一度は解散も考えた──BIOTOPEのカルチャーデック制作秘話
ここ最近、BIOTOPEには組織文化に関する問い合わせが増えてきました。社会をみたときにも、組織文化に注力する企業が増えてきているように思います。
みなさんも組織文化を物語の形で語るフォーマットである「Culture Deck (Doc)」と呼ばれるスライドや文章を見かけたことはないでしょうか。シェリル・サンドバーグに「シリコンバレーから生まれた最高のドキュメント」と絶賛されたNetflixをはじめとして、国内ならメルカリなどさまざまな企業が自社の組織文化を社内外に伝えていくための手段として多くの企業が使い始めています。
私たちBIOTOPEも2021年にMission・Valueを策定し、それを物語の形に落とし込んだCulture Deckを制作しました。この記事では、その背景と一連の過程をご紹介します。
はじまりは、組織がアイデンティティ崩壊の危機に瀕したことからでした。途中で主要メンバーの入れ替わりがあったこと、リモート化でコミュニケーションが減り意思疎通がしにくくなったこと、プロジェクトが多く重なり疲弊してしまったこと……。BIOTOPEは今年で7年を迎えるまだ若い会社ですが、色々なことが積み重なった結果、自分たちが何者で、何を目指しているのかわからなくなってしまったのです。はじめて公にしますが、一度だけ解散を考えたこともあります。
ただ、まだBIOTOPEがやれること、やるべきことはあるはず。議論を重ね、いまは解散するときではないと思い直したとき、BIOTOPEを続ける意義、つまり組織としてのMissionを明確にする必要があったのです。
それまでBIOTOPEは、メンバーそれぞれの想いとやりたいことを尊重し、特にルールを設けずに組織を運営してきました。ただ、明確なルールがない分、BIOTOPEで許されること・許されないことが分からず、かえって萎縮してしまうメンバーも。結果として、お互いを推し量るためのコミュニケーションコストが高くなり、組織としての意思決定も難しい状態にありました。
最低限のルールがあった方がそれぞれの想いや個性を活かせるのではないか。そう思うようになり、同じタイミングで組織が大切にしていることや暗黙知を言語化したValueも作ることにしました。
そう決めてからすぐ、2021年1月から4月まで定期的にメンバーで集まり、Miroを使いながら議論を重ねました。Missionの方向性を決める鍵になったのは、複数のMissionステートメントのなかから、各々の身体に馴染む言葉を選んだこと。
出てきた方向性は4つ。それぞれのWILL(何を志しているのか)、CAN(何ができるのか)、NEED(誰に求められるのか)を整理しながら吟味していきました。
この4つに基づきながら、議論を経て焦点を絞りながら言葉の解像度を高めていきました。その過程で私たちは、誰もが未来に対して希望を抱けるように、そして希望をもたらす「物語」を巡らせる存在になりたいということがはっきりしてきました。
そして、「意志ある道をつくり、希望の物語を巡らせる」というMissionを定めました。議論のなかでは、それぞれがどんな言葉になぜ共感するのかを話し合い、時には率直な疑問や問いかけをすることも。お互い腹を割ってフラットな話し合いを重ねることで、ただ言葉を考えるのではなく、互いの意志を確認し、理解し合いながら進めることができました。
Mission策定までのプロセスを、代表の佐宗はこう振り返ります。
同じようなプロセスを経てValueが決まると、Mission・Valueを社内に伝えるためにCulture Deckの制作へ動き出しました。
こちらが、完成したCulture Deckです。
まずはテキストで全体のストーリーを作り、ビジュアルを合わせてスライドに落とし込んでいきます。その際に、全体の世界観のコンセプトを決めるため、Pinterestなどでボードをつくり、そこでさまざまなトンマナのイラストを比較検討しながら、BIOTOPEらしさを模索していきました。
「BIOTOPE」という名前からも連想できるように、社内では自然や生態系のメタファーを使うことが多くあります。そのイメージを中心に据えながら、テクスチャーからイラストの抽象度までをじっくりと吟味していきました。
カルチャーデックのデザインを担当したデザイナーの永井は、全体のイラストについてこう話します。
完成したCulture Deckは、月1回行われるAll hands meetingで朗読と共に発表。その後、メンバーからさまざまな感想が寄せられました。その一部をご紹介します。
Culture Deckができたことによって、組織にはすでに変化が起きています。例えば、判断基準が明確になったため、メンバー1人ひとりが自立的に判断することができ、コミュニケーションコストが大幅に減りました。以前は代表の佐宗を中心に組織が回っていましたが、いまはメンバーが自律的に動けるようになっています。
BIOTOPEの組織文化のデザインは、これで終わりではありません。Culture Deckでは、理想の組織像を物語として語っていますが、実現するためには仕組みづくりも必要です。
Mission・Valueは代表であり創業者である佐宗が主体となって進めていましたが、仕組みはみんなで作るもの。仕組み化は「個人の物語」が「みんなの物語」になっていくプロセスそのものです。Mission・Valueを言語化し、物語として語り、仕組みをつくり続けること。その連続が組織文化のデザインだと考えています。
BIOTOPEはまだまだ発展途上にあります。実際にBIOTOPEでおこなっている仕組みづくりやその後の様子については、また別の機会に。
組織文化をつくることに興味がある方は、下記よりぜひご相談ください。
組織文化のデザインについて、より詳細を知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。
text by Nicole Tateo
edit by Ryutaro Ishihara
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