見出し画像

【創作に活かすための読書】『グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学』② - 野次馬の作り方 -

< 前回記事 >

 前回の続きです。後半は群集行動の実証的研究についてや、パニック、テロリズム、スケープゴート現象等について記されており、あまり創作的活用に結びつかなかったので、読んで面白かった部分をピックアップしていきます。

第5章 集合・群集の行動

 「興味・娯楽・利益に基づく集合行動」において、街角群集・野次馬という項目があり、ここでの記述が個人的にとても面白く感じました。

 その内容とは「街角群集・野次馬には共通する焦点と境界が存在する」というもので、以下引用させていただきました。

……出入りは境界の内側では難しく,外側に行くほど容易である。さらに内側にいる人ほどその事態に自我関与していて,残留時間も長くなる。この境界には一定の構造がある場合が多く,人々が興味をもつ対象を中心として弓型や円形の形をとる。(引用)

 これまで「野次馬の構造」について考えたことがなかったものの、確かにそのようにして形成されるし、そのような特性をもつことは疑う余地もなく、ちょっとした感銘を受けました。こういう切り口、視点が大好きです。

野次馬の作り方

 分厚いバームクーヘンを模すようにして人々が密集し、その中心の何かへ視線を注いでいる状況を生み出すには、何より最も内側にいる人たちがその場に残り続けることが必須条件です。要するにその何人かをしばらく惹きつけるくらいのインパクトとその何かが持続しなければ、群集といえるレベルの野次馬は発生しないということです(※要検証)酔っ払いが倒れてる程度では見向きもされないし、喧嘩や口論だと危険を伴うので近づきがたいです。なので、予期せぬ著名人やストリートパフォーマーの登場くらいの注目度が必要だと感じます。

 そして、最も内側となる第1陣の存在によって、次第に第2陣、第3陣が注目し集まり始めます。第2陣の意識レベルとしては、単純に出遅れただけで第1陣とさほど変わらないように思います。この層の人々は第1陣が去れば、その空きを埋めるくらいに強く注目している割合が多いはずです。第3陣、第4陣になると徐々にその割合は減り途中退場者も増えていきます。第5陣にて分厚いバームクーヘンが完成するものとすれば、第6陣はふと寄って、すぐ立ち去る層、第7陣はやや近づきはするが立ち止まりはしない層、第8陣はその方へ視線を向けるが全く距離を縮めようとはしない層……。

 このように大雑把に層を分けて考えると、内側から外側へ向かった意識レベルのグラデーションが浮かび上がることが分かり、大まかな「野次馬の構造」について把握することができます。

 突き詰めれば「第1.5陣」「第50陣」のように、もっと細かく分類ができるはずで、私にはその細かな心理状況を段階を踏んで考えることが本当に楽しく感じます。「第2陣、第3陣が第1陣と同じレベルで注目する状況とは?」や「最も外側でないどこかの層だけが一気に退去したとすれば、その原因とは何か?」等々もはや哲学的気配を感じる思考を試すことがすごく面白く感じます。(しかし、創作に役立っているのかは微妙なところです)

『グループ・ダイナミックス --集団と群集の心理学』はひとまず終了

 創作のためにと買った学術書が溜まっているので、今後もnoteに書きつつ消化していきたいと思います。またドンドン新規購入もしていきます。

あとがき

バームクーヘンかドーナツかで数秒迷いました。

街角群集・野次馬とは別に、お祭りなどで生まれる「祝祭群集」ではトップの画像のように第1,2,3くらいまでの意識レベルがかなり高い状況となることを、ぱくたそさんで写真素材を探している際に気づきました。

街角群集・野次馬は、まったく予期せぬ偶然であり基本的に無関心な人々のいる場所で生まれるからこそ、「意識に段階的なムラ(グラデーション)ができる」のだなと、その性質の差を感じました。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?