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#エッセイ
金曜夜のタクシーと、『禁じられた遊び』と
それは春と夏の間の金曜日で、私は大学3年生だった。
当時、片道1時間半以上かけて千葉の実家から通学していたので、バイトや飲み会の日は最寄駅に到着するのがだいたい午前1時。
そこから10分ほどタクシーに乗って帰宅するのがいつものパターンで、その日も例に漏れずそうだった。
駅前の乗り場に滑りこんできたタクシーに乗り込むと、「こんばんは」と穏やかな声。年は父と祖父の間くらいだろうか。やさしそうなおじ
「私」を構成する、「私」以外のなにかについて
「私」というのは、とても曖昧な存在だ。
0歳の私、10歳の私、20歳の私、今の私。全部同じ「私」であるはずだけど、本当にそうか?の保証はどこにもない。
頭の中におぼろげに残るいつかの記憶だって、それが本当に存在したものかどうか、確かめる術もない。もはや記憶から抜けおちてしまったことは、“はじめからなかったもの”と変わらない。
初めて食べたケーキの味。小学生のころのお気に入りの靴。人生で初めて
すべては“泣く”の代替であること
大学生のころ、表参道にある某有名結婚式場でアルバイトをしたことがある。
服装・髪型やドリンクの注ぎ方、配膳の仕方など、色々細かいルールがあったけれど、これだけは守れと教えられたのは「絶対に泣いてはいけない」だった。
友人代表スピーチや、両親への手紙。様々な感動ポイントが盛り込まれている中でそれを守るのはなかなか辛いものがあったが、悲しいかな人の感性は麻痺していくもので、何度か数をこなすうちに淡
さよならバックパック。と、母でない私
最寄駅前のミスタードーナツでこれを書いている。
深夜1時まで開いているから、夜どこかにふらっと出かけたくなると、ついここへ来てしまう。
カフェインレスコーヒーがあるのもいい。食べようと思っていたエンゼルクリームは売り切れていたから、2番目に好きなゴールデンチョコレートにした。
カウンター席には、男性の1人客が3組。均等に間を空けて座っている。電車の座席もそうだけれど、こういうとき、誰かと隣り
「都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ」
渋谷と新宿。2つの街で繰り広げられる物語を満たすのは、ステレオタイプの“都会の孤独”だ。
最果タヒの詩集を原作にした映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』を観た。
ガールズバー、日雇いバイト、工場でつくるお弁当、人身事故、死の影、歌えないカラオケ。
正直、こういう都会の描かれ方はちょっと飽きた。けどやっぱりこれが東京だ、とも思う。
都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
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