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【本の紹介】『3分で読める!コーヒーブレイクに読む喫茶店の物語』

 月1で取り上げようと思っていた、本の紹介(もはや名言の紹介ではなくなっている……)が1月は途絶えそうなことに今日気が付いたので、最近読んだ本をピックアップする。
 基本的に小説は取り上げるつもりが無いのですが……。今回は短いのでお気軽にどうぞ。



 ご存知の方、読んだことのある方もいらっしゃるかと思う。3分で〇〇、5分で〇〇のシリーズだ。普段noteで短編やショートショートをお書きになっている方にはお手本となる一冊である。

 この本のテーマは「喫茶店」。長さは、38字×17行×8頁。約4000字から5000字というところだろう。その中でストーリーを展開し、最後に読み手を呻らせ・驚かせ・感動させる、25名の25作品が掲載されている。


 実は年末に、喫茶店が舞台のお話を書いたばかりなので、手が止まった次第である。

 あのピリカ様を筆頭とするドリームチーム(勝手に命名)が行ったクリスマス企画で、課題となる前半ストーリーの後半を書くというものだった。4つの課題のうち1つは喫茶店が舞台で、私はそれの後半を書いた記憶が新しかったため、本書に惹かれたのだった。

 ついでにリンクを貼っておくので、良かったらどうぞ。


 さて本書の方だ。

 誰が書いているのか気になると思うので、目次を載せておこう。


フレンチプレスといくつかの嘘 岡崎琢磨
おみくじ器の予言 佐藤青南
婚活ドリームチーム 柊サナカ
新花のあんばい 城山真一
珈琲占い 志駕晃
全裸刑事チャーリー股間カフェ 七尾与史
アットホームじゃない職場 蝉川夏哉
高架下の喫茶店 柏てん
麻野と理恵の謎解きカフェごはん 友井羊
銀河喫茶の夜 黒崎リク
アンコール 青山美智子
ピートの春、その後 乾緑郎
雨の日のモーニング Swind
迷庵にて 三好昌子
儲け話 塔山郁
睡魔 梶永正史
おじいさんと猫の喫茶店 高橋由太
鳥籠 深沢仁
子供お断り 堀内公太郎
シュテファン広場のカフェ 山本巧次
一杯のための物語 岩木一麻
最高の寝床 沢木まひろ
喫茶「交差点」のドッペルゲンガー 喜多喜久
モンブラン死すべし 降田天
「愚痴喫茶」顚末記 海堂尊

目次より


 知っている名前も知らない名前もあるかもしれない。

 「このミス」受賞者が7,8割で、あとは「小説家になろう」からのデビュー作家などもいらっしゃるようだ。

 オムニバスの良い所は、ここから作者を知り、デビュー作へ手を伸ばすきっかけになるところだな、とつくづく感じる。


 また、この本を推す理由の一つは編集である。さすがはプロの編集部。

 本書を開くと、タイトル・目次・本文・執筆者プロフィール、だけである。「はじめに」も「おわりに」も無くシンプルで潔い。目次の各タイトルの横に一行の紹介文が載っている程度だ。

 並び方も最初から順番に読むと気持ちの良いコースになっている。こうしてみると、最初の作品は非常に重要なポジションだな、と思う。

 「フレンチプレスといくつかの嘘」は、王道ミステリーだ。4,5000字で王道をやってのける(そして読み手に最後まで気づかせない)話の展開は圧巻である。この1本で「あ、この本、面白いぞ」と思わせ、次の頁をめくらせる。

 「おみくじ器の予言」「婚活ドリームチーム」と喫茶店を舞台にした、心地良いミステリーの後に「新花のあんばい」という少し異色の話が置かれ、次第に喫茶店の中から外へと物語の舞台が自由に広がっていく。

 コメディもファンタジーも、著者によってそれぞれに解釈された「喫茶店」が描かれ、最後には病院の「愚痴喫茶」開店の危機で幕を閉じる。


 当然、執筆者はみなデビュー作家だ。私のような素人と異なり、25本中25本、すべての作品のレベルが高い。ミステリーとして、読んでいる途中でオチの想像がつくものもあった。まあ、正直5000字の短編では伏線を気づかれないように張るのも厳しいだろう。だがオチの提示の仕方が良いのである。

 手品師が空っぽの箱から遺失物を取り出す時、箱に手をかけた瞬間見ている側は「まさか」と思いながら出てくるところを想像するだろう。その時の手品師の手つき、見せ方が重要だ。そういう描き方を是非とも見習いたいところである。


 ところで、こうして改めて目次を見ると、良いタイトルとは、というのを考えてしまう。

 私はタイトルをつけるのがとても苦手で最後まで悩む。読む前に目次を見た段階で「読んでみたい」と思ったタイトルは比較的長めのタイトルだ。ピックアップしてみよう。

「フレンチプレスといくつかの嘘」
「おみくじ器の予言」
「全裸刑事チャーリー股間カフェ」
「麻野と理恵の謎解きカフェごはん」
「喫茶「交差点」のドッペルゲンガー」
「モンブラン死すべし」

 だが、読んだ後で総合的に「これが個人ランキングで上位だ」と思うタイトルとは実は異なる。


 またタイトルだけでは「これどんな話だったっけ」と思ってしまうものもある。これも申し訳ないけれどピックアップしてみる。

「高架下の喫茶店」
「麻野と理恵の謎解きカフェごはん」
「迷庵にて」

 重ねて言うが25本中25本とも面白いのである。「高架下の喫茶店」は私が書きたい話だし、「麻野と理恵の謎解きカフェごはん」はこういうミステリーが書きたくて今ひたすらミステリーを読んでいる最中だ。「迷庵にて」はこの本の中でもトップ5に入るくらい好きな作品だ。

 こうなると、タイトルが長い方が良いわけでもない。

 「睡魔」や「鳥籠」は2文字のタイトルだけれど、タイトルを見た瞬間「あの話だ」とピンとくる。


 私のような素人ものかきの端くれの教科書の1つであることは確かだ。ご興味のある方は是非手にお取りください。



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