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短歌

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#現代口語短歌

短歌連作5首「一年と一日」(第19回おきなわ文学賞佳作受賞)

短歌連作5首「一年と一日」(第19回おきなわ文学賞佳作受賞)

暁闇の中古車店の花飾り 揺れてそこから世界が染まる

街路樹は深く剪られてすがしさと鏡写しのかなしみがある

廃盤の香水つけて、このひとをあなたになぞらえてみる五月

海辺まで草刈機の音が聞こえて時が止まってゆく夕まぐれ

海沿いのショッピングモール閉店後マネキンの眼に映る灯台

2022年琉球歌壇に採用された短歌4首

2022年琉球歌壇に採用された短歌4首

ウチカビをラッパーみたいに焼いてみた あの世じゃみんなイーロンマスク

手の甲の静脈を模した河川図がまだ見ぬ国の首都をつらぬく

国道の矢印すべて流れ込む終の海にて指輪を棄てる

しょぼくれたやさしさだけがある昼のフードコートで君の手をとる

音MADみたいな短歌 5首

青い阿波踊りをおどるニセコ町の九月の半液体の夜

変電所だけに降る雨は止み焼死体の僕は電話をかける

白亜の公舎
で迷って半獣人の
官僚の
自死を眺める

皇帝を弑せし海に浮かびたる島のしずかな叛乱の夢

聖廟と腐乱死体を吊る樹々に湮滅の夜は等しく来る

暁にきらめく芝生の露が在り あこがれは遠く空の向こうに