獺祭の経営手法と歴史的経緯が面白かった

獺祭の代表取締役が書いた経営手法の論文が面白かったです。

時代の変化に対して生き残る方法を実行する

時代が変われば、同じ方法では生き残れません。しかし老舗の場合、今までこの方法でやってきたんだから、これからも今までと同じ方法でよいという考えが染みついていることもあります。

あるいは高度経済成長期やバブル期の成功体験から、今は景気が悪いけど、いつかは良くなると思ってしまうケースもあります。

獺祭ができる前も、旭酒造はそういう状態に陥っていたそうです。

こういうときはやり方を変えなければいけません。新製品や新事業などですね。そして新製品や新事業は別ブランドで出すことで、イメージを既存製品・既存事業と分けるのが基本です。

旭酒造の例ですと、新製品を作っても売れなくて、後からブランドを変えたようですが(それが獺祭)。

ピンチをチャンスに変える

いい製品を作ろうと杜氏にわがままを言い続けたら、業績悪化のタイミングで見限られてしまった…そんなエピソードが出てきます。

いい製品を作るのは正しいと思いますし、そのために経営者が理念やパーパスを整備する必要があります。でもそれでもついてきてもらえない場合はどうすればいいんでしょうね。

私にはいい答えがありませんが、旭酒造のように、杜氏に見限られてしまったのを機にやり方を大きく変えてしまうというのもありなのでしょう。ピンチでも業務改革のチャンスという捉え方ができると強いなぁと思います。

酒造りだと杜氏が作りてですが、他の業種に例えると、従業員が社長について行けず一斉に辞めてしまったみたいな状況でしょうね。

ちなみに杜氏は蔵人という助手を連れてチームでやってくるそうです。つまり杜氏は親方みたいなものなのですね。だから杜氏が辞めることはチームごと辞めるに等しいようです。

データ分析をしっかりやる

杜氏なしで酒造りをしようという心構えも凄いものです。しかし酒造りには水分量や温度など、定量化できる指標があります。

いきなりいいものは作れなくても、毎週作ってはデータを取るということを繰り返して改善していくという姿勢は見習いたいものです。本文には書かれていませんが、アジャイルですね。

機械化しても人手をかける

人の手でやった方が品質を上げられる作業と、機械でやった方がよい作業を切り分けることは重要です。

よくある勘違いとして、全工程を自動化するという話があります。ハッキリ言って無理だと私はいつも思います。オフィスでもシステム化で全自動みたいな話を聞きますし、AIで人を代替するという話は尽きません。

しかし人を100%機械やシステムに置き換えるにはコストがかかりすぎますし、技術的にも難易度が高すぎます。

旭酒造はもっと進んでいて、人がやった方が機械より高い精度が出せることは人が高い精度で、それ以外は機械が高い効率で作業するというものです。

物事は0か1のステレオタイプで考えられがちですが、人と機械の上手い棲み分けという視点も持ちたいものです。

終わりに

上手く行っている会社には上手く行くための工夫があるものです。獺祭の場合は、酒は杜氏が作るという長い歴史がある慣習を打ち破りました。

上手く行かないときは常識や慣習を否定してみるのもありですね。学ぶことが多い論文だと思います。

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