羊のなる木(スキタイの羊)

 スキタイの羊をご存じでしょうか?スキタイは古代の遊牧民族ですが、スキタイの羊とは直接には関係ありません。タタールの羊という別名があることからも、正確さにこだわった名称ではないことがわかります。日本で外国から来た物品に、原産地が中国でなくてもとりあえず「唐」という言葉をつけていたのと同じ感じなのでしょう。要は自分たちの知る世界・文明圏の外側のエキゾチックな事象であることを示しているわけです。

 で「スキタイの羊」とは何かということですが、「羊がなる木」です。「は?」と言われそうですが、西洋にそのような伝承があったわけです。
 スキタイの羊の実が熟すと子羊が生まれます。この子羊は周囲の草を食んで暮らしますが、元の木と繋がったままなので届く範囲の草を食べつくすと飢えて死んでしまうのだそうです。
 意味不明ながら、なかなかインパクトのある設定です。

 この間「世界史を大きく動かした植物」(稲垣英洋・PHP)という本を読んだところ、若い頃にちょっとしたきっかけで知ったこの伝承と思いがけず再会することになりました。
 この本の「ワタ」の項。昔のヨーロッパの人々は柔らかい植物性の繊維を知らなかったので、アジアから木綿が伝わったとき、ウールのように柔らかい繊維が植物から採れることに驚いたのだそうです。そして彼らの想像力は「羊毛の採れる植物」から「羊のなる木」を生み出してしまったのだとか。
 わけのわからない異様なモノが、自分の知識の網目の中に綺麗に収まるというのは、何度味わっても良いものです。今回は特に二十年近く自分の中の「ファンタジー」のカテゴリから出ることのなかった知識が、世界史の知識と繋がったわけで、その快感もひとしおでありました。伝わりますでしょうか?

 僕が「スキタイの羊」を知ったのは、こちらのサイトでした。

https://maruproduction.com/gall/g2_03.html

 確認のため見に行ったら、サイトは残っていますが、僕のパソコンとスマホではFlashはもう見れないようです。
 頑張って長時間待ってようやく読み込んで、カクカクさせながら見たFlashアニメも、今の通信環境なら楽々見られるだろうに・・・。
 昔よく見ていたサイトに久々に行くと、懐かしさと同時に寂しさを覚えることもありますね。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。


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