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アムステルダムの一夜 1989年11月(その2)
彼の自宅はすぐに見つけることができなかった。
午後7時を過ぎ、日が少しずつ西の空に沈みかけている。
アムステルダムの運河も、観光客に見せていた華やかな雰囲気は脱ぎ去り、普段着の姿に戻ろうとしているようだ。
その運河沿いの細い道を行ったりきたりしながら、僕は彼の家を探した。
「多分この辺りなんだけど」
地球の歩き方の地図だけでは流石に心細く、僕は昼間、街のツーリストインフォメーションで別の
アムステルダムの一夜 1989年11月(その1)
1989年11月2日。正午前。
その時僕は、アムステルダム駅の前で小さなカメラを抱えて歩いていた。
前の晩、ロンドンからの夜行バスで初めてヨーロッパ大陸に足を踏み入れた僕は、もうすぐ22歳になろうとしていた。
まだ猿岩石もいない時代だ。
深夜特急も読んだことはなかった。
だがバックパッカーという言葉は存在していたと思う。
大学を1年間休学し、その年僕はある国で半年働き、お金をため、残り