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映画と語学 4
曽根田憲三(アメリカ映画研究者・シナリオ翻訳家)
映画から学べるものはことばだけではない
私たちが意思の疎通をはかるとき、ことばだけに頼っているわけではありませんね。
たしかに、嬉しいときや悲しいとき、戸惑っているときや怒っているときなど、その感情を伝えるためにことばを使ってはいますが、ことばより口調や音調、そして微妙に変化する顔の表情や視線、それに身振り、手振りなどのほうがより大きな役割を担っているはずです。
無表情、しかも変化も抑揚もない一本調子の声で「お気の毒に」とか「愛してるよ」と言われると、逆にゾッとしてしまうでしょう。
すなわち、互いの気持ちを伝えあうにあたっては、ことば以外の手段を用いたコミュニケーション、いわゆる非言語コミュニケーションがとても大切だということです。
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アメリカの有名な心理学者でUCLAの名誉教授アルバート・メラビンは7-38-55ルールなるものを発表しました。
それによると、私たちが話し相手から受け取る情報を100とした場合、ことばの内容からの情報は7%、声の音色や大きさ、口調、話す速度などからの情報は38%、そして顔の表情や顔色、視線、動作、相手との距離などから受け取る情報は55%だということです。
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とはいえ、世界中のどこでも、また誰でも喜び、驚き、恐怖、感動といった基本的な感情に関して大差はありませんが、ジェスチャーやボディランゲージの多くは民族、文化、社会によって異なっています。
たとえば、がっかりしたときアメリカ人は「ついてないな!」との意味で指をパチンと鳴らしますが、日本人はこのジェスチャーを「やった!」とか「ラッキー!」の意として受け取るかもしれません。
また、お金を表す場合、私たちは親指と人差し指で円を作りますが、アメリカでは指で紙幣を数えるように、親指で人差し指と中指の先を数回こすり合わせます。
また、指で数を数える際、私たちが開いた手の親指から順に人差し指、中指、薬指、そして小指と曲げていくのに対して、アメリカでは閉じた右手の人差し指を上げて1、続いて中指、薬指、小指、最後に親指を開いて5とします。
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映画にはことばだけではなくこうしたコミュニケーションには欠かせない重要な情報がいっぱい詰まっているのです。映画を使って外国語の学習に励むとともに文化、生活習慣、仕草、考え方などにも注目して楽しく外国語と外国の文化について学んでください。
曽根田 憲三 (そねだ けんぞう)
立教大学大学院修了。相模女子大学名誉教授。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)客員研究員(1994、1997、2000)。映画英語教育学会元会長、アメリカ映画文化学会名誉会長、映画英語アカデミー学会名誉会長。映画を使った文科省検定高校英語教科書を初め、シナリオを利用した大学用テキスト、アメリカ映画シナリオ翻訳本、アメリカ映画・小説に関する研究書、実用英語本など、出版した書籍は170冊を超える。
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