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#16 あなたの妻が太っている理由 ※ついでに痴漢の見分け方

こんばんわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の16話目です。
今回は、結婚生活中、常に人生最高体重を更新し続けてきたわたしが、今なぜか痩せてきている、なんでだ?という話です。

既婚男性で「うちの妻がどんどん太って困ってる」とお悩みの方、いらっしゃいませんか。
ストレスで太る、忙しいから太る、のその奥を探ってみました。
おそらく暗くて救いようのない話になりますが、心当たりのある方はどうぞ読んでいってください。
ただし、ふっくらした妻が好みだったから結婚した、結婚前から体重は変わってない、なんて幸せな方には読んでいただく必要はないかと思われます。


気づいたのは、ピッコマで読んだとあるマンガである。
ある日の眠れない夜中、「46才漫画家、20才年下障害者と不倫して再婚しました」という刺激的なタイトルにふと目が止まり、ページを開いた。

衝撃だった。
話の内容ではない。内容はタイトルの通りだ。
※ 以下ネタバレ含むので注意。

作品中、主人公である作者は「痩せられない原因は、深層心理では自分が太りたがっているからだ」というようなことを語っている。
ざっくりとした流れは、子どもについての考え方が違うことから夫への不信感が生まれ、結果セックスレスとなり、最終的に女として生きることがつらくなったから、女でいることを拒否したというようなことだ。
その中には、女じゃなくなること ≒ 太ること、という論理が感じられた。

あー、これすごいわかる。しっくりきた。
「痩せたい」と口では言っていたけど、わたしの中の誰かはむしろ太りたがっていたのだということに気づいた。
#9 #10 で夫の保護者として生きていくことになったわたしは、夫とセックスをしたくなくなった。
太って女でなくなれば、夫のセックスの対象者リストから外れられるはず、だから太りたかったのだ。(ただ、その理屈は夫には通用しなかった。)
それに、女であることを捨てればこの先心を殺して生きていけるとなんとなく感じていたのだと思う。

さらに共感してしまったのが、この主人公は夫をフォーカスアウトしたにも関わらず、のちに結婚相手となる20才年下障害者に性欲を感じるところ。

わかる。
(ここからは #1 以前の話に遡る。)
わたしの場合は、特定の人にではなく、夫以外なら優しければ誰でもよかった。(実行には移さなかった。母としてのわたしが許さなかったのだ。)
当時のわたしの場合、男性カテゴリーは ①夫 ② その他の2つしかなかった。そして性欲の対象は、② その他=夫以外なら誰でもよい、だった。
ここに、人間関係が貧しいという事実がある。
その後、③ 好きな彼 ④ 優しい知人男性 …といくつかのカテゴリーが加わり、人間関係が多少豊かになった今思うのは、誰でもいいという雑さは、自分含め誰のことも大事にできていないことを映している。
体だけ上手に切り離せることができればいいと思うこともあるが、今となってはもうできないし意味もない。

カテゴリーが少なかった理由は、夫とつきあい始めて、男の子の友達を全部切ってしまったことに始まる。
大学卒業以降は、仕事以外で男性とほぼつきあいをしなかったし、仕事上のつきあいをプライベートに持ち込むことはなかった。
少しでも持ち込めば、夫が不機嫌になるからだ。
でも、意外とそういう女性は多いのかもしれないとも思う。

元々、わたしは男の人が得意じゃなかったし、そもそも自分が女であることをうまく受け入れられないまま生きてきたことも背景として挙げられる。

わたしは男の人が怖かった。
子どものころに遭った痴漢にまつわる体験(#10,#15)は、男性そのものに対する単なる恐怖を植え付けるのに十分すぎるほどだったし、電車に乗る前から痴漢の人を見分けられるほどセンサーが発達したくらい、防衛本能が常に過敏すぎるほど働いていた。この防衛本能に引く男性も多かったと思う。

ちなみに、痴漢の人はホームに降りる階段の時点から獲物の女性をキョロキョロ物色しているので、結構すぐわかる。餌食になっている友だちに「今、痴漢に遭ってない?」と事実確認したこともあるし、電車を降りる時に油断して痴漢の人に背を向けてしまい、手を掴んだらマークしていたその人だったことで確信したこともある。それでも、痴漢の人はだいたい認めない。駅員の人もほぼ男性なので言っても信じてくれないということもあった。今ほど科学鑑定できるとか知れ渡っていない時代だったので、あきらめたのは苦い思い出だ。

結果、男の人は怖いものになり、わたしは女である自分を厭った。

もう一つ、母親や自分の中の ”正しさ” (#15)も、わたしが女の子を生きることにあまりいい顔をしなかったことも事態を加速させた。
特に、10代〜20代前半という一番女性として楽しい時期を親と同居して過ごしたことで、楽しむことは悪、という”正しさ”はわたしの中に強く刷り込まれて、今なお残って人生を食いつぶすほどの呪いとなった。

高校生の時、ルーズソックスを履くだけで母は「あら」と目を光らせた。
母はわたしが女であることを許さず、その気配を絶対に見逃さなかった。
恐怖だった。
思春期、女に変化する自分に戸惑い、さらにそれが母に疎まれている。
女になってはいけない、性のない自分でとどまろう、そう心がけた。
今思えば、母も自分の中の”正しさ”と戦っていたのかもしれない。

反動で、大学一年間限定の寮生活は暴走したものの、人生史に鮮やかに残る宝物の一年間を過ごした。
運のいいことに、その時出会った人たちはみな好意的だった。
男の子たちは本当に優しくて親切でわたしのわがままを許してくれたし、女の子たちもわたしの欠落やわがまま、気まぐれや歪さを緩やかに受け入れてくれて、唯一今でも交流が続いている。
この一年がなかったら、ここまで生きてこられなかった。

この頃、恋がしたくてしたくてたまらなかった。
母から、家族から、どこかに連れていってくれる人が欲しかった。
自分の中に空いた穴を埋めたかった。
そして、だから?、発情していた。
後でも出てくるが、わたしは性欲が抑えられない時が自分の限界らしい。
性欲は生命力なのかもしれない。

夫とつきあい始めて、男の子の友達を全部切ってしまったというところに一旦話を戻す。
わたしと夫にとって、夫を選ぶことは、他を捨てることに他ならなかった。
斎藤学先生という精神科医をされている方の著書を何冊か読んだが、共依存であるとその後ろめたさからクローズドな関係となっていくことは切り離せないのだと思う。
実際、わたしの世界には夫とわたししか存在していなくて、夫と離れないためにどうしたらいいかしか頭になかった。夫と離れれば幸せになれるという答えはまったく思いつかなかった。

恋は、夫は家族という檻からわたしを解放してくれたし、少なくとも女であるわたしの存在も許されるようになった、はずだった。

だが、結婚は新しい檻だった。
夫は、男性だけでなくわたしが外の世界を持つことも嫌がった。
大学時代から続くわたしの友人や、仲の良いママ友を「嫌いだ」ということを憚らなかったし、夫が気に入った人以外と出かけると不機嫌になった。

そうしている内に、広がったはずのわたしの世界は、再びどんどん狭くなっていった。
前回の話で触れた”正しさ” は夫によってさらに狭く細く強固に上書かれ、補強されていった。
女であることが許されたわけではなかった。
夫の許す範囲で女を演じることを許された、いや強要されただけだった。

ただ、夫は正解だ。外の世界、そして男性はまちがいなく危険だ。
わたしを離婚へと導いたのは、外からやってきた男性だったのだから。

夜は空虚な心にケーキと甘いコーヒーを流し込んで酔っ払った。
お酒が飲めなかったことは幸いだった。
わたしの世界の唯一の男性である夫がかわいいと言ってくれるのだから、女としてのわたしに必要なものなんて何もなかった。
美容院には三年に一度しか行かなかった。みるみるうちに体重は増え、○ニクロのXXLしか着る服がなくなった。
肩こりがどんどん酷くなり、エステではなく整形外科のマッサージに通った。だるくてだるくて体が全然動かない。歩くことすらほとんどなかった。
ボサボサで艶のない真っ黒な髪に日焼けして手入れもしていないかさかさの肌、たるみきったお腹に太い脚、猫背でまんまるの顔をした醜いわたし。
鏡を見ることも嫌になったし、なるべく性別を感じさせないルーズな服を着るようになった。大学の友だちと会う回数は減っていったし、会社の飲み会の誘いも自然に減っていった。
なるべく外では幸せそうにした。
わりと明るめの前向きな妻と子供の面倒を見てくれる優しい夫、貧乏でもそこには愛があるからだいじょうぶ、的な方向性で行くことにした。
そして、わたしは自分の中ですら「素敵なワーママなんて世の女性たちは大変。わたしは愛されてるから大丈夫だけど。」とか嘯いて自らを欺いた。
この時期、夫にとっては心地よい毎日だったことだろう。

…だけど、体が重い。
それなりには、たのしい。
ただ、わたしの世界の端っこがすぐそばにあるのだった。
笑っている目の前にいるのは、〇〇ちゃんのママで子どもの世界の住人だ。
わたしの友だちではない。
親しくはなったけど、母親としての立場で話をしなくてはいけない。
迂闊なことを言ったら、噂話に子どもまで巻き込まれてしまう。
「優しい旦那様ね」と言われたら、間違っても「いや、あの人生活費払わないんですよ」とか「でも夫とはセックスしたくないんですよね」とか言ってはいけない。当たり前だ。
24時間、母親で妻で、ただのわたしでいる時間はなかった。
満たされないのに、子どもに愛を注ぐわたしはカラカラに渇いていた。

母でも妻でもないわたしでいられる唯一の場所は、会社だけだった。
もちろん仕事をするので、仮面は被っていた。ただそれは紛れもなくわたしで、被っている仮面は自分の利益を守るためだから苦痛はなかった。
会社では旧姓を使った。
夫の話はあまりしなかった。
「まじめな〇〇さん」と言われ、本当は違うけどそれで十分だった。
本当のことを言う必要も、嘘を言う必要も無理に笑う必要もなかった。
部署のメンバーに恵まれ、会社が楽しくなっていった。
そして、大学の頃の楽しかった記憶と気持ちが鮮明に蘇ってくるようになった。

そうこうしていたら、今度は外見を気にしなくてはいけなくなった。
子どもが大きくなって、外の世界と自分の環境を比べるようになったのだ。
「〇〇ちゃんちのお母さんはお化粧してきれいなお洋服を着ているのに、なんでママはお化粧しないの。」
…ごもっともすぎた。
どうやら子どもは素敵なお母さんが好きらしい。
少しお化粧をする、なんなら眉毛を描くだけで、やたら嬉しそうだった。
子供と一緒にマニキュアを塗るようになった。
なぜだろう、子どもはわたしを明るい方に連れていくのだ、いつも。
おそるおそる、外の世界に目を向け始めた。

そんな生活が続く中、わたしは性欲に苦しめられるようになった。
大学時代の話を書いた時にも書いたが、わたしは外に出たくなる限界に達すると発情するらしい。
セックスは ”正しい” かどうかわからないグレーゾーンにあった。
夫とする分には ”正しく” 、他の人とするのは ”正しくない”行為だから。
それに、発情したわたしの性欲は ”正しさ” が唯一勝てない相手だった。
性欲は自分を抑えれば抑えるほど増殖して、わたしの中のごまかした部分の辻褄を合わなくした。性欲は、生命力の強さに比例するのかもしれない。

そして、夫とやりたくないのに、何回かやった。
性欲は一瞬満たされたけど、心がぐちゃぐちゃになって自己嫌悪に陥り、吐きそうだった。
こんなにまでして生きようとしていることが罪深くて恐ろしかった。
している間の薄汚い自分がどうしようもなく許せなかった。
やった後の機嫌のよい夫に鳥肌がたった。
世間から見たらただの夫婦なはずなのに、わたしは追い詰められていった。

もう、セックスしたくない。
誰に対しても、心を二度と開けたくない。
女でいるのは苦しい。
ありあまる性欲は食欲に転換され、自分を甘やかし続けた。
結果、どんどん太り続けた。

他の人はこういう時に不倫するのかな、と思う。
わたしは不倫を否定しないし、不倫する人を責める気もない。
わたしはしなかったのではなくできなかっただけで、できたらいくらでもしただろう。
そして、そうできていたら離婚しなかったかもしれないと思う。
その時は不幸にもできなかったのだ。今となっては幸運に思う。

これは、#1 が起こる数年前からの話だ。
徐々にひび割れを起こしてきていた、離婚の予兆だった。


既婚男性で「うちの妻がどんどん太って困ってる」とお悩みの方、最後までたどり着かれたでしょうか。思いの外、長くなってしまいすみません。
でも、嬉しいです。
いやなこと書いてあったのに、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

あなたの奥様はだいじょうぶでしたか?
どこにも当てはまらなかったなら幸いです。
一つどころか全部当てはまっていたとしても、ここに辿り着かれた方ならきっと今からでも間に合います。

どうか、どんな時も奥様の一番の味方でいてあげてください。
けんかした時は、奥様を逃がしてあげてください。
どうか少しだけ、待ってあげてください。
奥様をもう少しだけ、見てあげてください。
ただ、見てるだけでいいですから、お願いします。
そして、嫌がることはしないであげてください。
もう一度、少しだけ待ってあげてほしい。
いつもいつも向き合わなくても、そっと隣であるいは少し遠くで見守ってあげても、伝わります。

それぞれの女にそれぞれの事情があります。
夫婦であるうちに、どうかその事情に寄り添って、事情ごと妻を愛してあげてほしい。そう、願っています。勝手ですが。

あと、痴漢によく遭って困っている女性に言っておく。
今度されたら、叫ぶって心の中で決意してください。二度ときません。
それだけ。
痴漢は自分より弱い人のところに行くだけなのです。強くなればいい。

最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。



本日のひとりごと

・言語化してスッキリした
・なんでこんなに長くなっちゃうんだろう
・数年前、「なんで結婚したの?」って聞いた友だちにうまく答えられなかったけど、一連のこれが答えかもしれない。
でも、これ裏垢なんですよ。
でも、読んで欲しくなってきちゃったな。

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