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「ラス・ネイルの旅の果て」
![](https://assets.st-note.com/img/1656220753060-nvqHGTIgvz.jpg)
夜を飛び交う蜂は群れ、
明滅する黄色の街灯下に集う人々、
毒針刺しては堕ちてった、夜毎に繰り返される風景で、
痛みにさえ慣れ誰もが夜を明かした、
ピザ乗るトマトやハムやアンチョビ、
生地からさらってそれだけ食べるラスネール、
灼けるほどのチリソース、
口のまわりの鮮やかな赤、生き血を舐めているみたい、
数える数百ガールフレンド、名前なんて覚えていない、
覚える気もない彼はただ、思いつきの名でしか呼ばない、
名前なんてなくていいって知っている、
覚えているのは肌触りだけ、
覚えているのはそのときの温度だけ、
それ以外はいらないらしい、
それ以外は忘れてしまいたいらしい、
一人になりたい夜は一日おきに訪れて、
家を持たない彼は荒屋に忍び込む、
ランプに燈す輪郭のない光、照らされたピリ・レイスの世界地図、
生きたい場所が見つからない
どうやら終わりが来たみたいだって彼は思う、
別にいいって淋しげさえなく、
けれど最期に触れた温もりだけを思い出す
薄暗い鉄のコンテナは冷たい檻みたいに見えた、
それから温もり抱いた手の平見つめたラスネール、
目を閉じ扉を引き開ける、
群れたハチのその塊が、彼の体を覆い隠して
男はは悲鳴さえなく眠りについた、
もう孤独じゃなくなるって彼は思う、
愛した名前をひとつひとつ思い出す、
Aから順に、ひとつひとつ思い出す、
artwork and words by billy.
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