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ナナ

18〜19歳の頃、沖縄料理の居酒屋でアルバイトをしていた。

当時まだ沖縄に行ったことはなかったけれど、沖縄の青い海、のんびりと流れる時間、ラブ&ピース的な雰囲気を東京の居酒屋でも少しは感じられるのではないかと思い、始めたのだった。お店のBGMは、大体いつもかりゆし58かBEGIN等沖縄系J-POPのアルバムがかけられていた。

実際にアルバイトを始めてみると、そこで働いているのはバックパッカーや歌手を目指す夢追い人など、自分が今までに出会ったことがないジャンルの人達ばかりだった。私はそんな未知の環境にビビってしまい、始めの頃はかなり人見知りをしていた。

そんな時、私にとても優しく接してくれたNさんという女性がいた。

Nさんは、旅人だった。アルバイトをしてお金を貯め、ある程度の額が貯まったらふらっとバックパック一つで旅に出るような生活をしていた。Nさんは腰くらいまでの長い髪にパーマをかけ、いつもエスニック系の服やアクセサリーを身につけていて、見た目は少し怖そうだったが気さくでとても良い人だった。

ある日、私はNさんと休憩が一緒になった。仕事中にはなかなか聞く機会がないが、Nさんが何故そういった生活をしているのかがとても気になっていたので、質問してみることにした。

今思えば相当失礼な聞き方なのだが、

「Nさんは何でフリーターで旅人みたいな暮らしをしているんですか?不安になったりしないですか?」というようなニュアンスで聞いてしまった。

するとNさんは、

「不安にはならないよ。今の生活は、明日自分が何をするかを全部自分で決められる。だから毎日が新しいし、毎日が楽しみ。」とクールに熱く答えてくれた。

その時の、「自由」に対する大きな希望と覚悟、それと少しの不安が入り交じった表情が忘れられずかっこよく、その時から今でも、密かに私はNさんの生き方に憧れを抱いている。

しかしそれから半年後、Nさんは沖縄料理屋のアルバイトを辞めてしまうことになる。Nさんの往年の憧れでもあり、自身のルーツでもある沖縄に移住するのだそう。去り際に、

「色んな所に流れて旅をして、かもめと暮らすの」と何だかスナフキンっぽい(?)名言を残していった。

・・・それからさらに4~5年後。Facebookでのみ繋がっていたNさんの結婚報告をタイムライン上に発見。お相手は、移住先の沖縄で出会った方とのこと!

人の結婚報告で珍しくテンションが上がったのと同時に、あの時感じた「自由」への覚悟がNさんの人生を作る根っこにあるものだったのかなあと思った。別に結婚が人生の全てではないけれど。

私も今や、最初に出会った頃のNさんの年齢を越しかけている。今でも変わらず「自由に生きたい」と思い続けてるけれど、自由に対する不安にはなかなか勝てていない。来年こそは、自分のやりたいように生きる!そう意気込んでいる年の瀬であります。


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