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「子供たちに触れるような気持ちで読み聞かせて」出村孝雄の想い

ちょっとおちゃめな魔法のようなことば「ペケロンパ」。童話の読み聞かせを「聞かせよう」。そして、みんなで読み聞かせを「してみよう」。
このペケロンパ・プロジェクトは読み聞かせによって​子どもとの暮らしを応援しています。詳細はこちらの記事でご紹介していますので、良かったらご覧ください。

今回はこのプロジェクトの軸となる童話作家・出村孝雄さんについて触れたいと思います。

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出村孝雄プロフィール
1908年6月4日、愛知県篠島に生まれる。愛知県第一師範を卒業、教職に10年、その間久留島武彦、安倍季雄、小池長氏たちの知遇を得て童話の創作に、実演に、放送に活躍した。そして「児童を愛するものは社会を教化せよ」との信念のもとに童話家であるとともに社会教育家として活動。2001年7月24日、94歳で死去。生前は、中日新聞社会教育講師、全国童話人協会顧問、名古屋童話協会会長、育ての会主幹、日本児童文芸家協会会員などを務めた。


奉仕童話行脚から始まった、口演童話。
「子供たちに触れるような気持ちで読み聞かせて」

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〈童話本〉といえば美しい挿絵のはいった児童文芸本がイメージされます。しかし出村孝雄の童話はそれとは異なる趣向のもの…語って聞かせる〈口演童話〉でした。

口演童話は明治の中頃から、日本のアンデルセンと呼ばれた久留島武彦らによって拡がり発展してゆきました。ひとが生きてゆくうえで大切な心得や教えを、楽しいお話に仕立てて、子供たちに語って聞かせる教育的な目的をもった話芸として確立していったものです。
出村孝雄は(略歴にあるよう)師範学校を出て教職に就くかたわら、口演童話を語り始めます。はじめは「奉仕童話行脚」と称して、小学校に飛び込むように訪れ、無料で童話を語る活動に熱中したといいます。そして教職に10年ほど勤め、その後は口演童話一筋の道を進みます。戦前(太平洋戦争)は中国、満州まで出かけ、戦時中は 陸軍報道班員の宣撫活動としてインドネシアで童話を語りました。
戦後、民間放送が始まると、電波に乗って「一人のお話」はたくさんの人に一度に届く時代がやってきました。そして出村孝雄は日本で最初に放送を開始した民放局CBC(名古屋)で、週1回、レギュラーで創作童話を口演放送することになります。童話のレギュラー番組は当時としても珍しいものでした。一気に作品群・レパートリーが増加し、この時の放送分はのちに、創作童話カセット「はなしのおもちゃばこ」全6巻としてまとめられます。
(※当プロジェクトの出村孝雄の読み聞かせ音源は、このカセットの音源を使用しています)

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楽しいお話を子供たちに語り聞かせる口演童話は、一貫して子供たちの健やかな成長に資するという児童文化活動としてとらえられてきました(自身を童話作家というよりも〈童話家〉と呼んでいました)。そこで、生で話して聞かせるだけでなく、活動としての拡がりを持たせたいということから、創作童話のいくつかが出版されることになります。ただこの場合も〈読んで聞かせる〉ということに拘っています。物語とともに、読んで聞かせる人がいて子供がいる・その状況があって口演童話としての出自が生かされると考えていたようです。
出村孝雄の文中には、句読点が多いのに気付きます。「ここで一息入れて」と、話のリズムに従った表記です。
「そこにある言葉・文節の一区切りに語り手自身を載せて、子供たちに触れるような気持ちで読み聞かせてやってほしい」と、語っています。(息子/出村祥雄)


毎日違う「ももたろう」。
5分のときも、30分のときも。

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祖父、出村孝雄は童話作家であり、そして子どもたちの心を惹きつける優れた噺家でもありました。童話はそのあらすじはあるものの、いつもその場の子どもたちの表情や反応を感じながら豊かにバリエーションを加えながら話す。最初は別のことに気を取られていた子どもも、数分後にはその声に集中して、知らずにお話に引き込まれていく。
目の前に登場人物が見えるかのような臨場感。笑いどころをしっかりとつくって子どもも一体となってお話の中に飛び込んでいくような、そんな錯覚を覚える読み聞かせは、祖父のライフワークとも言える活動でした。
そうそう、おやすみ前に「おじいちゃん、お話しして!」とせがむと、「よしじゃあ、ももたろうのお話をしよう」。って、いつも「ももたろう」。でも、その内容は同じであることはなく、ある時は猿やキジの描写が綿密で、ある時は鬼との戦いが激しく…それは5分のときも、30分のときも。ものがたりが「おしまい」を迎えると、わたしの心の中ではそのお話が息づいていて、いろんな想像を頭にかけめぐらせながら眠りに落ちていったものです。
ここに、幼稚園での読み語りの音声が残っています。子どもたちがどんどんお話に惹き込まれていく様子、笑い声、登場人物への掛け声、一緒に呪文を唱えたり、まあ微笑ましいこと!子どもが笑顔でいられることは、わたしたち大人のの希望ともなるものです。いくつもの読み聞かせ童話と合わせて、ぜひ、お聞きください。(孫/出村亜佐子)

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