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嵐に見舞われた2月。ジェットコースターの3月。

2月は毎週末嵐でした。イギリスは確かにいつも雨が降っているように感じるくらい雨が多いけれど、嵐となると話は別。環境破壊による異常気象は目に見えて多くなってきていました。週の仕事の半分は週末にあるので、横幅が3倍あるスーツケースくらいの大きさのマッサージテーブルを雨風の中、スマホ片手に地図を見ながら公共交通機関と自分の足を使って運ぶはけっこう地味にキツかったです。

そんな中、毎年のことながら、日に日に日が長くなるのを感じ、木の芽が膨らみ始め、沈丁花や桜に似たアーモンドの花が咲き始め、まだしばらくは寒いながらも、ついに暗くて湿った冬が終わる!と、うきうきし始めていた3月。

私の感覚でロンドンの空気が本格的にピリピリし出したのが、3月に入って少しした頃だったと記憶しています。スーパーからトイレットペーパーが消えたのから始まって、あれよあれよと消毒関係のものやら保存が効く食べ物がどんどん棚から消え、なんとなく地下鉄も人が減っていって。

この頃カップルでの予約が重なり他のセラピストと会う機会が多かったのだけれど、仕事減ってるよねという話もよくしていました。もちろん各訪問先ではいつも以上に念入りに全ての仕事道具を消毒するためいつも以上に時間がかかり、1日何十回も手を洗う。

もともとたくさんの施術数をこなせない私は、他のセラピストがいうほどの影響は実感してはいなかったのだけれど、公共交通機関を使っての移動は確かに人が減って以前より楽になっていて、私自身は、クライアントに伝染すわけにはいかないから、とにかく感染しないように免疫力をつけようと、オレガノオイルを撮ったり、エキナセアとネトルのチンキをウォーターボトルに入れて水分補給してたり、ゴールデンミルクをのんだり。あとこれはもう2月からずっとだったのだけれど、暇さえあれば昼夜関係なく寝落ちしてました。

スーパーの空になった棚を見るとちょっとは焦ったけれど、政府が食べ物はちゃんとあると断言していたのを信じて、普段通り必要なものを必要なだけ買って。

日用品は、歯磨き粉とか石鹸とかスキンケア系は自分で作れるし、掃除系も普段からお酢と重曹とセキスソーダだし、消毒アルコールと殺菌系エッセンシャルオイルも手元にあるし、なんとかなりそうだと思いました。

そうこうするうちに日に日にピリピリした空気は濃くなり、ずっと週一で訪問施術をしていたクライアントからの依頼がストップ。エージェントからの仕事も、いつもなら週末の予約はそこそこ早い段階で半分以上は埋まるのに土日とも1件ずつしか入っていない。そろそろ本当に仕事がなくなるかもしれないと思っていたところに、ヨガスタジオ時代からのお得意様から、翌週末にはロンドンがロックダウンするかもしれないという話も出てるから、しばらく会えなくなる前にもう一度施術を受けておきたいと当日依頼されたのが15日の日曜日。

そして実際のロックダウンが始まる前の週。本当にぱったりと仕事依頼が止まりました。予約が入ったと思ったらキャンセルになったりもして。

ストレスを感じ始めていたので、とても楽しみにしていた、毎週月曜日のバレエレッスンがレッスン時間開始20分前になって、スタジオの急遽閉鎖が決まったからとキャンセルの連絡が入り、もの凄くショックだったのを覚えています。参加しているヨガインストラクターとセラピストの各FB情報交換ページでは、今すぐサービス提供をやめるべきだ、いやでも生活が掛かってる、サービスを必要としている人がいる限り双方健康そのものなら提供するべきでは、いやもう個人どうこうというレベルではない状況になっている、などという意見が白熱する中、ヨガに関してはオンラインサービスへの移行に関する情報交換も始まり。

ヨガのオンライン化は結構なスピードで進んでいったように思えます。私も取り急ぎ、個人ヨガセッションはオンライン移行するしかないと、Amazonで簡易ライティングとマイクを注文(のちにまるで使い物にならないことが判明して返品。結局、昔フォトグラファー時代に使っていたライティングスタンドと家にあるクリップライトの電球を6500Kのものに替えて代用、マイクはワイヤレスイヤフォンのマイクを代用)。ちなみにAmazonの配達に時間がかかるようになったのもこの頃。今は物によっては1ヶ月後の配達だっりしています。

対してマッサージを始めとする対面施術の方は、私もこの週の前半はまだ、双方完璧に健康でお互いリスクがあることを理解していることを前提に、必要とされればサービスは提供したいと考えていて、各クライアント宛の英文メッセージ作成に四苦八苦。ところがそうこうしているうちに状況がどんどん変わるので、昨日やっとサイトへの案内文を載せ、今日は超お得意さまから順に連絡を開始したところ。

ぶっちゃけ、自分のビジネスよりも、蓄えもない私は、まずは収入が途絶えている方をなんとかしなければと、割と早い段階で救済措置として国からオファーがあったユニバーサルクレジットという福祉手当の申請をしました。といっても、これが当然一筋縄ではいかず。情報は錯乱しているし、そもそもそういう書類はややこしく出来てるのが世の中の常、英語の微妙なニュアンスでこれはどういう意味と取れば?ということもあったり。しかもオンライン申請をした後に、今度は電話で査定面談の予約を取れという。そして電話は、もちろん繋がらないのですよ。私は実際のロックダウンが始まる1週間前に電話をしたのだけれど、その時点で2時間待ち。ロックダウン後は何日も電話してるけど一向に繋がらない、ユニバーサルクレジットを申し込むことは現実問題として不可能、という声も上がっていたようです。

その頃の私は、動物が危機に面した時の自動防御システム、戦う(Fight)、逃げる(Flight)、その場で固まる(Freeze)のうちのフリーズモードだったと思います。もともと私の自動防御システムはフリーズがデフォルトなので、今回ももれなく。フリーズしながらも、手持ちのヒーリング知識と技術を総動員して、崖っぷちの精神状態で次にやってくる支払いをなんとかしなければと動いていました。まさに火事場の馬鹿力。

私は本当にギリギリのところで電話が絶望的に繋がらなくなる前に申請受理がされ、特別措置の福祉手当前借り制度で、来月から始まる支給額から分割で差し引かれるという条件付きで£500ちょっとも振り込まれましたが、そこまでに至る体力と気力の消耗といったらもう。今年に入ってから諸事情により、週単位で入る収入は週単位で期日がくる支払いにそのまま流れていくという状況だったので本当に死活問題だったものですから。その最中に、次々とサービスをオンライン化したという知らせが各方面から入ってきて、その焦りからくるダメージも半端なかったです。私はストレスが睡眠と食事に即座に現れるので、お腹が真っ平らになったのは嬉しい副産物。でもお肌がやばい。申請時のいざこざを始めとした国からの個人事業者へのサポートについては次回書きたいと思っています。

私の場合、ロックダウン直前から、まさに一夜にして収入の95%が途絶えました。人に触れる仕事なので当然ながら。友達やごく近しいクライアントには、「私の腕の長さ、2m*ないから仕事できないのよ(*人との距離を2m保つというのが国からのガイダンス)」とか「過去7年間で初めて爪が伸ばせるしマニキュアもできる」などと冗談をいっていましたが、ふとその触れられないという事実を思い出すと、本当に本当に悲しいです。

とはいえ今週は2つのヨガ個人レッスンをZoomで行い、初めての試みで試行錯誤しながらもなんとかこのまま継続できそうなので、少しほっ。対面施術のオンライン化も、アイデアはある程度固まっていながらも、それがどの程度受け入れられるかとか、話すのが得意じゃない私が、どこまでお客さんにお金を払う価値があると思ってもらえるのか、とか考えるともう色々恐ろしいながらも、このことで可能性が広がるかもしれないというワクワク感もあり。

せめて数日間でもゆっくりしたい気持ちも大きいけれど、そうもいってはいられない自転車操業の個人事業主なのでした。

Stay Home, Save Lives

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