う相談をしたり、話を聴いてもらったりということも必要なのではないかなと思うわけです。パッと誰かと会ってお酒を飲むとか、仲間といろいろなことを話すとか、そうした側面は人間である以上はとても重要なことですから。

一方で、これからAI技術がどんどん進歩していく中、“ヒューマンな部分”が変わっていく、もしかするとそれ自体がいらなくなってしまうのではないか、という考えも出てくると思います。ですが、人間の遺伝子や細胞はそんなに早くは変えられないと思います。なんとか追いついて適応できるところと、そうではないところがありますよね。エモーショナルな部分がまさに、そうではないところ。“ハンドルには遊びが必要だ”とよく言われていますが、そういう意味でも「話すことによって人は元気になる」という原点が必要なのではないかと思っています。

会社組織は“チーム”から“コミュニティー”へ

シンガポールでの出来事に話を戻しますと、いわゆるエクセレントカンパニーの人たちと話をしたのですが、彼らはこんなことを言っていました。僕らが数年前にジョブ型でやってきたような職務経歴書、ジョブディスクリプションの通りにやって、その通りに成果を出して、自分の仕事が終わったらハイ、さようならという文化から、今はやっぱりもう1回助け合おうとか、本来の自分の仕事ではないけど手伝おうとか、そうした方向にマネジメントが向いている、と。

もちろん、すべての仕事でという意味ではありませんが、あと、こんな言い方をしている人もいました。

その言葉を紹介する前に、昔、僕やbizlogueのメンバーたちは「会社の組織はチームなのか、ファミリーなのか」という議論をしてきました。ファミリーというのはメンバーシップ型と言いますか、この人たちとずっと一緒に会社の中で生きていくから“家族”。そして家族というのは働かない人がいたり、すごくパフォーマンスを出す人が一緒にいながら、一つの“家”を作っていくという考えなのですが、これはだいたい否定されてきました。そうではなくて会社の組織は“チーム”なんだ、と。マンチェスター・ユナイテッドであり、ニューヨーク・ヤンキースであり、そこではちゃんとプレーしないとお金は支払われないし、プレーできなければクビになる。そして僕たちも「ビジネスはファミリーじゃないんだよ、チームなんだよ」と言ってきました。

ですが、そのシンガポールで話をした有名な研究者たちの考えは「次はコミュニティーだ」と、こう言うのです。

この「コミュニティー」について考えると、また文字数がとんでもない量になりそうですが、ただ、今の時代はAIやシンギュラリティなどいろいろなものがあって、僕たちの仕事のやり方は変わっていくでしょう。それはクルマで言うところの自動運転とか、10年以内には空飛ぶタクシーが出てくるかもしれません。2025年大阪万博の時には人が乗れるドローンを何としてでも実用化しようと、皆さんが頑張っていますよね。このようにどんどん変わっていく時代において、聴く力、1対1で話すこと、それらは僕やbizlogueのメンバーが言っている1on1とはちょっと違うかもしれませんが、ひと言で言えば「会社の仲間と1対1で業務時間内で行う部下のためのコミュニケーション」――これはますます価値が上がっているのではないかと、僕は思うわけです。

1on1、話す、聴くことの価値

あれだけ合理的なアメリカ人が、ある程度のポジションに就くとだいたいコーチとカウンセラーのお世話になっている。それは会社がお金を払っているケースもあれば、自分で払っているケースもある。これも強引にくっつけるなと批判されることを承知で言えば、コーヒー1杯にも領収書をもらうくらいのコストコンシャスな人たちが自腹を切ってでも“話す”。それも、仕事と直結しないようなことでも話す。そのような時代になってくるのだとすると、日本国内においても1on1や、ちょっと話したり聴いてもらったりすることの価値というものは、AIやチャットがある時代だからこそ逆に高くなってくるのではないかと、僕は思っています。

もちろん、これから先、AIやチャットがどのような形でビジネスや普段の生活に影響していくのかは正確には分かりません。と言いつつ、3年ぐらい経ったらアッという間にこんなことになっていた、となるでしょう。その中で僕たちbizlogueもしっかりとアンテナを立てて情報をキャッチし、時代に取り残されないよう対応していきたいと思います。

そして、ちゃんと話す、聴くということがコミュニケーションの基本であり、それは変わらないんだということを信じて、僕たちはもっと頑張って1on1を広めて、もっと良い1on1をしていきたいなと思っています。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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