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「バーテンダー褒め学」基礎編

バーテンダーにとって「褒める」ことは、重要なスキルだ。いや、これはバーテンダーに限ったことではないだろう。生きていく上で、存在を否定されるか肯定されるか、あなたはどちらがよろしいか?などという議論は、深掘りしなければテーマにもならない。案外、深掘りをしたらおもしろいのではないかと思ってしまった。
大半の人は、肯定されたいだろうし成果を認めてもらいたいものだ。中には、「お前如きが私を評価しやがって、私を褒めるとは図々しい!」とかいう天邪鬼もいるのだろうが、それもその人なりのキャラ設定で、内心はきっと嬉しいのだと思う。
褒めることは簡単だ。自分が素晴らしいと思ったり、美しいと思ったり、美味しいと思うものを、言葉に表すだけのことだ。と、思っていませぬか?
そんなことなら、スキルなどいらないのである。褒めるスキルとは、別段素晴らしくもなんともないものや、大して美しくない、美味しくないものを、どうやって褒めてみようか?というスキルなのだ。
よく考えてみると、素晴らしいもの、美しいもの、美味しいものなんて、滅多にない。だから出会えた時に感動があるのだ。
褒めてやろう!なんて意識すらないまま、全肯定が身体中から湧き上がるような感覚になる。これは、褒めるというより、感動しているわけだ。
そもそも「褒める」という概念は、あらかじめ良いものを良いと指す言葉ではないような気がする。
全体的に良くないものを、なんとかして良いところを探しだし、それを言葉にすることだと思うのである。
褒めることとは、相手のマイナスをプラスにすることだ。
これらの多くは、万人に使えるスキルである。厄介なのは、あらかじめプラスだったものを、よりプラスにしたところで、その人は喜んではくれない、ということだ。
かっこいい男女に、クールですね!キュートですね!と言ったところで、「まーね」と、思われるだけで、体裁は「ありがとうございます、嬉しいです!」なんて言ってますが、まったく刺さってないわけです。この感覚は、「褒められ慣れ」が原因です。
その人のセールスポイントにまんまと「褒め」をぶち込むと、褒めた人の浅はかさが露呈して恥をかいてしまいます。これは危険です。まんまと網にかかった魚状態で、その後の展開に支障をきたします。
では、私はこの難関をどう切り抜けているのか?
まず、相手をよく観察する。これは、どのスキルでも共通することだが、相手をしっかりと観ることがもっとも重要だ。
「褒め学」の場合、相手のセールスポイントと、ウイークポイントをザックリと当たりをつけます。ウイークポイントを探し当てるメリットは、会話の中での地雷踏みを避ける意味合いもあるので必須と言える。相手の苦手ポイント、弱点を探しておく。かなり性格が悪いと思うかもしれませんが、これはとても大切なことです。ズケズケと相手の弱点を突く為のものではなく、やんわりと弱点を避けてあげる為のもので、これを怠ると、のちにデリカシー問題に発展していき、人間性を疑われかねないので十分な注意が必要だ。
それから、会話の中でウイークポイントの標準を合わせたら、そこをやさしく包み込むように褒めます。MISIAのバックグラウンドミュージックに合わせて。
というのが「褒め学」の基礎です。
アレンジは多様にありますが、それはまた別の機会でございます。


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