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⚾支柱ー斉藤北斗がいる限り、武蔵大学は強いー

武蔵大学のベンチでひときわ大きな声が聞こえる。気が付いたのは、昨年(2021年)の横浜市長杯であった。声の方向に目をやっても、主はわからなかった。

気のせいだったかな。自分の耳を疑っていたら、またあの声が聞こえた。

『えらいぞ!!』

その正体は、背番号9をつける斉藤北斗選手だった。時々、外野手で出場する選手だ。どこの誰より大きく通る声だったので、印象が強く残った。どんなプレーであったかは忘れてしまったが、選手の一つ一つの動きを見逃さず、称賛していた。その日から、斉藤選手のことを気にするようになった。

武蔵大学は首都大学野球連盟の一部リーグに所属している。2017年の春に一部昇格を果たしてから、好成績をたたき出し、三年連続の横浜市長杯出場を果たしている。私は斉藤選手のことを、さらにチームの勢いをつける貴重な人材と見た。

秋が終わり四年生が引退した。すぐに新チームが発足し、早速オープン戦を見に行った。11月の半ばごろの話だ。信じられない光景が飛び込んできた。

斉藤選手がマスクをつけている。


少し前まで捕手登録であったが、チーム事情で外野手にコンバートをしていた。それは絶対的な扇の要である、鹿倉凛多朗選手(現:鷺宮製作所)の存在があったからだろう。それではなぜ、捕手に戻ってきたのだろう。何となくの予想はついた。

それは、武蔵大学の外野手のレベルの高さにある。外野には一年次より活躍を続ける松下豪佑選手に、俊足好打の茂木陸選手の二人がいる。そのほかにも攻守に長けた選手が多数在籍する。斉藤選手は生き残りをかけて、勝負に出たということだ。色々な要素があったと推測するが、踏み切ったのだ。捕手 斉藤北斗の再来に、私は希望しか見出せなかった。春はどんなチームになるのだろうと、想像を膨らませた。


―――

冬をこえ、春を迎えた。どんな物語が生まれるのだろうかと、私は期待していた。近年、争いの激しい首都リーグは、予測をつけることなど不可能だ。期待と不安と楽しみと、複雑な思いが絡まった。その心配など無用だった。

リーグ戦が始まった瞬間、斉藤ワールド全開であった。期待通りだ。彼の特徴的な物言いに、勝手ながら斉藤語録と呼んでいる。

素晴らしい!
えらいぞ!
よくやった!

仲間のプレーに対して、必ず前向きな声をかける。それは先輩後輩というより、どこか家族のようなあたたかみさえある。このセリフが聞こえると、思わず私も頬が緩む。ピンと張り詰めた、試合の緊張がほぐれていくのがわかる。場の空気を操ることができるのだ。

優しい言葉をかけるだけではないのが、斉藤選手の良さだ。課題や何か感じたことがあれば、すぐに訂正点として相手に指摘する。この行動こそ、投手陣との信頼関係構築に繋がったのではないかと私は見ている。広い視野をもち、それを適切に伝える姿に感銘を受けた。

武蔵大学 斉藤 北斗 選手(日大鶴ケ丘④)

今季も大混戦した春季リーグ戦。チームの順位は三位であったものの、最後まで優勝争い繰り広げた。斉藤選手は、ベストナイン捕手として初表彰された。この春、チームを盛り立て、投手を支え、自身も打撃で活躍を見せた。まさにチームの支柱といえよう。広い視野で物事を見ながら、自分自身の結果を残すことがどれだけ大変なことか。彼はそれをやってのけた。

いつも斉藤選手がみんなにかけている言葉を、今回私は声を大にして言いたい。

素晴らしい!!!!!!


嘘偽りなく、純粋に素晴らしい選手だと伝えたい。声を張り上げるなんて、誰でもできる。そう思われるかもしれない。しかし、常に頭の中に言葉が浮かばなければ、真っ先に声には出ない。それは普段から周囲を見渡し、自分の中に落とし込んでいる確固たる証拠だ。

こういう選手がチームの雰囲気を良くし、人に影響を与える。言葉だけでなく、行動(結果)でモノを見せているからだ。野球人として、人としてお手本のような存在である。

斉藤北斗がいる限り、武蔵大学は強い。私は絶対にそう言い切れる。そして今後も、このような志の高い選手は続々とあらわれると信じている。貴重な存在であるからこそ、切らしてほしくないとも願っている。

―――

大学野球は四年間という限られた時間の中で勝負をします。どうやったら試合に出られるだろう。どうしたら生き残れるのだろう。一人ひとりみんな必死です。腐ることはいくらでもできるし、折れることもたくさんあったでしょう。それでも自分が『活躍できる方法』を見出して動いた。それが斉藤選手の全てだと思います。

開花できる選手の特徴は様々あります。どれが正解だと、一概に括ることもできません。ただ、私が見てきた中では素直であること。そして、心に優しさとあたたかみがあること。規律を守り、真摯に向き合うこと。これができる選手が、輝いているように思います。

技術はもちろん大切です。しかし、それだけではないと野球を見て常に感じています。人間性とか人間力とか、漠然とした表現しかできないことを非常に悔しく思います。それでも間違いなくいえるのは、最後はやっぱり『人間性』です。

秋も必ず活躍してくれるだろう。どんなプレーを見せてくれるのだろう。私は、斉藤選手のラストシーズンをとても楽しみにしています。また新しい素敵な選手もでてくることでしょう。最後の秋も応援しています。

背番号12は昨年の鹿倉選手の番号。このバトンもとても素敵ですね。

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