【読書】「40歳の壁」をスルッと越える人生戦略
とっても目を引くタイトルの本を見つけてしまいました。なんと「40歳の壁」だそうですよ。「これぞ求めていたものかも!?」なんて思って買ってみました。
40歳の壁とは
一般的に40歳前後で人生に行き詰まりやモヤモヤ、現状の延長線上でやっていくことに対する不満や不安が出てくるようです。
早ければ30代半ばで出てくるようです。
その理由が本書では明らかにされています。そしてその理由こそが40歳の壁です。
仕事に対する行き詰り
40歳と言えば、社会人として自分がどこまで行ける器なのかが見えてきます。若い頃は頑張れば上を目指せると思っていたのが、40歳くらいになると現実が見えてしまいます。
役員まで行けるのか、部長止まりなのか、課長止まりなのか、管理職までいけないのかが明らかになってきます。
すると順調に出世できている人は今の会社で頑張ればよいのですが、そうでない人たちは身の振り方を考える必要性が出てきます。
独立するのか、脱サラして好きなことをやって生きるのか、趣味などプライベート優先で仕事はほどほどにワークライフバランスで生きるのか。
自分の経験やスキルに対する不安
若い頃は頑張ればできると思っていたのが、40歳になってみると経験、スキル、資格などが今一だという現実も多くの人にとってあるでしょう。
かつてインターネットが普及していなかった時代なら、比べる相手は自社の同僚か友人くらいしかいなかったでしょう。
それが今やインターネットで同世代の平均や上位層が見えてきます。SNSでいかにも勝ち組ですみたいな有名企業勤務や高収入になれましたという投稿も沢山見かけます。
更には勝ち組企業の社員やら難関資格取得者やらの平均年収はビジネス誌やそのWebサイトでよく出てきますし、転職によるキャリアアップができている人へのインタビュー記事がネット上にはよくあったりします。
こうなってくると普通はこれくらい(実際は勝ち組の平均だったりするからたちが悪い)がネットで日常的に見えるわけですね。
すると自分は世間一般と比べて大した職歴やスキルがない、大した資格も持っていないと悩んでしまいます。
家庭の悩み
40歳と言えば家庭の悩みもあります。これも既婚/未婚、子どもの有無に関わらずあるでしょう。
一般的に多いケースで言うと、30歳前後で結婚し、40歳前後となると小学生の子どもがいるケースが多いでしょう。
小学生は幼稚園児・保育園児と違って勉強内容も心情も複雑になってきますし、高学年になれば反抗期が始まる子もいます。親が話を聞いて理解してあげる必要性がでてきます。
また子どもがいない夫婦の場合、不妊治療を頑張って子どもを持つのか、二人で楽しく生きていくのかを考える必要もあるかもしれません。
独身または離婚経験者なら、結婚/再婚するのかしないのかも悩ましいかもしれませんね。
自由に生きたいから独身でいい、あるいは離婚によって結婚はもうコリゴリなら結論はでていますが、結婚/再婚したいなら時間との勝負もあります。
更に人によっては40歳以降に親の介護の問題も出てくるでしょう。介護が必要になると自分の時間が劇的になくなってしまいます。
40歳前後は複雑すぎる
とまぁ安直に仕事と家庭のことだけを洗い出してみましたが、これだけでも40歳は複雑すぎますね。
さらに言うと、運動していない人は体力の低下や健康が気になるかもしれません。運動している人でも競技をやっている人なら引退を考える年齢です。
もっと怖いのは私の実体験なのですが、訃報が親族だけでなく友人・知人も含むようになってくるということです。
私はここ数年で、学生時代に一緒にクラブチームでの練習会やサイクリングをしていた方や、仲良くしていただいていた会社の先輩の訃報に直面しました。自分も周囲の人が亡くなるような年齢になったんだと感じました。
自分の悩みがまさしく表現されていた
本書を読んで、自分がずっと悩んできたことが40歳の壁という言葉で表現されていて、すごく納得感がありました。
私はキャリアに完全に行き詰っています。
IT業界で元請けとして上流工程から顧客企業の課題を解決する仕事を責任者としてやってきて、単価も経験年数が同程度のエンジニアと比べて倍も頂いていました。
一方で小さなベンチャーで規模拡大も難しかったです。もっと大きな仕事をやって給料も上げたいと思いつつも、やりがいや自由度から転職をせず続けていました。
そしたら会社の経営が段々と苦しくなっていき、しまいには身売りしてしまいました。
そして身売り先はいわゆるIT土方という3~4次請けで安い単価で長時間労働ばかりしている会社でした。しかも吸収合併される側だったので立場は弱かったです。
元請けのプロジェクトマネージャーが3~4次請けのプログラマーになりました。会社の平均単価も半分にも満たないくらいでした。
一応私はそのときアサインする人がいなかった案件にアサインされました。この案件は一応80万円/月という経験が十分にある即戦力のエンジニアと同じくらいの単価でした。
また合併前の案件も同じく80万円/月になりました。
しかし80万円/月なんて、それ以前の私から見ればバーゲンセール以外の何でもない単価でした(こんなこと書くとIT業界の方には怒られそうですが)。
しかしこの会社の評価では、私は50万円/月のプログラマーでした。何だろうこれ?みたいな。今までやってきたことって無駄だったの?って。上層部からは「どうせお前は能力がなくて何もできない」と言われて。
更にはもっと酷いことに、この会社ではサービス残業が毎月100時間もありました。休みは月1日、毎日24時まで残業は日常でした。残業代は勿論0円です。
そんなわけで最終的には今のITコンサル会社に転職することにしました。
しかし転職してみても何かが解決した気がしませんでした。相変わらず行き詰まりを感じていました。これと言って何ができるわけでもない平々凡々な自分がいるからです。
しかも零細ベンチャーで行き詰った身なので給与水準もかなり低いですし、かといって会社にしがみつかないと生活保護しか生きていく術もないですし。
勉強もしっかりして、プロジェクトマネージャーという立場で顧客企業の課題を解決するという誰でもできるわけじゃない仕事をしてきたのに、中途半端でこれと言える経験やスキルがないという現実に直面しました。
誰からも評価されず、出来が悪い癖にという悪口だけは言われる…そんな生活が続きました。頑張ってきたけど、誰からも必要とされない存在なのか?もう脱サラして田舎でのんびり自由に暮らす道を探した方がいいのか?
本書を読んで自分のキャリアを振り返ったとき、35歳で40歳の壁がやってきたんだなと。その壁の始まりはこの合併でした。
40歳以降のキャリアデザイン
3つの土台を整える
本書はお金(収入・資産)、つながり(家族・友人・知人)、健康(体力・認知力)の3つを整えることを提案しています。これらを3つの土台としています。
お金がないと友達と楽しんでいても老後が心配になります。またお金がなければ家族を養えません。そういえば私も夫婦げんかの多くはお金がないことが原因でした。
お金があっても家族や友達がいなければ孤独でむなしいでしょう。これだとお金と仕事のためだけに生きているのかと思えてきてしまいます。それはむなしいでしょうね。
健康がなければお金があっても使う余裕がないかもしれません(治療費で沢山使ってしまうかもしれませんが)。
似たような話はライフシフトにも出ていたような気がします。ライフシフトの場合は人生のステージによってこれらのバランス配分を変える話がでていました。
お金を稼ぐ時期や家族・友達との付き合いを大事にする時期があっていいという話だったと思います。
自分業を持つ
3つの土台を満たすために、本書は自分業を持つことを提案しています。
自分業とはお金、つながり、健康の3つの土台を満たすことができて、やりがいを持てて、自分が裁量権を持てる仕事なのです。
会社の仕事でこれらを満たすことは困難です。
会社の仕事はお金こそ安定して得られます。勿論給料に不満がある場合は少なくないですが、会社の給料は独立した人と違って毎月ほぼ必ず振り込まれます(会社が経営難の場合は除きます)。
しかし会社や上司の命令には逆らえないケースがほとんどです。
そしてやりたいことを仕事にして、やりがいを得て活き活きとしている人は少数派です。多くの人は生活のために多くの我慢をして働いています。実際に日本には高エンゲージメント従業員が5%しかいません。
つまり会社の仕事はお金こそ満たせますが、やりがいと裁量権を諦めざるを得ないケースが多いのです。
しかし今の時代はパラレルキャリアが広まってきています。副業・複業とかボランティア、プロボノによって自分がやりたいことを自分のペースでやることも可能です。
本業ではやりがいや裁量がないから、副業やボランティア、プロボノなどでやりたいことをやるという選択肢もあります。
本業では給料を我慢してでもやりがいや裁量を得て、副業や投資で収入を補うという選択肢もあるかもしれません(副業や投資が軌道に乗っていないとできないでしょうけど)。
あるいは本業はワークライフバランス優先に転職してお金と健康(給与水準はそこそこだけど残業が少ない会社に移るなど)、ボランティアやプロボノ、推し事などでつながりを得るというのもありでしょう。
ちなみに昨今流行りのFIREはお金こそありますが、著者はFIREに対して否定的です。
FIREするとつながりがなくなってしまいます。また外でやる趣味(スポーツや街歩き、旅行など体を動かすもの)がなければ健康も損なってしまいます。
FIREは仕事が嫌だから辞めたいという意味合いが強いと私は感じています。こういう理由でFIREするから退屈になって再就職するのでしょう。
会社の仕事で満たされているケースもある
自分業の箇所を読んでいて、「あれっ?」と思ってしまいました。
私の場合はやりたいことを仕事にできませんでしたが、やりがいは感じています。
なにせ顧客企業のビジネス課題と日々向き合う仕事です。多くの人の仕事を便利にできます。顧客企業の企画担当者と二人三脚で一緒に悩みながら進めています。
人の悩みを解決してありがとうと言われる仕事ができているのです。
更にはコンサル会社で案件の責任者ですので、自分の裁量でどうとでもなることばかりです。
今まで会社員をやってきて、上司の命令というものを受けたことがほとんどありません。会社から案件だけ与えられて、後は自分が好きなようにやってきました。
ということは自分業に必要なやりがいと裁量権は満たせています。後はお金ですね。ここを投資でいくらか補ってはいますが、他にも収入源が欲しいところです。
自由に好き勝手にやらせてくれる会社は小さい会社が多いので、給与水準が低いのです。かといって給与水準が高い会社は大きい会社なので、組織に逆らえません。
会社員である限り、お金と自由にはトレードオフがあります。これを自分業で補えたらいいなと思います。
まだ悩む必要がありそう
40歳の壁を越えるには時間がかかる
私の場合はまだまだ40歳の壁で行き詰っています。でも本書を読んで40歳の壁が薄っすらとですが見えてきたようにも感じます。
今まで万里の長城のように巨大でなおかつ透明な壁が立ちはだかっている感じでした。
しかし本書を読んでみて、強固な城壁で全体像は見えないけど、薄っすらと靄がかった状態で立ちはだかっている壁に思えてきました。
となると地道に頑張れば、5年とか10年の期間があれば突破口が見えてくるかもしれません。
それは城壁を破壊するのか、抜け道を探すのか解りません。
でも本書では10年かけて越えていくという話も出ていますし、著者自身も数年かけて越える方法が見つかってきたけど越えていないようです。
40歳前後で脱サラや独立の話を聞く理由が解った
ビジネス系の記事を読んでいると、35~40歳前後で脱サラして好きなこと(農業やお店など)を始める人や独立する人の話が何かとある理由が本書で解りますね。
40歳の壁を越えるため、すなわちお金、つながり、健康の3つの土台を揃えられる仕事を、楽しく自分のペースでするためなのでしょう。
サバティカルタイムを活用してみたい
それからサバティカルタイムの話も本書にでてきました。これいいなぁと思いました。勿論現実には不可能なので、著者が言うように休みを取ってサバティカルタイムに当てるのが会社員にできる精一杯なのでしょう。
著者は2年のサバティカルタイムを取っています。これは自分の貯金と副業収入を見て計算したら、2年なら何とか食いつなげることが解ったのと、会社に辞めても5年以内なら復帰できる制度があったからだそうです。
フルに休める期間が2年あるといいなぁと思いました。私の場合は低収入で貯金もないので、そんな時間は取れません。
だからこそ収入を増やして本業を長期間休んでも大丈夫にできたらいいのですが、そんなに個人で稼げたらもう40歳の壁は越えているかもしれませんね。
とりあえずは今年のゴールデンウィークから長期休みの度にやりたいことを書き出すようにしてみました。
終わりに
30代半ばから訪れ、40歳前後で明らかになるキャリアの行き詰まりが40歳の壁という言葉で具体的に書かれている本を初めて読みました。
先にも書いたように、私は合併によって会社がなくなり、末端の下っ端にされてしまったことで、30半ばにして40歳の壁に直面しました。
40歳の壁という言葉も知らず、行き詰まりだけ感じ、ここ2年くらいはビジネス書も技術書も年に数冊しか読まず、キャリアや人生に関する本ばかり読んでいました。
そうした中で出会ったのが本書でした。そして見事に行き詰りの正体を現していました。
本書は30代半ば以降、人生に行き詰りを感じているという方におススメしたい本です。
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