スリランカは、有機農業だとすべて「善」、化学肥料はすべて「悪」的発想で、卒倒しそうな政策を打ち出してます。国内の農業をすべて有機生産とする世界初の国となることを目指しているが、その取り組みのあおりを受けているのが、主要産業である紅茶だ。生産量が激減すれば、低迷している経済に新たな打撃を与えかねないという懸念も生まれている。
2021/09/12 (SUN)、本日ネットを徘徊して気になったニュースで取り上げたのが、私の住んでいるスリランカの、
セイロン紅茶の危機? スリランカ有機革命の波紋
たぶん、APP通信の元ネタは、
Rajapaksa’s experiment with organic farming in Sri Lanka a warning to developing countries
だと思うんだけど、まあ、スリ政府は、有機農業だとすべて「善」、化学肥料はすべて「悪」的発想で、卒倒しそうな政策を打ち出してます。
スリランカは、国内の農業をすべて有機生産とする世界初の国となることを目指しているが、その取り組みのあおりを受けているのが、主要産業である紅茶だ。生産量が激減すれば、低迷している経済に新たな打撃を与えかねないという懸念も生まれている。
ゴタバヤ・ラジャパクサ(Gotabaya Rajapaksa)大統領は今年、化学肥料の輸入を禁止する方針を発表し、有機農業の推進を開始した。しかし茶園主は、10月にも生産が落ち込むと予想。シナモンやコショウ、さらにコメなどの主要産物の見通しも暗い。
コロンボ(Colombo)南方160キロのアハンガマ(Ahangama)で世界有数の高級な紅茶を生産しているハーマン・グナラトナ(Herman Gunaratne)氏(76)は、化学肥料の輸入禁止により「紅茶業界は大混乱に陥っている」とし、政府が方針を変えない限り、スリランカの紅茶の年間平均生産量は約3億キロから半減する恐れがあると語った。
スリランカは、新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機の真っただ中にある。国内総生産(GDP)は昨年、3%以上縮小。政府はプラス成長への回復を期待しているが、その見通しも新たな感染の波の影響で危うい。
紅茶はスリランカの主要な輸出品目で、同国の輸出収入の約10%を占め、年間12億5000万ドル(約1370億円)以上をもたらしている。
グナラトナ氏が生産する「バージンホワイト(Virgin White)」ティーはキロ当たり2000ドル(約22万円)の値が付く。同氏は、有機革命を主導するラジャパクサ大統領が起用した46人の専門家の一人だったが、先月、ラジャパクサ氏と意見が対立。大統領肝煎りの「グリーンな社会経済(Green Socio-Economy)」を推進する作業部会から外された。
グナラトナ氏は、スリランカ産のセイロン紅茶の化学物質含有量はあらゆる茶の中でも最低レベルで、害はないと主張する。
え?何が悪いんだって?有機野菜は安心、安全だろうって?私の妻もよくそう言います。「どう?このオーガニック野菜?自然の味で美味しいでしょう?」というが、私から見るとへなちょこ有機農法で作られた発育不全の野菜にしか見えない。日本の有機野菜はそんなことはないと信じたいが。
"巨大企業は悪、零細中小は善"なんて嘘だ
日本のメディアはワンパターンな記事が好きだ。「有機農業は善、農薬は悪」「巨大多国籍企業は悪、零細中小は善」「経済成長よりは環境保護」「モノよりは心」……。だがそれは現実を無視している。「食生活ジャーナリストの会」代表の小島正美氏は「このままでは日本は世界から取り残される」と説く――。
その通りなんだよなあ。
「有機農業は善、農薬は悪」
「巨大多国籍企業は悪、零細中小は善」
「経済成長よりは環境保護」
「モノよりは心」
おおっと、おゼゼがないとそんな宗教みたいなお題目は画餅にしかすぎません。アホじゃないかね?
ただ単に工業製品である化学肥料を放逐し、遺伝子操作作物は排除するってだけで、持続性の有る農業が確立できるんでしょうかね?
【MetabolicのCE最前線】有機農業 vs 環境再生型農業
よりサステナブルな食料システムの構築を目指す上で、有機農業については相反する意見https://bit.ly/3C6ToXgがある。有機農業は食の生産から化学肥料を排除することを主たる目的とし、従来型の農業に比べ数々のメリットはある。一方で、この方法で同じ量の食料を生産するためには現在よりもさらに広大な自然の土地を切り開いて農地に転換しなければならないなど、課題も指摘される。
有機栽培の収穫量は、従来の収穫量に比べて平均25%低いことがわかっている。 2100年までに世界人口は109億人に達すると予測される中、収穫量の低下は、有機農業の基本的な手法を改善しない限り、土地利用量や森林破壊の増加につながる可能性がある。これらの研究は、同じ農場で同じ作物を栽培することを前提としているため、短期的には非常に合理的だが、ある作物を他の作物よりも良く栽培できるようになったり、将来の生産のために土壌を再生したりする有機農業の可能性を否定することになる。では、有機農業に取り組む意味はあるのだろうか。
有機食品生産の主な問題点は、従来の農業よりも生産性が低いことや輸入量が増える可能性があるということではなく、現状の食料生産における課題解決につながらないことだという。
「正しい方向への一步ではありますが、私たちが目指すべき目標を達成するのには足りないのです」とショー氏は話す。 「例えば、オーガニック認証を受けた食材も、何千キロもの距離を輸送されます。すべてを有機農業で生産するだけでは、私たちに必要な自然の状態を実現するには不十分なのです。単に農薬を減らすだけでなく、よりリジェネラティブな方法で農業を行う混作・複合型(ポリカルチャー、同一空間の中で複数の作物を栽培し、自然の仕組みを模する)システムに移行するなど、より複雑なシステムとして考える必要があります」
有機農業の定義
有機農業とは一般的に、農薬・合成肥料・下水汚泥・遺伝子組み換え・電離放射線などを使わず栽培する方法を指す。食肉・鶏肉・卵・乳製品を生産する過程で、家畜には抗生物質や成長ホルモンを投与しない。
ある意味で、有機農業とは農業の初心に立ち返ることだ。20世紀以前はすべての食料は「オーガニックな」方法で生産されていた。しかし農業部門の工業化に伴い、生産効率を高めるために化学肥料や化学農薬、遺伝子組み換え食品などが導入された。
農業分野における規制はほとんどが自主規制のため、有機食品の国際的な定義はない。有機農業に関しては、EUの規制を始めさまざまなオーガニック認証制度や規制、要件などが乱立する。
ショー氏は、オーガニックが良いのか悪いのか判断するのが難しいのは、明確な定義がないことが原因だと主張する。「オーガニックにはさまざまな認証基準がありますが、それぞれの基準は大きく異なっています」
検討すべきトレードオフ
ほとんどすべての定義の有機農業は農薬による環境被害を解決してくれるが、他にも数多くの環境課題は存在する。ひとつの課題解決に取り組むために、別の課題が助長されてしまうこともある。
有機農業によって、生産の過程で多くの温室効果ガスが発生する化学肥料への需要を減らし、土壌に炭素隔離することで、温室効果ガスを一部削減するということだ。
しかしこれは一方で、面積あたりの生産性を低下し、自然保護区域のような生物多様性保全のために確保された土地を奪ってしまう可能性があることで相殺されてしまうのだ。さらには、もしも生産のための土地が確保できない場合、足りない食料を補うためにより多くを輸入する必要が出てくる。輸入先の土地で集約農業も行われることになるだろう。この研究は、輸送の工程によって総排出量が増加すると試算している。
すべてオーガニックにする、化学肥料や温室効果ガスへの対処だけ考える、といったひとつの解決策や分野にだけ集中してしまうことによるリスクは大きい。
このようなアプローチは、ひとつの問題から別の問題へと負担をただ移動させるだけとなってしまう危険性を孕む。二酸化炭素の排出量を減らすために他の分野のプラネタリー・バウンダリーを侵害してしまったり、土壌の質を向上させる一方で二酸化炭素の排出量自体は増加してしまったり、といった具合に。
「有機農業は部分的な変化を促すだけに過ぎず、従来型の『奪う』農業の構造上の課題を解決するのではなく、ただ農薬という悪影響を引き起こす原因のひとつを取り除いているだけなのです」とダーキン氏は話す。「しかし、従来型農業には、耕作・種の多様性の欠如、合成肥料の投入など、オーガニック認証だけでは対処しきれない構造上の問題が数多くあります」
必要なのはリジェネラティブなアプローチ
21世紀の現状では、地球は限界に近づいており、農業は被害を軽減するだけでなく、他の地球規模の問題を悪化させないようにしながらも大地を癒す必要がある。
ここで環境再生型農業(リジェネラティブ農業)が重要になるという。
「環境再生型農業とは、自然に近い形で農産物を育てることです。土壌から栄養素やミネラルを取り去ってしまうのではなく、土壌生物を増やし、土壌を作り出すのです」
生産性追求は環境保全 と相容れないのか(PDF)
宗教、イデオロギーじゃあるまいし、絶対の善、絶対の悪、ゼロか百、なんてものはこの世にないのであるよ。
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