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【金管楽器】見逃しがちな練習3選③
おはようございます。音楽家、チューバ奏者のKazzです。
このnoteはコロナ禍で音楽の機会が減っている全ての人に、何かしらお役に立てることはないか、と昨年550日連続で書いていたnoteの第二章的なものです。
基本的には今自分自身がプロ金管楽器奏者、指揮者という音楽家になるまでにした成功体験や失敗体験をもとに同じ苦労をしてほしくないという思いのもと書いています。誰かの役に立っていたら幸いです。
過去2記事
今日は僕が英国の師、BBC National Orchestra of Walesのチューバ奏者であったNigel Seamanから教わった最も大きな収穫、エアー・アタックの話です。
この練習法は全ての管楽器奏者に有効ですし、さらに言えば全ての練習に通ずる汎用的なものです。
エアー・アタック
結論から書くと、方法は簡単で楽譜にあるどんな音符も楽器を使わずに息のみ、つまりエアーのみで全て吹く練習法です。
これを行うことにより、楽器で演奏した時に鳴りが倍は変わりますし、細かい音符、早いフレーズもよりクリアに聞こえます。特にチューバや管の長い楽器には効果的です。
楽器が鳴らない=息が入っていない
これまで何度も書いてきた通り、楽器が共鳴=鳴るには楽器の中の空気を振動させる、つまり息を吐き→唇を振動させて空気の振動を生む必要があります。なのでこの振動の発生源、息がしっかり出せていないと単純に楽器は鳴らないという風になります。
何でもそうです。タンギング、リップスラー、細かい動き、高音域&低音域の演奏、こういうことがうまくいかないと相談を受けます。
いつだって答えは一つです。息が入っていません。
頭の中に鳴っている音楽うんぬんは別として、金管楽器において奏法における何か理想通りに行っていない時は、ほぼ90%息が入っていないことだと僕は思っています。
なのでその息、この場合はエアーのみで練習を行うのです。
エアー・アタック
例えばPomp and Circumstance no.1 / E.Elgerのチューバパート冒頭
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多くの奏者がモゴモゴとはっきりしない演奏になりやすいですが、この楽譜をそのまま楽器を使わず、全て息だけで練習をします。
その際、息の量は常時MAX、ダブルであろうとトリプルタンギングであろうと全てはっきり息のみで吹きます。
この際に3点より効果を高める方法があります。
①息の量はMAXで
蝋燭の火も消せないような少ない息の量でやっても何の意味もありません。この練習は楽器で演奏した時により負荷を楽にしてより響かせるためのものなので息だけでやる時は楽器で吹いている時の何倍も息を入れます。
②音価は必ず守る
全音符の時に一瞬「ふっ」と吹くだけではなくふーーーーーっ!としっかり4拍分伸ばします。例えば、上記2回目のダブルバー9小節目の二分音符もしっかり二分音符分、息を抜かずにロングトーンをしているかのように吹き続けます。
③スラーがかかった先の音にも息を通す
この三つのヒントのうち最も重要なのがこの③です。
例えば上記譜面のAnimatoの箇所、息をロングトーンのようにふーっと出せばいいように感じますがそれは違います。
タンギングをせずに息を「ふぅー!うー!うー!うー!」という具合に一音ずつキープしつつ吹き直すのです。これはどんなスラーでもそうです。これが本当に効きます。
まとめ
フィンガリング、歌う、バジングだけと楽器での演奏を分解して練習を行う方法はよく紹介されますが、この息だけというのはあまりされません。
しかし、効果は抜群です。
少々キツイところもありますが、筋トレだと思ってぜひチャレンジしてみてください。
最後に
3章にわたってお送りした【金管楽器】見逃しがちな練習3選ですが、いかがだったでしょうか?
当たり前のこと、よく言われていることと文章で読むと思われると思いますが、意外と実行していないなと感じたり、いや普段からやっているよ!と思われるものもありましたでしょうか?
こういうことを考えている時によく思うのが僕たちプロはプロになったからこういうことをやっているのではなく、こういう地道な練習や練習方法の編み出しに耐えられる「好き」という気持ちがあるからここまで来られたのかなと思います。
僕は楽しくない練習は必要ないと思います。つまり、楽しく練習できるようにいつも「どんな演奏をしたいか」、そのためにこの練習をするんだという目標を持ってやってください。
そして、この何もかもが手軽に早く、インスタントにできている世の中で、楽器の上達は時間がかかります。夢のような奏法やアドバイスは夢のように消えていきます。自分で考え、何度も練っていく、つまり練って習うことで自分だけの永遠に残る奏法を身につけることができるのです。
僕も何でも吹けるように頑張ります、そしてみなさんを応援しています!
All the best, my brass friends!
Thank you
Kazz
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