連作短編「おとなりさん」#1
第一夜「おとなりさん」
「一杯目はビールにしようよ」
メニュー表を愛おしげに、しかし、やっぱり睨みながら左隣に私は話す。姿勢を変えず、目だけでちらりとその横顔を盗み見る。少し痩せたみたい。頬の下の影が深くなったんじゃない? ちゃんと食べているのかな。根を詰めて仕事しているのだろうか。きっと、してるんだろうな。でも、私はそのことには触れずに目の前に広がる美味しいものたちのことを考えることにした。いま、たくさん食べればいいのだ。
「ビールいいね。それから、なに食べる?」
お