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8年バー経営をやって今思うこと

みなさんこんにちは。
ダイニングバー FAT CATS(ファット・キャッツ)の代表・共同経営者、マサキです。

当店のテーマは「バーでレストランレベルの料理を」です。
しかし、そこに行き着くまでには何年もの紆余曲折がありました。

オープン当初

2014年6月20日に群馬県館林市の駅近くにオープンした FAT CATSは、最初の1年間、乾き物などを出すバーとして営業していました。
当時はスタッフが華美な服装にウィッグを付けたりしてワイワイ楽しくやるスタイルだったのですが、1年間を通して少しずつ増やしたフードメニューが好評だったため、2年目からは「食べ物が美味しいバー」というコンセプトに切り替えました。

元々調理を専門で勉強していた私の母 Eva(エヴァ)が本腰を入れてメニュー開発をし、だんだんと「FAT CATS は食べ物が美味しいよね」と言っていただけるようになりました。

そんな数あるフードメニューの中、3年目にはオーブンで焼き上げる鉄板スペアリブが爆発的に超人気メニューとなり、今では「スペアリブといえば FAT CATS」というイメージが近隣の皆さまに定着したという実感があります。

鉄板スペアリブ

新しいお客様も必ずスペアリブをご注文くださるようになり、中にはお席に着く前に「スペアリブ人数分お願いします」と言ってくださる方もいらっしゃいます。

新しいコンセプトがしっかりとお客様に届いて、しかも看板メニューまで作ることができたのは、1年目、2年目、3年目、それ以降とずっと当店を支え、応援してくださった皆様のおかげだと思います。本当にありがたいです。

コロナの流行とコンセプト変更

しかしコロナの流行で、当店は新たな壁にぶち当たりました。
一つは、圧倒的に来店人数が減ってしまったこと。
もう一つは、調理の負担が大きすぎること。

来店人数が減ると、どうしても食材のロスが増えます。しかしフードメニューが多ければ多いほど、用意しなければならない食材の種類も量も増えます。つまり、仕入れや仕込みの負担は変わらないまま、売上だけが下がっていくことになったのです。そうして、余った食材をスタッフのまかないにしたり、破棄する日々が続きました。

これまでと同じやり方ではダメなのかもしれない……。そう思って、ようやく定着した「食べ物が美味しいバー」というコンセプトを捨て、カラオケを導入することにしました。ドリンクは時間制の飲み放題にして、フードメニューは約半分に減らしました。
調理の負担を減らしつつ、利益率の高いアルコールを売上の主体にするのが狙いです。

そうして当店は、みんなで楽しくワイワイやれるカラオケダイニングとしてリブランディングを図ることになりました。

最初は不安でした。しかしカラオケダイニングという業態は館林には他に無く、数週間のうちに新しいお客様が増えていきました。特に若いお客様が新規で来てくださったり、リピーターになってくださったりと、売上的にはまずまずというところでした。

しかし一方で、これまでの FAT CATS を知ってくださっている皆さんからは、フードメニューが減ってしまったことを悲しむ声が多くありました。最初のうちこそ「ごめんね〜、でもよく食べてた〇〇はメニューに残してあるから、それ食べて〜」などと言っていましたが、そのうちスタッフも、期待に応えることができていないことに迷いを感じるようになりました。

これでいいのだろうか。カラオケが苦手という人だっているもんな……。夕飯代わりに寄ってくれる人だっていたし……。

実は、ほとんどのお客様はこの新しいコンセプトの FAT CATS を受け入れてくれて、その後も通い続けてくれたのです。しかしだからこそ、かつて美味しい美味しいと食べ物を気に入って来てくださっていた皆さんを裏切っているような気持ちになりました。

何度も Eva と話し合いました。
調理や仕入れ、仕込みの負担は実際にどのくらい減ったのか。
今の店の雰囲気を自分たちは好きなのか。
どういうお客様に来てほしいと思っているのか。
コロナで休業していた期間もテイクアウトやデリバリー、屋外販売などが成功したのは、うちのフードを愛してくれているお客様が支えてくれたからではないか。

自分たちがやりたい店をやるために

その結果、昨年2021年、フードメニューを一気に元に戻しました。
「食べ物が美味しいバー」というコンセプト、完全復活です。

まだまだコロナの影響も大きかった時期なので、とんでもなく忙しくなって調理の負担が突然過大になることはないだろう、と予想できたというのも背景にあります。
お客さまの喜ぶ声に、やっぱりこうしてよかったとスタッフも喜びました。

そしてその後、数ヶ月に及ぶ長期休業(まん防+身内の不幸)を経て、今年2022年4月15日に営業再開しました。
午後6時から深夜0時までの営業時間で、カラオケは午後9時半〜。
カラオケを楽しみたい人にも、会話を楽しみたい人にも、夕飯を楽しみたい人にも、それぞれのタイミングで利用していただけるよう、カラオケの時間を限定しました。

それから約1ヶ月が経って、振り返ると、やはりこの決断は正しかったのだと思えます。
知り合いを連れてきて「ここは食べ物が美味しいんだよ」と言ってくれた人。
久しぶりに来て「やっぱここのスペアリブが一番だよね」と言ってくれた人。
初めて来て「食べ物が美味しいって聞いてきました」と言ってくれた人。
なんと、カラオケと飲み放題をやっていた時期にリピーターになってくれた人ですら「食べ物うまいっすね!」と喜んでくれたのです。

また、休業中にはさまざまな改善を行いました。
分かりづらかった駐車場に看板を立てたり、汚れていた一部の床を張り替えたり、ハンガーをかけるフックを壁に取り付けたり、テーブルの天板をかっこいい木材に付け替えたり、オイルヒーターを導入して寒い時期も足元が冷えないようにしたり、トイレで携帯を置けるスペースを作ったり、壊れていたメイン看板の照明を直したり。
使える予算も限られていたので1つ1つは小さな改善でしたが、それらが積もり積もって、全体的にお店がグっと良くなったような感じがしています。

自分たち自身が「うちの店好きだな」って思える店にまた一歩近づいた気がします。

小さな改善の積み重ね

最近は、現金会計をやめるという決断もしました。
レジの現金の管理にかかる時間や手間、ミスを減らし、効率化することで、自分たちのエネルギーを料理やドリンク、そして接客に全振りするためです。
また、コロナ感染対策としての狙いもあります。

インスタのストーリーでアンケートをとったところ、89%の方がキャッシュレスを使っているという回答だったので、思い切って決めました。
まだ移行期間中なので現金会計も例外的に対応できるようにしていますが、いずれはキャッシュレスオンリーにする予定でいます。

また、メニューを QR からスマホで見れるようにしました。
(スマホの人はここをタップしてみてください)
コロナの流行以来、私自身、飲食店で食事をする時メニューブックを触ることに不安を感じていました。メニューを触ったら必ず手指を消毒しています。
なので当店ではメニューブックを触らずにメニューが見れるようにしたかったのです。

2名様以上でご来店されるお客様の場合も、一人がメニューを見ていると他の人が見れない、という状況になっていたのですが、QR を使用することで全員がメニューを同時に見れるようになりました。
本来ならオーダーまでスマホで済ませるシステムを導入すればスマートなのですが、当店はお客様との会話を重視しているので、そこまではしませんでした。
あくまでメニューを見る際にスマホでも見れるよ、という感じです。

紆余曲折を経て思うこと

こうして2014年からの約8年間、メニューどころかコンセプトまでがブレブレだった FAT CATS ですが、いろいろやってみたことで、逆に自分たちのやりたい店のビジョンが(ようやく、ではありますが)固まった気がします。

お客様とスタッフの距離が近くて、スタッフとお客様あるいはお客様同士のちょっとした会話が楽しめること。
料理が美味しくて、夕飯どきにも、小腹が空いた時間帯にもふらっと寄れる場であること。
時にはカラオケを通してみんなでパーっと遊べること。

もうそれはダイニングバーっていうかスナックなんじゃない? って感じもします笑
でも、「スナックにいるわけじゃないのに、スナックみたいに楽しい」と思ってもらえたら、それは嬉しいことだなと思います。
若い世代はどんどんスナック離れが進んでいるけれど、スナックっていう場って、すごく良いもんね。

私は30代だし、バイセクシュアルだし、地元の人間ではないから、正直「スナックが苦手」という人の気持ちもわかります。
年配の地元人たちが常連として毎日のように入り浸っていて、声をかけられたり、ヘタしたら説教されたり、絡まれたり。ましてや結婚してるのかとか、「男ってのは」なんて語られちゃったり。女性だったら「一緒にデュエットしようよ」などと言われることもあるらしいしね。
そんなイメージだから、若い人たち、特に女性とか、LGBTQ+とか、在日コリアンとか、障害者とか、外国ルーツの人とかに、スナックが苦手な人がいても不思議じゃないなと思っています。

だからうちの店は、そうじゃないスナックとして——あくまでダイニングバーという建前で笑——みんなが楽める場を提供していきたいなと思っています。

そんなわけで、もう少しで9年目に入る FAT CATS ですが、改めてやる気を出して奮闘していこうと思っているので、どうぞよろしくお願いします!

FAT CATS
代表/共同経営者 マサキ
2022年5月16日

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