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「ラス・ネイルの旅の果て」

©️billy

夜を飛び交う蜂は群れ、
明滅する黄色の街灯下に集う人々、
毒針刺しては堕ちてった、夜毎に繰り返される風景で、
痛みにさえ慣れ誰もが夜を明かした、

ピザ乗るトマトやハムやアンチョビ、

生地からさらってそれだけ食べるラスネール、
灼けるほどのチリソース、
口のまわりの鮮やかな赤、生き血を舐めているみたい、

数える数百ガールフレンド、名前なんて覚えていない、
覚える気もない彼はただ、思いつきの名でしか呼ばない、
名前なんてなくていいって知っている、

覚えているのは肌触りだけ、
覚えているのはそのときの温度だけ、
それ以外はいらないらしい、
それ以外は忘れてしまいたいらしい、

一人になりたい夜は一日おきに訪れて、
家を持たない彼は荒屋に忍び込む、
ランプに燈す輪郭のない光、照らされたピリ・レイスの世界地図、
生きたい場所が見つからない

どうやら終わりが来たみたいだって彼は思う、
別にいいって淋しげさえなく、
けれど最期に触れた温もりだけを思い出す

薄暗い鉄のコンテナは冷たい檻みたいに見えた、
それから温もり抱いた手の平見つめたラスネール、
目を閉じ扉を引き開ける、

群れたハチのその塊が、彼の体を覆い隠して
男はは悲鳴さえなく眠りについた、
もう孤独じゃなくなるって彼は思う、
愛した名前をひとつひとつ思い出す、
Aから順に、ひとつひとつ思い出す、

artwork and words by billy.

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