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愛情を繋いでいく


母親が「ツバメノヒナガウマレタヨ!!サッキカオダシテタヨ!!」と、まるでPCサポート詐欺の怪しい外国人のようなカタコトの日本語で嬉しそうに俺に報告してきたので、ツバメのお母さんにはちょっと失礼して巣の中の様子を見させてもらった。


あまり巣に近付くのは悪いかな?とGoogle検索で調べてみたら、そもそも、ツバメが民家に巣を作るのは外敵からヒナを守るためなんだそうな。


人間がいる場所だと、外敵があまり来ないから人が離れて静かに見守るより、近くで見た方が安全だとツバメが思ってくれるそうだ。

なので、ちょっとだけハシゴを立てて巣の中を見てみると、中には可愛い可愛い宝物のようなヒナが4羽も産まれておりました!


その後に巣から少し離れた場所で観察していると、ツバメのお母さんがどこからか虫みたいなのを咥えて来てヒナに餌を与えてる。


ここで俺は考える。


一体、鳥はどこまで我が子を想う心を有してるのか?


人間の母親は無邪気で可愛い赤ちゃんの時だけでなく、クソ生意気な思春期の反抗期の時まで全てを含めて、我が子の幸せを願って大事に育ててるとは思う。ならばツバメも我が子に対する圧倒的な「可愛い」と思う感情を持っているのだろうか?


それとも、生き物としての「子孫を残す」という本能だけしか持ってないのか?


もし、人間のような我が子に対する「愛情」みたいなものがツバメには備わってなかったとしても、ツバメのお母さんが一生懸命に餌を持って来てる姿を見てると、俺にはツバメにもヒナが可愛くて可愛くて仕方がない感情かあるようにしか見えないのだ。


例えば、ヒナが「なんだピヨ、今日の餌もハエかよ!たまにはペペロンチーノ風味のミミズでも持って来れないものかね?ほんとグルメじゃないピヨ!」と、憎まれ口を叩いてたとしたら?


それを聞いたツバメのお母さんが「ピヨヨヨヨン……卵から孵化して3日目でこのセリフ……でもね母さんね、実はハエの種類にも日替わり定食ばりのバリエーションを付けてるし、今日のアンタの食べたのはハエじゃなくてアシブトハナアブだよ。まだ目も開いてないアンタには確認出来ないと思うけど……でも、そんなアンタも可愛いんだピヨ!」


俺は一生懸命に餌を持って来てるツバメのお母さんに揺るぎ無い我が子への愛情をビンビン感じる。
それに、そもそもツバメは渡り鳥だから東南アジアの方から俺の家に来てくれている。2000キロから5000キロに渡る長い旅路だ。自分の力だけだぞ!ヒッチハイクも船も飛行機も使わずにだ!


俺の家に作ってある巣は何年も前からあるものだが、もしかしたら?と調べてみたら、同じツバメが戻ってくる確率は40%ぐらいだそうだ。今年のツバメが去年と同じツバメなら俺の家が安全だと思って、今年も東南アジアから遠路はるばる戻って来てくれたということだ。


もしこれが事実なら、ツバメとはなんと義理堅く尊い存在なんだ……


今やっと、母親がツバメを大事にする気持ちが理解出来たよ。


これはなんとしてもツバメを守りたい!


今まさに俺にもナイトのような心が芽生えた!!


そして多分、今年産まれたヒナも、もしかしたら大人になったら戻って来てくれるのかも知れない。


俺の故郷が安全で自分たちを大事にしてくれる人間がいるのを分ってくれてるから……


こうやって、ツバメでも親から子へ愛情という存在を繋いでいくのだ。


最近のニュースで両親を殺した娘の事件がニュースになってたが、親殺しは絶対に許せない罪だと思う。


もし、究極の選択として、命の選択権を握れるのが親か子のどちらかにしかないとしたら?俺はその選択権は親にしかないと思う。


親は子供が生まれたら、生かすも殺すも親の気持ち次第だ。だって、赤ちゃんは産まれたばかりでは1人では何も出来ない。動くことも出来ず、ましてや食べ物を探す事も出来ない。親が何も世話をしなければ赤ちゃんは1週間も生きてはいられないだろう。


でも、親は我が子が可愛くてたまらないから世話をする。


どんなに反抗期でクソ生意気な事を言われても、それでも赤ちゃんの時の無邪気な笑顔と自分が世話をしないと壊れてしまう儚さを覚えているから、親は子供をずっと守ろうとするのだ。


子供は親に命を授けられて、そして、命を救い続けられた末に大人になってるのだ。


だから、親を殺害した事件のように子供が親の命を奪う権利など絶対にない。


俺はツバメの親子を見て、お金で親を殺す人間よりツバメの方がよっぽど価値がある存在なのではないかと思った。


本当に嫌な事件だ。


そんな嫌な気持ちをツバメの親子が和らげてくれた週末の午後だった。

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