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【泣】少年野球に熱中した父親の末路(全28話)

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3人の息子との足かけ13年にわたる「少年野球生活」を振り返り、親が子どもの習い事にのめり込んでいく過程と、その愚かさ、切なさを等身大に描く。少年野球(学童野球)に関わるすべての大…
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#引退試合

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(1)

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(1)

~プロローグ~

 私には3人の息子がいる。
 彼らを仮にイチタ(長男)、ジロウ(次男)、ミツキ(三男)と呼ぶことにする。イチタは現在大学2年生、ジロウは高校1年生、ミツキは小学6年生だ。
 3人とも小学生の頃、同じ学童野球チームで野球をやっていた。地域に根ざしたごく普通の少年野球チームだが、正確に言えばミツキはまだ所属していて、約3ヶ月後、12月初旬に行われる公式試合を最後に卒団することになる。

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【泣】少年野球に熱中した父親の末路(20)

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(20)

 とうとうミツキの引退試合の日が決まった。来週の土曜日だ。
 今日の雨で延期になった準決勝が午前中に行われ、もし勝てば午後から決勝戦となる。
 ローカル大会なので1位になっても上の大会につながって行くわけではないが、最後の大会を優勝でしめくくりたいとミツキも張り切っている。
 
 雨で暇になったので、ミツキの希望でバッティングセンターに行った。いつものところではなくちょっと離れたところに行ってみた

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【泣】少年野球に熱中した父親の末路(21)

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(21)

 2ヶ月も更新が滞ってしまいました。
 私の稚拙な文章など誰が読んでくれるのだろうと思っていたのですが、意外にも多くの方にコメントをいただいて驚きました。ありがとうございます。
 末っ子ミツキの引退試合の様子とその後の私について、ようやく落ち着いて書けるようになりましたので、良ければ最後までお付き合いください。

 ミツキの最後の試合は昨年12月の最初の土曜日に行われた。
 地域の小さな大会で参加

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【泣】少年野球に熱中した父親の末路(22)

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(22)

 考えてみればミツキは兄弟の誰よりも空気を読む子で、自分のことより周りを優先するタイプだ。
 そして先週、私がイチタとジロウの最後の試合について話したとき、ミツキがこう言っていたのを思い出した。

 「でもさ、『三球三振』って確かに作戦としてはアリだよね」
 「バカいえ。子どもらしく"打ちたい打ちたい”って打っちゃえよ。悔しいだろう?そんなサイン出されたら」
 「うーん、でも、打てそうにないときっ

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【泣】少年野球に熱中した父親の末路(23)

【泣】少年野球に熱中した父親の末路(23)

 その夜はお決まりのファミレスで打ち上げが開かれた。
 皆の話題は劇的なさよならホームランで勝利した準決勝に終始し、あっけなく負けた午後の決勝戦は無かったことにされていた。

 ミツキはその日のヒーローとしてもてはやされ、私もまた「よ!ヒーローのお父さん!」などとからかわれて顔が緩みっぱなしだった。

 皆の酔いが回ったころ、一番親しくしている父親に「明日からどうするんですか内野さん」と聞かれた。

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